日経ビジネスは「有訓無訓」というコーナーから始まる。各界の大御所が1ページで自分のキャリアを振り返り、そこからの学び、教訓、反省などを紹介するというもので、毎週楽しみにしている。最近では鬼頭季郎という東京高等裁判所の元裁判長の下記の言葉が心に残った。
考える過程においてそこに喜びを見つけ出し、結論においてはここまで真剣に考え抜いた者は世の中に自分しかいないことを自信の根拠とする。
2008年4月28日号「有訓無訓」 先例を覆す経営判断 そこに喜びと自信を
うーん、かっこいい。裁判というのは過去の判例に基づいて実施されるものなので、先例を覆すというのは、その裁判における結論だけでなく、その後の裁判にも影響を与えるので非常に責任重大である。とは言っても、司法が機能を果たすためには、時代の変化に応じて時に先例を覆すことも必要。いざ覆すにあたっては、極限まで徹底的に考え抜き、その過程を自信のよりどころにすると。
先日書評を書いた『さらば財務省!』に自分の上司が作った先例を覆す上で重要なことが記載されていてこれも紹介したい。
言い方さえ気をつければいいだけのことだが、それがわかっている人でも上司に鈴をつけに行かない。なぜか。自分の主張に揺るぎない自信がないからだ。
- 作者: 高橋洋一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/03/19
- メディア: 単行本
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東大法学部卒の官僚は、係数に弱い。知識や理論のほとんどは知り合いの学者から仕入れたものだ。要は聞きかじりに過ぎない。
耳学問では、A、B、Cの学者が同じ意見をいっていたとして、どれが根本の理論かわからない。知ってはいても、本当に理解はしていないので、経験も知識もある上司から根拠を突っ込まれると、最後には「あの学者がそういっていたので」と答えるしかなくなる。これでは、上司は納得しない。相手の気分を害し、睨まれる種を捲くだけだったら、止めておこうとなるのだ。
『さらば財務省!』 〜第一章 財務省が隠した爆弾 P.51〜
相手に通じる言い方をするというのはもちろんのこと、最終的には自分の主張への揺るぎのない自信が必要不可欠なこととのこと。これも実にもっともな指摘。自分の主張に対して中途半端な自信しかないままで、過去に決められたことを覆そうとしても玉砕をする可能性が非常に高いので、多くの人は飲み屋で「うちの組織は馬鹿だ、阿呆だ」と無意味に発散して終わってしまうのだろう。
誰よりも徹底的に考え抜き、論理的にも精神的にも自分の主張に揺るぎのない自信を確立する、これを先例を覆す鉄則として肝に銘じたい。