『文章のみがき方』を読んだので書評を。
- 作者: 辰濃和男
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2007/10/19
- メディア: 新書
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「天声人語」を13年間担当した朝日新聞の元論説委員辰濃和男による文章論。
ある日ふと、いままで書き写した言葉のうち「文章論」に関するものだけでも整理しておこうという気持ちになり、散らばっていたものを集めはじめました。さまざまな人の言葉を体系づけて、私の感想を書きそえてみようと思い立ったのは、もう五、六年前です。
この本は、さまざまな方々の「文章論」や「作品」を読み、私がそこから学んだことを記したものです。
『文章のみがき方』 〜まえがき P.鄯〜
「文章を書く」プロが、「文章を書く」達人の、「文章を書く」ことに対する金言を集め、それを5〜6年をかけ、整理し、評を加えた末に完成をしたのが本書。本ブログの読者にわかりやすく言えば『ウェブ時代 5つの定理』文章版という感じか。
定期的に自分の考えをまとめ、世に対して文章という形で発信するということが習慣づいて3年近くたつが、あらためて思うのは、自分の考えをシンプルにまとめ、文章という形で表現をするということの難しさ。下記の本書の目次をみると、一口に「文章を書く」といっても、それが如何に多様な側面のある行為であるかがよくわかる。そして、本書を読めば、その1つ1つの奥深さを痛感し、私など「難しさをわかった気になっている程度なのではないか」とさえ思えてくる。
まえがき
I 基本的なことを、いくつか
1 毎日、書く
2 書き抜く
3 繰り返し読む
4 乱読をたのしむ
5 歩く
6 現場感覚を鍛える
7 小さな発見を重ねる
II さあ、書こう
1 辞書を手もとにおく
2 肩の力を抜く
3 書きたいことを書く
4 正直に飾りげなく書く
5 借りものでない言葉で書く
6 異質なものを結びつける
7 自慢話は書かない
8 わかりやすく書く
9 単純・簡素に書く
10 具体性を大切にして書く
11 正確に書く
12 ゆとりをもつ
13 抑える
III 推敲する
1 書き直す
2 削る
3 紋切型を避ける
4 いやな言葉は使わない
5 比喩の工夫をする
6 外来語の乱用を避ける
7 文末に気を配る
8 流れを大切にする
IV 文章修業のために
1 落語に学ぶ
2 土地の言葉を大切にする
3 感受性を深める
4 「概念」を壊す
5 動詞を中心にすえる
6 低い視線で書く
7 自分と向き合う
8 そっけなさを考える
9 思いの深さを大切にする
10 渾身の力で取り組む
これだけ多彩なテーマについての文章論を展開しながら、筆者の主義主張は一貫している。
同時に、私がいつもおもうのはいい文章のいちばんの条件は、これをこそ書きたい、これをこそ伝えたいという書き手の心の、静かな炎のようなものだということです。大切なのは、書きたいこと、つたえたいことをはっきり心でつかむことです。そのとき、静かな炎は、必要な言葉を次々にあなたに贈ってくれるでしょう。
『文章のみがき方』 まえがき P.鄱
このことだけはどうしても相手にわかってもらいたい。その一途な思いがあるからこそ、文章に命が吹き込まれるのです。あなたの思い、あなたの考えを間違いなく伝えること、それは文章の基本中の基本です。くどいといわれそうですが、文章というものは、「これだけはどうしても伝えたい」という思いのこもったものでありたい。
わかりやすい文章を書くためには、さまざまな文章技術が役に立ちます。が、それを超えて大切なのは「これだけはなんとしてもあなたの胸に刻みたい」という切なる思いです。
『文章のみがき方』 ?〜II さあ、書こう P.85、86〜
「これをこそ伝えたいという書き手の心の静かな炎」、これもまた「文章を書く」ことについての金言の1つ。まぁ、私の場合は、あまり固く力をいれないという趣旨を込めて、ブログのタイトルに”Casual”と銘打ってはいるが、肝に銘じたいと思う。