Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

Googleの”The meaning of open”と"Open"であることの意義

Jonathan Rosenbergの"The meaning of open"を読んで初めに感じたのは、もう一つ上のレベルの議論を期待していたのに少し残念ということ。
"Open Source"、"Open Standard"、"Open Information"という分け方はきれいだし、それぞれについてわかりやすく定義されているし、Technologyだけにフォーカスせずに"Open Information"にまで切り込んでいる視点もすごく良いと思うのだが、そういった個別の事象の定義と意義の議論に加えて、"Open"であること、それそのものの意義についてGoogleが何を語るかについて興味があったのだが、その視点がなくて少し残念だった。

So if you are trying to grow an entire industry as broadly as possible, open systems trump closed. And that is exactly what we are trying to do with the Internet. Our commitment to open systems is not altruistic. Rather it's good business, since an open Internet creates a steady stream of innovations that attracts users and usage and grows the entire industry.
もし産業全体をできる限り成長させようとするのであれば、"Open"システムはクローズドに勝る。そして、それは我々がインターネットという産業で実施しようとしていることそのものだ。我々の"Open"システムへのコミットメントは決して利他的なものではない。むしろ、ビジネスに近い、というのも"Open"なインターネットが持続的なイノベーションを導き出し、ユーザをひきつけ、利用度合いを高め、産業全体を成長させるからだ

We believe in the power of technology to deliver information. We believe in the power of information to do good. We believe that open is the only way for this to have the broadest impact for the most people. We are technology optimists who trust that the chaos of open benefits everyone. We will fight to promote it every chance we get.
我々は情報を伝達するテクノロジーの力を信じ、世界をよりよくする情報の力を信じる。"Open"こそが最も大きな影響を最も多くの人に与える方法だと信じている。我々は"Open"がもたらす混沌がみんなに利益をもたらすと信じるTechnologyのオプティミストだ。我々はこの考えを、あらゆるシーンで促進していく。

こういった大所高所にたった議論をするのであれば、"Open Source"とか、"Open Standard"とかの個別の事象を超えて、"Open"であることそのものが、現代においてどのような価値・意味を持つのかという点について踏み込んで欲しかったし、それがないと議論が横滑りしている印象を受ける。


ただ、"The meaning of open"は、「"Open"であることの意義」を考える材料は沢山提供してくれる。こういったエントリーを読むと再認識するのだが、「"Open"であることの意義」は「不特定多数の人間をエンパワーメントできること」だと私は思う。
例えば、通常のソフトウェアのライセンス販売というのは、金銭的対価を支払った人にソフトウェアを使用することを可能にする、別の言い方をすれば、お金を払った人間を限定的にエンパワーメントすることに他ならない。それに対し、例えばGPLをソフトウェアに適用することは、そのソフトウェアにアクセスできる全ての人に、使用のみでなく改修、配布することも可能にする。限定的な対象に対して、限定的な活用方法を許諾するのではなく、不特定多数の対象に対して、あらゆる活用方法を許諾することにより、エンパワーの対象を限りなく広げることになる。もちろん、この考え方はソフトウェアに限定されるわけではなく、その他の情報・規格についても同じことだ。


情報や規格を"Open"にすることにより、その情報に触れた人、公開した技術の周辺にいる人に、それを活用する機会をあたえ、より多くの対象に活用する可能性を届け、エンパワーすること、それが"Open"であることそれそのものの意義だと思う。そんなことを頭におきながら、次回以降のエントリーでは、"The meaning of open"の中身にもう少し踏み込んでみたい。

Creative Commons License
本ブログの本文は、 クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示 - 非営利 - 継承)の下でライセンスされています。
ブログ本文以外に含まれる著作物(引用部、画像、動画、コメントなど)は、それらの著作権保持者に帰属します。