Thoughts and Notes from CA

アメリカ東海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

行きはよいよい帰りは怖い 帰米時に空港で「別室送り」になった話

アメリカでは不法移民を厳しく取り締まると豪語するトランプ氏が予想を覆して大統領になったが、合法移民の私の移民ばなしを本日は共有したい。

 

アメリカという国は出国をするのは非常に容易い。何度もアメリカ国外にでているが、未だにどこを通った時点でアメリカ出国となっているのか正直わからない。「気づかないうちに出国していた」というくらい出国は容易い一方で、入国は簡単ではない。自動化されているESTAとは異なり、VISAだと入国審査で質問を色々されて、一筋縄ではいかないことが多い。アメリカでは不法移民が1千万人を超え、社会問題となっているので、「出ていきたい奴はどんどん出ていってくれ、ただ簡単には入国させないぞ」という感じなのだろう。先日、インド・シンガポールに出張をしたのだが、帰米時に入国審査でひっかかり、あえなく「別室送り」になってしまったので、その際の話を共有したい。


現在VISAをL1BからL1Aというタイプに切り替え中で、状況が少しややこしいので、インド出張の前に、弁護士にどの書類を持っていったら良いのか相談をした。「君の場合は、i94しか今時点では持っていけるものがないので、i94を持っていって」との返答があった。i94というのは、アメリカへの出入国記録で、平たく言うと「どんなVISAでアメリカにいつ入国し、いつまで滞在ができるのか」ということが記載された用紙で、私は2017年7月までi94上は滞在できることになっていた。弁護士の確認もとれたので、i94をウェブからダウンロードして意気揚々と出張に出発することに。


2週間のインド・シンガポール出張を終えて、シンガポールから香港へ、香港からシカゴへという長旅をへて、無事アメリカに着陸。飛行機をおりて、いざ入国審査に。こればっかりは何度やっても緊張する。ESTAの列が早々にはけたのを横目に遅々として進まないVISAの列で本を読みながら自分の番を待つ。乗り継ぎの時間は3時間半あったので、トラブルがなければ時間に大きな心配はない。


ようやく私の番になり、パスポートとi94を入国審査官に見せる。「無事に通してくれ!」と心の中で祈るも、怪訝な顔をした入国審査官が「I129SかI797を見せてくれる?お前のVISAの滞在期限は2015年4月だから」とおっしゃるではありませんか。「いや、弁護士に確認をしたらi94だけで大丈夫って話だったんだけど」と返答するも、「I129SかI797がないなら、俺はお前を通せない、じゃぁあっちの部屋に行ってくれ」と別室を指差す。ひぃ、このままでは別室送りになってしまう。何とかi94で通れないかお願いするが、こういうモードになったらアメリカの役人は自分のポジションを変えることはまずない。あえなく恐怖の「別室送り」になってしまった。


大きな空港は色々な国籍の人がいる国際色豊かな場所である。その一画に位置するCustom Boarder and Protection、税関国境警備局の別室は同敷地内においても、より一層濃密な国際性を醸し出している。米国入国に何らかの問題のある人間が狭い密室に閉じ込められ、自分への処遇に不安を覚えながら一様に眉間をシワをよせて鎮座している様は、移民大国アメリカの縮図と言っても過言ではない。


席に座って待つように指示されたので、弁護士からのメールや追加の書類をパソコンを探していると、一人の職員がやってきた。


職員A「お前、何をやってるんだ(もちろん詰問調)?」


私「いや、必要な書類をさがしているんだけど」


職員A「今直ぐパソコンをしまえ、今直ぐにだ!」


そんな言い方しなくてもいいのにと渋々パソコンを鞄にしまう。仕方ないので、スマフォで調べようと電話を取り出すと、予想はされていたが再び「お前、何をやってるんだ?」とまた厳しい口調で言われるので、仕方なく無言で電話もしまうことに、、、。Kindleでも読もうかと思ったが、また怒られると嫌なので仕方なくしばらく席で待つことに。しばらくして、私の名前が呼ばれたのでカウンターに行く。


職員B「お前のパスポートのVISAの滞在期限は2015年だから、I129SかI797がなければ、お前は入国できない」


私「いや、今VISAの延長申請中で、出国前に弁護士に確認をしたら、今回はi94を持っていけって言われて、それで十分なはずだと言っていたんだけど、、、」


職員B「いいか、お前が入国できるのを決めることができるのは、お前の弁護士じゃない、この俺なんだ!


うひぃ、正しいけど、この高圧的な態度と置かれているピンチな状況で胃がきりきりと痛くなる。


私「じゃぁ、弁護士にちょっと電話で相談をしていいですか」


職員B「分かった、電話をして、直ぐにI129SかI797を送ってもらえ」


私「電話をここで使っていいですか」


職員B「電話をここで使わずに、一体全体どうやって弁護士に連絡をとるつもりなんだ、お前は?


さっき別の職員に電話を使うなときつく言われているから聞いただけなのに、、、。弁護士事務所に電話をし、何度かたらい回しにされつつも、何とか担当弁護士をつかまえることができ、事情を説明。立ちながらパソコンをひらいて色々弁護士と話をしていると、パソコンと電話の使用について先ほど私に厳重注意を下した職員Aが唖然とした顔で私を見ているではありませんか。


職員A「お前は、なぜここでパソコンをみて、なぜここで電話をしているんだ!!


職員Bはさっさといなくなってしまったので、何と説明したらよいのやら、、、。仕方ないので、


私「別の職員の方から、直ぐに"自分のパソコン"と"自分の電話"を使って、今直ぐ弁護士に電話をしなさい、って言われたんです」


と、嘘か誠かと言われたら、嘘と言われてもおかしくない回答をする。職員Aは不満げ、面倒臭げな面持ちで去っていった。米国入国に向けて前に進めば何でもよいのだ。そんなやりとりをしている傍らで、事情はよくわからないが一文無しなので入国できないと泣き崩れるメキシコ人女性がいたりして、カオス感が最高潮に達する「別室」なのでした。


結局、この後、弁護士が職員と直接話しをして、弁護士から追加の書類をメールで送付をしてもらうことになり、ようやく無罪放免になる。正直、弁護士が何の書類を送ったのか、そもそも本当に書類を送ったのかどうかは、私にはわからないが、、、。


なお、VISAについて、正直あまりに不勉強だったので、これを機会に少し勉強をした。どうも、私のパスポートに貼ってあるVISAは2018年が「有効期限」である反面、それとは別に記載される「滞在期限」は2015年4月となっていた模様(今まで、そこを突っ込まれることはあまりなかったのだが、、、)。私の会社が「滞在期限」の延長申請を提出しており、それが仮に承認されれば、延長申請に新しい「滞在期限」が記載され、その書類をI129Sというらしい。また、VISAが承認された場合に、新しい「滞在期限」を記載した私自身に発行される通知がI797Aらしい。

 

無事、入国できたからよかったが、「別室」は本当に二度といきたくない。乗り継ぎの空港というのは、ビールをパイントで楽しむ場所であるべきだ。トランプ大統領、どうかお手柔らかに。

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