私は"Casual Thoughtsの書庫"という書庫ブログを作成し、読んだ本の気になった箇所をオンライン上にためているのだが、今週末、今年読んだ本の一覧を眺めていて、少し自分自身のことが不安になった。勝間本を読み、梅田本を読み、ジョブズ本を読み、今年が終わってしまうみたいな、なんとなくこのバリエーションの無さが自分の薄っぺらさを表すかのような危機感を覚えた。
本というのは出版されて50年は経ってないと、古典にはならないと考えています。いま書店に並んでいる本は、おそらく100年経つと1%も残っていないでしょう。ビジネス書なんて、10年後だって90%以上残っていない可能性が高い。そういうものは、本当にオリジナルな解を模索しているときには、役に立たないのです。
- 作者: 冨山和彦
- 出版社/メーカー: ファーストプレス
- 発売日: 2007/06/01
- メディア: 単行本
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『指一本の執念が勝負を決める』 〜第3章 P.120、121〜
私淑している元産業再生機構の冨山さんの本を最近読んだら上記の指摘がなされていた。大して読書量が多くない割りに、他の人のブログで紹介されている最近刊行された本にばかり手を出しているのが読書内容が画一的になってしまう一つの原因のように思う。冨山さんと私とではもちろん求める解のレベルが違うものの、今年読んだ本の中に古典と言ってもよさそうなものは殆どないのも少し寂しい*1。少し読む対象を広げて、『アンナ・カレーニナ』や『罪と罰』のような小説や『論語』などにも手を出してみようと思う。うちにトルストイなどあるかと探してみたが、あったのが娘の『おおきなかぶ』だけだった・・・。うーん、情けない・・・。
分裂化の影響を大いに増幅しているのが、個人化アルゴリズムとフィルターという、インターネット上では一般的な機能であり、これらの機能は我々の許可なく、ときとして我々がしらないうちに動作することも少なくない。我々がアマゾンで本を買い、ネットフリックス(Netflix)から映画を借り、レディットでニュース記事を見るたびに、これらのサイトは我々の選択に関する情報を個人プロファイルに保存して、その後、類似した商品または記事を推薦するために利用する。短期的効果としては、我々はサイトの推薦のおかげで思いがけない項目に遭遇することもあるだろう。しかし長期的には、クリックする回数が増えるほど、見つかる情報の幅は絞り込まれていく。
- 作者: ニコラス・G・カー,Nicholas Carr,村上彩
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2008/10/10
- メディア: ハードカバー
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『クラウド化する世界』 〜第8章 大いなるバラ売り P.191〜
しかし実際には、相違よりも類似を好むという人間の些細な偏向を根絶することは、不可能ではないにしても極めて難しい。それは人間性の一部であるからだ。果たして、ブルニョウルフソンとヴァン・アルスタインの論文によれば、彼らの数式モデルは、シェリングの見解をそっくりそのまま示唆している。すなわち、「他の要因が同じであるなら、多くの場合、融合を弱めるのに必要なのは、既存の相互作用よりも好ましい相互作用に力点を置くことである」。言い換えると、意見を同じくする見解や人々を好む−つまり、全てを受け入れるのではなく、"焦点を絞り込む"−というささやかな傾向がある以上、人間はオンライン上では、一層分化したコミュニティを形成する傾向を示すだろう。
『クラウド化する世界』 〜第8章 大いなるバラ売り P.194、195〜
上記はあまりにも真っ当で読みながら思わず笑ってしまった『クラウド化する世界』の一節だが、読んでいる本が画一的という理由をあえて自分以外に求めるとすれば、RSSリーダーなどで他の方の書評を読んで本を選ぶことが多いというのは正直ある。『スティーブ・ジョブズの流儀』や『さらば財務省!』などはそれなりに面白かったし、ためにもなったが、何というか読むことによる安心感のほうがそのためになった感を上回ると言うのは率直なところだ。5年経ってももう一度読み返してみたいかと言われるとそうではない。何というか、IT業界の同年代であろう人が書いているブログ経由で知る本はそういうのが改めて振り返ってみると多い気がする。
そもそも読書量が少ないというのはかなり根本的な原因ではあるのだが、それは速読スクールに通ったりして少しづつ改善をしてきている。今後は質にもこだわり、意識的に本の推薦のアンテナを広げ、意図的にもう少しバリエーションを持たせる本の選定をしていきたい。
*1:個人的には『プロフェッショナルの条件』は古典と言ってもよいのではないかと思うが