Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

ロングテールの潜在的成長率

My guess - and it's only a guess - is that the Internet Long Tail is substantially larger than the pre-Internet Long Tail, but that, in its current form, it amounts to something less than a monumental change in the market. The important question, then, is this: Is the Long Tail going to get a lot bigger, or has most of the growth already happened?
私の推測、本当に単なる推測だが、現在のインターネットのロングテールは、実質的にはインターネット時代前のものよりも大きいが、市場に革命的な変化を与えたというレベルには達していない。故に、重要なことは、「ロングテールが今後も一層大きくなり続けるのか、もしくはインターネット効果によるロングテール市場の成長は殆ど終わってしまったのか?」ということだ。
Rough Type: Nicholas Carr's Blog: How large is the long tail?


Lee GomesがWSJに「テールが全体の半分以上をしめるなんてことを実証するデータはどこにもなく、皆ロングテールに過剰に反応しすぎ」というような趣旨の記事を書き、Chris Andersonが自身のブログに「単純に比率のみに焦点をあてると、ロングテールの効果を見誤る」と反論し、ばちばち火花を散らしているところに、Nicholas Carrが"I find myself agreeing with both gentlemen."なんて大人のポジションをとっており、何か微笑ましい。


英語でわいわいやっているのでわかりにくいのだが、図を使って考えるに

  • Lee Gomesは、インターネット時代になったからといって、②の部分が①より大きくなったなんてことを実証する例は何もない、と言っており
  • Chris Andersonは、取扱アイテム数がものすごく増え分母が異なっているのだから、④と⑤を比較するだけではロングテール効果を計ることはできない、と言っており
  • Nicholas Carrは、②と⑥を比較すると⑥の方がきっとボリュームは大きい、即ちインターネットの力でロングテールの中のビジネスが増加している、と主張し、さらに
  • 今後⑥がどれくらい成長するかについて、Lee Gomesは弱めに予測し、Chris Andersonは強めに予測しているだけの話し、

とまとめているように見える。


上記のような議論を見ていると、アンドリュー・グローブの下記のPhraseを思い出す。

インテル戦略転換

インテル戦略転換

形のない転換点を相手に、どのようにしたら企業や個人のキャリアを救うための適切な処置を講じるタイミングがわかるのだろうか。残念ながら、これといった方法はないのだ。

しかし、わかるようになるまで待つわけにはいかない。タイミングがすべてだ。もし企業に余力があり、既存の事業で経営を維持しながら新しい事業展開を試せるのであれば、今の社員や戦略的ポジションといった会社が持っている力の大部分を救うことができるだろう。しかしそれは、全体像が見えず、データもそろっていない時点で行動を起こすということを意味する。科学的なアプローチによる経営を信条としている人であっても、このときばかりは直感と個人的判断しか頼れるものはない。戦略転換点という乱気流に巻き込まれたら、乗り切るために使えるものは、悲しいことに直感と判断しかないのである。

インテル戦略転換』 〜第二章 P.45、46〜

ロングテール市場の規模は既に頭打ちになっているのか、それともこれからが飛躍の時なのかを明確に実証するデータはおそらくない。ただ、日々インターネットの世界で暮らしている肌感覚としてロングテールの潜在的成長率は非常に高いと、直感的に判断する人は、そこに賭ければよいし、ただの空騒ぎで言うほど大したことはないだろうと、直感的に判断する人は、あまり気にしなければよいだけの話だろう。で、きっとおそらく一番いけないのは、「データがそれをクリアに示すまで待とう」とか、「他の企業がやってみたのを見て、成功したら後から自分達も突撃しよう」というポジション。"わかるようになるまで待つわけにはいかない。タイミングがすべてだ。"、アンドリュー・グローブの言葉はいつも重い。

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