「GoogleはAdWordsで自社のサービスを優先的に上位に表示しようとしており、Don't be Evilとか言いながらEvilなんじゃないか!」という議論がアメリカでおこっているらしい。"When the auctioneer bids"というNicholas Carrのエントリーが詳しいのだが、要点のみ書くと下記の通り。
- GoogleはAdWordsというオークションの競売人であるだけでなく、売り手でもあり、買い手でもある
- 競売人としてのGoogleと買い手としてのGoogle*1が結託し、Googleのサービスを優先的に上位表示しているのではないかという疑いをCentralDesktop社のCEOがかけている
- 全ての広告は、同一のガイド、原則、そしてアルゴリズムで管理されており、Googleのサービスのみ優先表示することはありえない、とGoogleのマーケティング担当者は断言している
- 優先表示をしているかしていないかは分からないが、買い手としてのGoogleが存在することにより、オークション価格がつりあがり、売り手としてのGoogle*2に利益をもたらしていることは確かである
まずは経営者のリスク管理という視点でこの問題を考えると「GoogleはAdWordsというオークションの競売人であるだけでなく、売り手でもあり、買い手でもある」という点が非常に重要。
CentralDesktop社のような企業の経営者は、「自分たちはそういうGoogleが圧倒的に有利な立場になりえるGoogle経済圏で事業を営んでいる」、別の言い方をすれば「競合他社の軒先を借りながら事業を営んでいる」、ということを強く自覚すべきだ。
Google経済圏に過度に依存しすぎないビジネスモデルの構築は経営者のリスク管理として初歩の初歩だろう。
一方で、Googleは「我々の理念は"Don't be Evil"です。自社の利益を追求し、不当に顧客の不利益を損なうことはしないので、安心してGoogle経済圏にはいってきてください。」とうたった上で、その経済圏を拡大してきたという背景はある。
なので、"Don't be Evil"について法的な義務などはもちろんないが、経済圏で活動する人から"Evil"であるとみなされることは、経済圏の求心力の低下に直結することも事実。
Googleに求められるのは、自分たちとして「何がEvilで何がEvilでないのか」というのを明確にすることと*3、その線引きについてGoogle社員の中で見解の統一がはかられているということ、の2点ではないだろうか。特に後者は組織が急速に拡大するGoogleにとって、最も重要なテーマだろう。
昨年も"Don't be Evil"かどうかをめぐって色々なトピックで議論が巻き起こった。Blogosphereが"Don't be Evil"のモニタリング機能を果たすというのは事実だと思うし、それはそれで重要なことであることは認める。ただ、"Evil"かどうかだけを主観に基づいて大勢が議論するのみというのはいかにしても幼稚である。売上が年間1兆円を超えようという企業規模を考えると、そろそろその幼稚な議論を脱して、「AdWords, AdSenceなどの広告事業」と「Ofiice, Calender, Mailなどのウェブサービス事業」を別会社化し、独立性と透明性を確保することを社会的な要請としてGoogleに求めても良いのではないだろうか。
昨年、中国問題、Google八分など色々なトピックで盛り上がったが、2007年のGoogle関連の最重要トピックに「Google分割論」がはいることは間違いない。マイクロソフトが通った道をどうやってGoogleが歩んでいくのか、今年注目してみていきたい。