ktdiskのブログ

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「環境」が変われば「働き方」は変わる 〜 アメリカで「働き方」を改革された私の話

先日、13年間日本で暮らし、2年前にアメリカに移住してきたインド人家族と知り合い、家に招待をして食事をするような間柄になった。お父さんのほうは、日本で13年も仕事をしていたので日本語はペラペラ。盛り上がる話題は、やはり「日本とアメリカの違い」。お父さんの方から開口一番ででたのは、日本では遅くまで会社で仕事をしないといけなかったけど、アメリカは早く帰れるのが本当にいいところです」ということ。それに対するお母さんの切り替えしが秀逸。「アメリカに来てからは一緒に過ごす時間が多いからケンカが増えた、帰ってくるのが早すぎ」、爆笑。


アメリカのノースカロライナ州で生活を始めてから3年半ほど経つ私。アメリカに来て良かったことは、「家が広く、裏庭でビール飲みながらバーベキューとか手軽にできて快適」とか、「見ず知らずの人でも積極的に助けようとするオープンな互助精神に溢れていて暮らしやすい」とか、「信号に阻まれることなく、長距離を快適にジョギングできる」とか、色々あるが(もちろん悪いことも沢山ある)、「労働時間が減って、自分や家族のため時間が増えた」ことが正直一番嬉しい。

最近は日本でも「プレミアム・フライデー」とか、「働き方改革」とか、盛り上がっている模様。私は、働き始めて最初の10年は激務の外資系コンサルティング会社に勤めて、その後も今勤めているアメリカ資本のソフトウェア企業の日本法人でハードワークをこなしてきた。長時間労働が体に染み付いているし、仕事を断るのも下手だし、誰も拾わないけど会社にとって大事な仕事があると放っておけない性分だし、何より仕事が嫌いではない。そんな私も今は夕方18時から19時の間には仕事を切り上げ、ジョギングをしたり、子どもの宿題をじっくりみたりして、生活における仕事や会社の比重が下がりつつある。未だに、深夜2時まで働いたり、休日に仕事をすることだってあるが、働く時間は日本に住んでいた頃より激的に減っている。でも、自らの意志で仕事に対する考え方を変えたというわけではなく、環境」が変わり、それに合わせて「働き方」が少しづつ変わってきというのが正直なところだ。

以下、私の経験から、アメリカで感じた、日本と異なる働く環境・文化の違いをあげてみたい。多分、ニューヨークとかの大都会はきっとトーンが異なるだろうし、パフォーマンスが悪ければ容赦なく解雇されるアメリカ企業であるが故の部分もあると思うがご参考まで。特に「働き方改革」を掲げるお偉いさま方にはご一読頂きたい

 

1.男女を問わず「子どものお迎え」は残業を断る至極真当な理由となる

アメリカに住んで間もない頃、子どもが通う学校から仕事中に電話がかかってきて、「あなたの子どもがスクールバスに乗り遅れてしまったので学校に向かえに来てほしい」、と言われた。渡米して2ヶ月もたたない頃で、妻はまだ車がなかったので、私がいくしかない。まだ16時くらいだったので、上司を10分くらい探して了解をとろうとすると、「学校から第一報を受けた時点で直ぐにオフィスを出発すべきだ、私への報告なんてテキストを後から送れば宜しい」と注意を受けた。あぁ、日本とは考え方が違うなぁ、という印象を受けたことを今でも覚えている。
午後に緊急の仕事が入ることは私の部署ではよくあるが、「今日は子どもの迎えがあり、今会社をでないと行けないので、家に帰ってからフォローさせて」というのはよくある夕方の会話で、上司も「あぁ、子どもの向かえ?じゃぁ仕方がないね、さあ行って行って」という感じ。アメリカでは「子どもの迎え」が突発的に(もちろん計画的にも)発生するのは家族を持つ人は誰もがあることなので、上司の理解もあるし、同僚同士で助けあおうという雰囲気もとても強い。ワーキングマザーが「子どもの迎え」を理由に残業を断り、肩身の狭い思いをするなんて雰囲気は微塵もない(というか、終業時間前でもそれを理由に帰っている人はかなり多い)男女に関係なく、家族第一という精神が根付いているので、とても働きやすい。

 

2.緊急の仕事が入っても、優先順位をつけて、17時には皆で帰社しようとする

私の部署は、経営管理部なので、経営陣から突発的な分析のリクエストが入ることがよくある。3年半のアメリカ生活で新たに得た語彙は勉強不足のため大変少ないが、”Fire Drill(文字通りの意味は火災非難訓練だが「緊急度の高いやっつけ仕事」という意味で使うことのほうが私は多い)”は数少ない中の一つ。「早朝の経営会議であがった事案を明日の朝までに提出!」というのはたまにある話で、”Fire Drill”に必要な人は会議室に招集され、目的、成果物のイメージが共有され、作業指示がとばされる。私の感覚だと、「あぁ、今日は会議が詰まっているから、残業確定だなぁ」という感じなのだが、アメリカの同僚たちはまずその日に入っている打ち合わせを翌日以降にずらすことから始める。指示をだしたマネージャーも「何か緊急度の高い他の作業や会議がある奴はいるか?」と必ず確認し、「そんなのは明日以降だな」、とか「その成果物の期限は今週末までにのばせるように私が調整するから」とか、緊急の案件にフォーカスできるよう協力してくれる。もちろん、それでも夜遅くまで対応しないといけないこともあるが突発的に入った仕事に対してマネージャーも含めてきちんと優先順位付けをして、定時以内に仕事を終わらせようと常にトライする姿勢をアメリカにきて学んだ

 

3.マネージャーが「Go home(早く帰れ)」というだけでなく、早く帰るためのヘルプをしてくれる

営業部署のトップの役員にレポートを送付しなければならなくて、ある晩一人でオフィスに残って仕事をしていた。レポートそのものは大体できあがっていたのだが、役員向けなのできちんとした英語でサマリーをメールの本文に書かなければならない。日本法人で働いていた頃は通じればよかったのだが、流石にアメリカ本社だと、きちんとした書き英語が求められ、私は未だに勉強不足で時間がかかる。そこに私より5倍以上忙しい私の部署のトップの役員が夜遅くまでかかった会議をようやく終え通りかかった。「まだ、やっているのか、あぁ、あのレポートだな、あとどれくらいかかる?」と聞かれた。正直1時間はかかるなぁと思っていたのだが、「後10分くらいで送れると思うので、先に帰っていて下さい」と答えた。「そうか、ちょっと資料を見せてみろ」と言って、私のまとめたレポートをざーっと読んで、「うん、よく出来ている」と一言残し、自分の部屋に入っていった。5分くらい後に、その役員が鞄を抱えて私の席に立ち寄り、「今、メールでサマリーをお前に送ったから、ちょっと開いてみろ」というので、メールをチェックすると美しい英語で書かれた完璧なレポートのサマリーがそこにはあるではないか。「内容を確認して、問題なければ、今すぐに送るんだ。俺はお前を待っているから直ぐにやってくれ」と言われたので、急いでコピペをして、レポートを添付して営業担当役員に送付をした。私が送付し終わるのを後ろで仁王立ちして確認をしたその役員は「さ、帰るぞ、お前はこれで俺が手伝わなければ22時までやる奴だからな」と言い、顎でエレベーターホールのほう指した。
アメリカでは遅くまで残業していると無能とみなされる、というのは良く聞く話ではあるが、私の肌感覚とは少し異なる。高い成果をあげるために一生懸命働くことは評価の対象となるし、ハードワークに対して感謝をされることも多い(もちろん、きちんとした成果が伴うことが前提だが)。が、ハードワークを奨励しつつも、家族との時間にも十分敬意を払い、本当に必要なことにフォーカスし、またそれをなるべく早く終えるためのサポートをマネージャーがきちんとしてくれるのが今のアメリカの職場の良いところだ。上から頼まれたことをそのまま下に投げるということも殆どなく、各階層で何が本当に必要なのかを判断する裁量の余地が日本よりも大きいように感じ、それも大事な要素だと思う。

 


私は「環境」が変わって、「働き方」が大いに変わった。私の経験を振り返るに、もちろん働く人個々人の意識も大事であるが、トップも含めた会社の上層部の意識が「職場環境」に大きな影響を与える。「働き方改革」を標榜しているが、進んでいないなぁ、と感じる方々は、上の人の意識改革がきちんと進んでいるか、まず確認することを強くお勧めしたい。


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