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ktdiskのブログ

読んだ本の感想、所々の雑感、日々のあれこれを綴るブログ。

IT部門に変革を促す提案とかを求める前に考えるべきこと

id:gothedistanceさんのブログをみて、”経企部門が吐露する「システム部門への不満」”という記事を読んで見た。コンサルタントの書いた提灯記事っぽいのであまり突っ込みすぎるのもどうかと思うが、自分の仕事に遠くない内容が多いのでいくつかコメントしてみたい。


本記事では経営層がシステム部門に対して何を期待しているかを聞くために、下記の通り経営企画部門に対してインタビューを実施している。

この問いを検証するために、経営層に一番近いポジションにある経営企画部門に対して匿名インタビューを実施し、システム部門に対する期待と不満をざっくばらんに話していただいた。

まず、経営企画部門に聞くというのが間違っている。 経営者が何を求めているかを確認するのなら、経営者のところに行かなければならない。経営企画部門というのも経営者の下の一組織に過ぎなく、IT部門に上位にあるわけではない。結果として、この記事は経営企画部門からIT部門への責任のなすりつけみたいなことが起きてしまっている。本記事ではIT部門に対する「経営層の不満」が3つあげられているが、これは「経営企画部門の不満」と読み替える必要がある。

経営層の不満(1) なぜ事業戦略の遂行にもっと関与できないのか
当たり前のことではあるが、システム部門が「ビジネス/業務への貢献」を十二分に果たすには、自社の事業そのものに対する理解を深めるとともに、それらの遂行に積極的に関与することが重要になる。

事業戦略遂行が何を指しているのか記事を読んでもよくわからないのだが、一般的な意味で考えるに事業戦略を遂行するのは飽くまで事業部門であり、それをIT部門に求めるのは酷だろう。自社のビジネス、事業環境などへの理解を求めるのならわかるが、遂行までIT部門に求めるのは適切ではない。
CIOに経営会議で事業戦略などについて意見することを求めるというのもそれはそれでありだと思うが、それはIT部門ではなく、CIOに求めることだ。一経営陣であるCIOとIT部門を同列に考えてはいけない。

経営者の不満(2)なぜ変革を促すような提案を積極的にできないのか
システム部が予算を持っていないことが原因の一つと言いつつも、保守的な提案ではなく、もっと変革につながる提案を期待する意見が出た。

これも良く聞く話だが、その会社がどのような組織形態をとっており、経営者が誰に変革を促すような提案を期待しており、それに応じて予算をどのように配分しているか、が重要であり、予算の問題を解決せずに「IT部門からの提案が足りない」とみりみり締め上げても無理がある。
本記事で紹介されているJUASの”経済産業省による「企業のIT投資動向に関する調査」”の中で、調査対象企業がどのようなIT部門の組織形態をとっているのか、という興味深い調査がなされている。

上記で示されている開発・運用部隊に「変革を求める提案を」と言っても酷だ。組織の中で、戦略・企画を担っているのは誰で、そこに適切な人材と十分な予算が配分されているかが重要であり、提案内容の質の議論はその後であるべきだ。

経営層の不満(3)なぜ成果に対する説明責任を果たせないのか
 A社では、システム投資に対する事前評価、事後評価を実施している。ただし、そもそもの評価方法に対する理解や合意が十分にできていないがゆえに、経営層に成果を十分理解してもらっていないのが実情という。

この疑問が何故IT部門に向けられるのかが、私には今ひとつわからない。自社の事業戦略遂行を支援するシステムであれば、事後評価というのは事業部門を中心になされるべきではないのだろうか。経理業務・システムを見直すことにより、決算の早期化を目指すプロジェクトであれば、実際に決算が何日に締まったかで評価をすべきだし、サプライチェーンの統合によりリードタイムを短縮することを目標としたプロジェクトであれば、実際にリードタイムがどれだけ短縮したかで評価をすべきだ。
「経営層に成果を十分理解してもらっていないのが実情」とあるが、経営者や事業部門の人間がITの活用を重要な経営課題としてとらえていないから、こういうことがおきるのではないだろうか( もちろんIT部門にも問題はあろうが・・・)。


私は外資系の企画部門に属し、日々外人のIT部門の人間から「この要望のBusiness Justificationは何だ」とか、「優先順位付けをするから定量的なBusiness Impactで説明しろ」とか言われている。「お前ら言う割りにBusiness Justificationを理解するほど、日本の事業環境についての知識ねぇだろ」とか、「定量的な数字をだしたのに、よりBusiness Impactの低い北米の要件の方が優先されているだろう」とか、私もIT部門に言いたいことは100個くらいある。ただ、私の勤める会社の場合は、変革をもたらすようなアイデア事業部門からだされて、IT部門はあくまで最新の技術動向や自社のITの方針を踏まえて実現方法を一緒に検討し、それを適切なテクノロジーで導入するパートナーであるという位置づけがはっきりしている。IT部門には主要事業や主要経営課題ごとにBusiness Analystが配置されており、各事業部と開発・テスト・運用の部隊とのブリッジをしてくれている。それなりにうまく言っており、その大きな要因として十分なリソースと適切な人材がIT部門に配分されていることがあると思う。


上述したJUASの”経済産業省による「企業のIT投資動向に関する調査」”の中に面白い統計がある。”IT投資額の年商に締める比率の国際比較”というもので、要するに年間の売上に対して何%のIT投資がなされているかが、地域別に示されている。それによると、日本は1.03%、北米は4.31%、欧州は3.03%。即ち、北米は日本の4倍、欧州は日本の3倍の予算が割り振られているということだ。
変革を促すような提案をしろ、と言ったところで先立つものがなければ、適切な人材も確保できないし、今以上の仕事もすることもできない。もちろん、手元のリソースで最大限の価値を産むように努力はしないといけないのだが、自社の潤沢なIT部門の要員を見ると、こんな提灯記事で色々言われる日本企業のIT部門を不憫に感じてならない。

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