ktdiskのブログ

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『ウェブ人間論2』への期待

ウェブ人間論』を読んだので書評を。

ウェブ人間論 (新潮新書)

ウェブ人間論 (新潮新書)

最近、手にとってぱらぱらめくる気にもならないWEB 2.0本が書店に溢れ返っている。そんな、WEB 2.0ブームの中で、インターネット、テクノロジーの進歩がもたらしたものを、

  • 一人の人間が関わりあいを持ち、参加することのできる「社会」の選択肢が爆発的に増えた
  • 物理的な身体から解放された人格を、容易かつ匿名性を保った形で解き放つことが可能になった
  • 自分という人間の根幹から意外な一面まで、社会に認知される可能性が飛躍的に増加した

などのようにとらえ直し、「それに伴い人間は今後どのように変容していくのか」「それが人間が本来持っているどんな欲求を引き出すのか」、などの「人間論」を論点に据え、最近のWEB周りの動きを解釈しようと試みているあたりが他の書籍と一線を画し、2,3歩先を言っているという印象を受けた。
ウェブ人間論』というタイトルを初めて見た時は正直「柳の下のどじょう」ちっくなげんなり感、本書の中の表現を借りればダークサイドの風味を感じなくはなかったが、読み終わってみるとこのテーマ設定はさすがといった感じ。
AJAX、参加型アーキテクチャなどのオライリーの"What Is Web 2.0"に書かれている要素を盛り込むことに腐心するのはナンセンスで、どのようにユーザの利便性を追及し、どんな新しいライフスタイルをユーザに提案するかが、ウェブサービス開発上の肝」なんてことを常々感じているが、「人間が何に利便性を感じるのか、人間が本来持っているどんな欲求を今のテクノロジーが可能にするのか」という根っこのところまで考えをめぐらせないと想像力なんて大してはたらかない、そんなことを本書を読んで強く感じた

ウェブ進化論」とどっちが面白いかについては、僕自身からのコメントは差し控えます。読者それぞれのご判断ということで、ネット上での感想を楽しみにします。

とあるので、『ウェブ進化論』との比較という意味での感想を書くと、率直なところ「『ウェブ人間論』はブログスフィアというあちら側の世界に新鮮なトピックを投じたという点では影響を及ぼすが、『ウェブ進化論』がリーチした広大な読者空間にまではとても伝播しないんだろうなぁ」という印象をうけた。
ご本人が本書で『ウェブ進化論』出版時のことを下記のように語られている。

僕自身、本に対する思い入れも強かったので、「よし、最後に一度だけ、ここ数年で考えてきたことを一冊の本にする努力を、精一杯してみよう」と思ったんです。そうしたら、思いがけないことが起きた。本の持つパワーに僕はびっくりしたんですよ。ネットでは、全く届いていなかった広大な読書空間というものにぶちあたって、その存在の大きさを実感したわけです。

そう、ブログというフローの情報群を新書というサイズに渾身の力で構造化した結晶が『ウェブ進化論』なのである。その結晶としての美しさとお互いに理解しあうことのない二つの別世界への架け橋を作ろうという情熱が、あの大きな波を作りだしたのだと考えると、『ウェブ人間論』にはそこまでの力はない。
ウェブ人間論』は書籍の持つパッケージ性という点の魅力はあれど(これだけの文書をウェブ経由で読むのは如何にしても苦痛だ・・・)、書籍としての構造化度合いはあまり高いとは言えず、書籍内での玉石混交状態が発生しているのは否めない。
例えば、「島宇宙」という言葉が本書の中では使われているが、『ウェブ進化論』であれば、必ずこの手の言葉に対しては、梅田さんの巧みな表現力が駆使されたわかりやすい定義がついてきて、知らない人は新しい知識をえ、感覚的にしか理解していなかった人は目から鱗が落ちる爽快感を味わうことができた。だが、『ウェブ人間論』の中では流れの中で目を引く言葉としてでるのみで(対談本なので当たり前だが・・・)、クリアな定義はなされない。「あちら側」にどっぷり浸かっている「ウェブ人間」であれば、感覚的に言葉の意味は理解できるが「こちら側」にいる人は「なんのことやら・・・」という印象をもたれるのではないだろうか。対談本なのですらすらは読めるが、そういう意味で「あちら側」の人にも、「こちら側」の人にも敷居が高い書籍になっている。


少しネガティヴなことを書いたが、あくまで『ウェブ進化論』との比較の話しであり、もちろん本書の価値を否定するものではない。

ここで顔をつきあわせて話しあったのは、二人の人間に過ぎないが、対談はきっと届けられたその先々で、ページを開いた誰しもを、その都度新たな参加者として歓迎するだろう。
ウェブ人間論』 〜はじめに P.11〜

とあるが、平野さんも交えての今後の『ウェブ人間論』ネタでの議論は、濃い目のものが多くなりそうで非常に楽しみである。本書に記載されいている対談内容は、あくまで序盤戦であり、ブログスフィアでは、今後様々な参加者が入り乱れながら本戦が展開されるのだろう。その本戦へのチケットと考えれば、¥680は非常にリーズナブルである。
そんな議論の内容も踏まえながら、2〜3年後に構造化された形で『ウェブ人間論2』なんて書籍がでたら、きっと『ウェブ進化論』以上の巨大な波が生まれるんじゃないだろうか。それだけこのテーマ設定は深く、私の知的好奇心、関心を刺激してやまない。

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