IT化を推進するということは「ペーパレス化の促進」のような効果をうみ、地球環境にとても良いことである、と思い込んでいたのだがどうも最近はそうではないらしい。Nicholas Carrは近頃コンピュータの電力消費量の増加について興味満載らしく、下記のエントリーを書き、問題提起をしている。
"Server electricity use skyrockets"
"Avatars consume as much electricity as Brazilians"
上記のエントリーのポイントは下記の通り。
- 2000年から2005年にかけて全米のサーバー(但し、Googleの構築しているようなカスタムサーバーは調査対象から除く)の電力消費量が2倍にまで膨れ上がった
- 2005年のサーバーの電力消費量は、全米のカラーテレビの電力消費量に匹敵するものである
- Second Lifeのアバター1つあたり、年間1,752KWの電力を消費しており、これは2,436KWという世界の平均を下回るものの、1,884KWというブラジル人の平均に匹敵するものである
- 1,752KWという数字は、先進国の平均年間消費量の7,702KWには遠く及ばないものの、途上国の1,015KWという数字をはるかに上回り、目に見えないバーチャルな存在ではあるが、何某かの足跡をリアルな世界に残していると言える
当然上記の話は様々な前提に基づいて算定がされているため、数字をそのまま鵜呑みにはできないが、「あちら側」の情報発電所の消費電力問題は、今年あたりから地球環境問題とも関連付けられるホットトピックになることは間違いない。
そして、この問題がもう一つ示唆する重要な点は「あちら側」の世界も、「拡張が自由なコストゼロ空間」ではないという点。
「あちら側」の本屋のAmazonにとって、書籍の1点あたりにかかるコストは「ほとんどゼロ」と言えるが、書籍100万点あたりかかるコストはゼロではない。言ってみれば当たり前の話であるが、現在と比較して「ほとんどゼロ」にみえるが故に、「本当にゼロ」と錯覚しがちなのも事実。
「ほとんどコストゼロ」という感覚が故に、怒涛のように移せるだけの情報を「あちら側」にどんどん移しているわけだが、その結果として実際のコストが徐々に浮かび上がってきたというのが今の状態ではないだろうか。
フロンティアにおける「ゲームのルール」というのは、時代の潮流を読み込んで同時代的に作られるので、ルールというより仮説というほうが正確かもしれない。・・・<中略>シリコンバレー精神 -グーグルを生むビジネス風土 (ちくま文庫)
- 作者: 梅田望夫
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「売上げがわずか、しかも赤字、それでも事業プランが素晴らしければ公開して資金調達できる」というルールや、「さまざまなものを無料化してでも顧客を獲得しさえすれば、カテゴリーごとの寡占が生まれて、利益は必ず後からついてくる」というルールは、「先送りした問題は資金を投入しさえすれば必ずや解決される」という楽観によって支えられてきた。
『シリコンバレー精神 グーグルを生むビジネス風土』 P.117〜118
「ほとんどコストゼロ」という霞(別の言葉で言えば楽観)にまかれてひたすら突き進む人と霞の中でも自分の立ち位置をしっかり見極めている人。「ゲームのルール」の変更が起きた時に如実に差が出ることは間違いない。