徳力さんの『デジタル・ワークスタイル』を読んだ。
- 作者: 徳力基彦
- 出版社/メーカー: 二見書房
- 発売日: 2007/04
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 78回
- この商品を含むブログ (67件) を見る
この本では、5年前に典型的な大企業的な縦割りの思考回路で、仕事の壁に突き当たって悩んでいた私が、どうやって古い思考回路を切り替え、インターネット時代にあった仕事のやり方を身につけることができるようになったのか、実際のツールの使い方から仕事への取り組み方まで、できるだけすべて書き出してみました。
もちろん、ネットリテラシーの高い皆様は、この本のメインターゲットではありませんし、ツールの使い方等、既にご存知の内容も多いかと思います。
そんな方は、書店で見かけた際に、ぱらぱらと眺めていただき、職場の方やご友人など、周りにこの本が少しでも役に立ちそうな人がいたら、ご紹介いただければ幸いです。
ご本人から上記のような本書の紹介メールを頂いたが、正に紹介通りの内容。
本書の最も優れている点は、伝えたい読者層を明確に定義し、その層にメッセージを伝達すべく、徹底的にターゲット読者層のところまで筆者が下りていることだ。初心者にもわかりやすい説明を心がけるという点にとどまらず、大企業色が抜けない若かりし頃(といっても数年前だが)の徳力さんの姿をイントロ部分で下記のように敢えて生々しくさらすことにより、高みからモノを申すのではなく、目線をターゲット読者にあわせているなど、随所に心配りがうかがえる。
会社にいる時間が仕事だと勘違いし、朝から晩までオフィスで仕事をし、ほとんど外に目を向けていなかった。
とにかく自分はいわれた仕事をこなしていれば、いつか誰かが問題を解決してくれるのではないかと、期待していた部分もあっただろうし、会社の歯車である自分に慣れてしまっていたかもしれない。
『デジタル・ワークスタイル』 〜Introduction P.19、20〜
本書の中の各種の心配りは、インターネットとその周辺技術が可能にした「個をエンパワーする力」を読者に「伝えたい」という徳力さんの強い熱意の賜物であり、巷にあふれる単なるネット情報収集のハウツー本と本書が一線を画するのは、その熱意ゆえと感じた。
紹介されている考え、各種ツール、テクニックなどは、いくつか「とりこぼし」があったものの、正直殆ど知っていることだった。また、私のブログにたどりついて、さらにRSSリーダで購読までされているようなリテラシーを持つ方は、内容の目新しさについては同じような印象を持つだろう。ただ、本書の本当の狙いは、書かれていることについて「なんだぁ、大体知っているよ」と感じる層が拡大することであるため、本ブログを読むような人にそれ程役に立たなくても、それが本書の価値が低いことを意味するわけではない。
問題は、ブログに記載される書評を読んで本を買ったことがないような方こそが本書のメインターゲットであるということだ。インターネットを活用したマーケティングなどは徳力さんはお手の物だろうが、出版の目的を達成するためには、テレビや雑誌などのインターネット以外のメディアの積極活用が必須だろう。別の言い方をすれば、ターゲット読者層に本書が深く伝播するには、インターネットの力のみでは十分でないということだ。書籍化にいたるまでの、相当な苦労の跡がみてとれるが、初志貫徹のためにもう少し頑張って頂きたい。インターネットの力を信じるものとして身近な人にオフラインコミュニケーションで本書を推薦することで、陰ながら貢献をしたいと思う。