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ktdiskのブログ

読んだ本の感想、所々の雑感、日々のあれこれを綴るブログ。

『NurtureShock』 子供は誉めたら伸びるのか、実は逆効果なのか?

『NurtureShock』という本を現在読み途中なのだが、なかなか興味深かい内容なので読み途中だが紹介を。

NurtureShock

NurtureShock

本書はid:yomoyomoさんのところで知った。「誉めて伸ばす」というのは日本でも最近は一般的な考えだと思うし、私も例に漏れない。ただ、誉め方というのはなかなか難しい。娘に対しては特に甘いせいもあり、誉めることを通じて自己肯定感は育まれるが、その反面少し打たれ強さに欠くんじゃないか、と悩んだりすることが多い。そんな中で下記のような紹介をみると、もうこれは読むしかない。

欧米で一般的な子供を誉めて伸ばす教育方針が実は子供に自信を与えず失敗の恐怖を強めているという話を取り上げているが、確かにこれを否定されたらつらいだろうな。他にもいろいろ定説を覆す話がありそう。


"THE INVERSE POWER OF PRISE"という章の冒頭に登場するのは5年生のトーマスくん。彼はAnderson Schoolというニューヨークの超名門小学校に通っている。IQテストで彼はTop1%の中のさらにTop1%(即ち1万人の1人)の成績をおさめ、両親からだけではなく、周囲の人からもSmart(お利口、賢い)と褒められて育ってきた。トーマス君はAnderson Schoolの中で特に優秀な5名の"Smart Kids”の一員で、そういった自分のステータスにとても誇りに思っていた。ところが、年次が進むにつれこのトーマス君に試練がおとずれる。彼はSpelling(つづり)があまり得意ではなく、ちょっと難しいSpellingになるととたんに挑戦することに躊躇するようになる。3年生になると筆記体を勉強し始めるが、自分の得意でない分野なのでトーマス君はしり込みして何週間も手をつけなく、ついに家の補修扱いとなってしまう。トーマス君は”Smart”なんだが、苦手なことや不得意なことを克服する力が十分に備わっていない子供に育ってしまった。


本書はこの「困難を乗り越える力をトーマス君がもっていない原因」は、周囲から"Smart"とたくさん褒められた点にあると指摘する。「君はお利口だね」という褒め方は、子供に今備わっているもののみを肯定する行為であり、既にGivenの自分の知性自体が解決策であるかのような錯覚を子供に与えていまうという。結果として、子供は自分の能力の範囲で結果がでやすそうなものだけに手をつけ、難しいことに挑戦して力を伸ばすという習慣が身につかなくなってしまうというのが筆者の主張。
Dweckという方の実施したリサーチ結果が紹介されているのだが、これがなかなか興味深い。5年生の子供たちを2つのグループにわけて、比較的簡単なパズルのテストをまずは実施する。そして、1つのグループに対しては、正解したことを褒めると共に、「もっと難しいテストにチャレンジすると大変だけれども、今以上にパズルが上手に解けるようになる」と努力の重要性を教える。もう1つのグループに対しては、「みんな正解してとてもお利口だね」と褒めるだけにする。そして、2問目として簡単なパズルと少し難しいパズルの2つを提示し、子供たちに自由に選ばせると、努力の重要性を強調したグループの子供は90%以上が難しい方にチャレンジしたが、褒められただけのグループはほとんどの子供が簡単なパズルを選んだという。これを何回か繰り返すと、当然努力グループのほうが全体的なパズルを解く能力がはるかに高くなったという。


本書は、褒めて伸ばすことそのものを否定しているわけではないのだが、褒め方には注意が必要と強調する。

  • 手放しに褒めるだけではなく、努力した、頑張ったからよい結果が得られたんだというように努力の重要性も一緒に教える
  • 「すごいじゃん!」とか、「お利口だね」というように結果をいうだけでなく、「ちゃんとご飯を見ながら食べたから、ほとんどこぼさないで食べれてすごいね」とか、「いっぱい練習したから、字が上手にかけてお利口だね」というように何がよかったのか、そこに至るプロセスを具体的にあげる
  • 褒めるのは大事なのだが、褒めてばかりいると、「褒められなければ頑張らない」、「褒めてもらうために何かする」というようになってしまうので、褒めすぎない

というあたりが子供を褒めるにあたっての注意点として紹介されている。これが筆者の経験のみでなく、具体的な研究事例とともに提示されているのでなかなか説得力もある。上記のことは、言われてみると当たり前なのだが、じゃぁ我が身を振り返ってよい感じにできているかを考えるに心許ないところがあり、私は参考になった。


本書が面白いのは、数々の研究事例を紹介しながら、色々な提言をしている一方で、"Parent by the book(マニュアル本による子育て)”を否定していることだ。

We agreed that we didn’t paret “by the book”, nor did we want to. We parented on instinct. We were madly in love with our chldren, and we were careful observers of their needs and development. That seemed enough.
『Nuturing』 〜Introduction P.4
私たちは「マニュアル本による子育て」をしたつもりはないし、したいとも思わない。私たちはどちらかと言うと自分たちの感性に従って子育てをしている。私たちは子供を溺愛し、子供が何を必要としているか、そしてどのように成長しているかをとても注意深く観察をしてきた。それで十分なのです・。

本エントリーを読んで、「お利口だねって言ってはいけない」、というところを切り出しても子供の教育なんて絶対にうまくいかない。子供が何を考え、何を学び、何につまずき、何に興味を感じ、何を感じているかというのは刻々と変化し、そういった状況にあわせて、時に放っておき、時に叱咤し、時に助言をし、時に手放しに賞賛する、など、子供の自律を促すような支援が親には求められる。子育てというのは、何か画一的なルールをあてはめて一丁あがりってものでは絶対にない。そういった考え方を子育て本でありながら、Introductionで釘をさす点は私は非常に好感をもてた。


その他にも"THE LOST HOUR”、"WHY KIDS LIE”、"CAN SELF-CONTROL BE TOUGH”など面白そうなトピックがたくさんあるので、また折にふれて紹介をしていきたい。

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