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図解 「学習の高速道路」の変遷

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)


ウェブ時代をゆく』の「学習の高速道路」、「高く険しい道」と「けものみち」の議論にふれて、自分の中でもやもやしていることについて雑多に綴ってみたい。


効率よく過去の叡智を吸収できる「学習の高速道路」がウェブというテクノロジーを追い風に受けて、どんどん整備されているというのが『ウェブ時代をゆく』で何度も語られる時代認識。


では、20年前にくらい前はビジネスマンに向けて開放されている「学習の高速道路」無かったのかというとそんなことはない。イメージとしては下記の感じ。
*1

弁護士や会計士のような会社に依存しないプロフェッショナル職に対しては、専門学校という「学習の高速道路」が整備されていたし、大手弁護士事務所、会計士事務所に入れば、弁護士・会計士としての王道のキャリアパスがしかれており、「高く険しい道」につながる「学習の高速道路」は当時から整備されていたと言える。
また、特定の企業の社員に対しても「学習の高速道路」は整備されていた。例えば、トヨタに入社すれば「生産管理」の、キャノンに入れば「知的財産管理」の「学習の高速道路」が整備されている。そういった会社の特定の部門に配属された人は世界でベストプラクティスと言われる過去の叡智を効率よく吸収し、「高く険しい道」にどの会社の人より早く到達することができた。
なので、20年くらい前のビジネスマンの学習環境というのは、上記のように著しく狭い門の、著しく特定の職種にだけ「学習の高速道路」が整備されている状況と表現することができる。


その学習環境に変化が生じ始めたのが10年ほど前。丁度私が新卒として会社に入社した頃。生じた変化というのは下記2点。

  • 転職市場の整備、プロフェッショナル職種の多様化による裾野の拡大
  • 仕事の専門化に伴うプロフェッショナル職種の増加

一つの会社に就社をしたら、ジェネラリストとして様々な経験を積んでいき、その会社を一生勤めあげるという価値観が常識で無くなり、職種別採用などが始まったのが丁度この時期。企業で専門性や特定の仕事に対する実務力が重視されるようになると、ある専門性をもった人材を如何に育成するかということが経営上の課題となり、それに伴いそれぞれの企業で「学習の高速道路」の整備が進行していった。
また、トヨタの「学習の高速道路」を走った人や「高速道路」は走らずとも「高く険しい道」に到達した人が、コンサルティング会社に転職をし、サービスとして自分の専門性を各企業に提供することが活発になったのもこの時期。「生産管理のコンサルタント」、「連結経営管理コンサルタント」などのプロフェッショナル職種にも多様性が生じ、トヨタやキャノンという極一部の企業の社員にしか開放されていなかった「学習の高速道路」の整備をコンサルティング会社が担うようになったというのも大きな環境変化の一つ。イメージとしては下記のような感じ。

専門職に多様性が生じ、その多様化に応じて「学習の高速道路」の整備が進行し、物理的な制約の範囲で「学習の高速道路」へ今までより容易にアクセスが可能になったのが、10年前くらいと言うことできる。


そして、ウェブというテクノロジーが、ブルドーザーのようにがしがしと「学習の高速道路」を整備すると共に、物理的に構築される人脈を超えた人と人のつながりを実現するのが現代。キャノンという会社の中には依然として排他的かつ制限速度120kmくらいの「知的財産」に関する「学習の高速道路」は存在するが、それと平行してウェブ上にも誰でも走行可能で、制限速度は70kmくらいの「知的財産」に関する「学習の高速道路」は既に整備され、今まではアクセス不可能だった知財の専門家にネットを通じて質問をなげることもできる。「学習の高速道路の」多様化と整備の進行が衰えることなく後10年間は引き続き進行していくとみて間違いは無いだろう。


上記のように時系列で考えていくと

  • 専門職の消費期限の短命化とその見極め能力
  • 「新しい職業」を生み出すというより、定義する能力の重要性
  • 排他的な「学習の高速道路」と開かれた「学習の高速道路」の戦略的選定基準

など色々突っ込んで考えなければならないことが、浮かび上がってくる。追ってそれぞれのトピックについて考えていきたい。

*1:青い箱は特定の会社の社員に解放されている「学習の高速道路」、黄色い箱はプロフェッショナル職に開放されている「学習の高速道路」というイメージ

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