Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

書籍出版は古典的か?

この本を読む前は、「梅田氏はなぜ(ブログではなく)本を出版するのだろう」と思っていたが、結局のところ、「今の時代になってもブログから情報を得ることをしない(できない)ような経営者、エスタブリッシュ層が日本にはたくさんいるので、その手の人たちに彼のメッセージを伝えるには古典的な書籍という手段に頼らざるをえない」という悲しい現実を良く知っている彼だからこそのアプローチなのであろう。
『「ウェブ進化論」はなぜ「書籍」として出版されなければならなかったのか』

梅田さんの『ウェブ進化論』の出版をして、Life is beautifulで、ブログではなく「古典的な書籍という手段に頼らざるをえない」という表現がされているが、少し違和感を覚える。ターゲットの読者層の中に、エスタブリッシュメント層がはいっているであろうことは否定しないが、じゃぁターゲットはそのような人だけかと言ったら決してそうではない。「ウェブ進化論」という書籍の出版を心待ちにしていており、読了後に期待以上の充実感を覚えるのは、むしろ日々梅田さんのブログを見ているブロガーのほうだと推察する(現に私がそうであった)。
繰り返しの引用となるが『ウェブ進化論』のあとがきで、下記のようにつづられている。

ここ数年考え続けてきたことをまとめればいいとわかっていても、さまざまな思考の断片を一冊の本へと構造化させるには膨大な集中の時間を要する。・・・<中略>全部書き終えたときはふらふらだったし、今振り返るとその五週間についての記憶が曖昧である。そんなふうにしてこの本はできあがった。

ウェブ進化論』 〜あとがき P.245〜

今回の本は、ある意味不連続につらつらとつづられるブログを、その作成者が始まりのタイミングと終わりのタイミングを定義して、一つの成果としてまとめあげている。引用のとおり並大抵の仕事ではないし、日々ブログを読んでいる身としては、どこから始めて、どこを終わりとし、どのようなまとめ方が渾身の力を込めた梅田さんの頭脳の中でなされるのかという点に対し大いなる期待感がわき、読んだ後に後味として大きな充実感がわくわけである。
強調すべきは、「ブログから情報を得ることをしない(できない)」人が多く存在することではなく、ブログと書籍の2つがミックスされることによる楽しみを知らない人が多く存在するということだと私は考える。世の人が皆梅田さんのブログを読んでいれば、今回書籍が出版されなかったかと言ったら決してそうではない。
少しからみモードになったが、正座して読むべしとまで言われたブログがさらに書籍としてまとめあげられた今だからこそ、ブログと書籍という趣を異にするメディアの位置づけを真剣に考えるべきだと思う。


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