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ktdiskのブログ

読んだ本の感想、所々の雑感、日々のあれこれを綴るブログ。

翻訳についてのアメリカ人の頭の中

外資系企業小噺

外資系企業の人であれば誰しも日本語化で苦労をしたことがあるはずだ。対象は社内文書だったり、お客様に向けた文書だったり、システムだったり様々。日本語化の重要性について理解をえられなかったり、その品質について考え方にギャップがあったり、とにかく色々な苦労が生じる。私も現在進行形であれこれ苦慮しているが、最近思うのは母国語以外の言語を真剣に学んだことがないので、翻訳という行為そのものを理解する素養がこの人たちにはないんだ」ということ。何と言うか、中華料理を見たことも食べたこともない人にその特徴を言語だけで一生懸命伝えて理解をしてもらう、というような難しさがそこにはある。本日は、私も愚痴も含めて、私が今まで面食らった事例をいくつか紹介したい。

項目は日本語にしても入力は英語

Localizationの必要性をずっとうたってきた成果か、本社のアメリカ人も大分考慮してくれるようになってきた。新しいシステムを導入したりする時も「もちろん、Local Languageには対応するから」とプロジェクト開始当初に言ってくれることも最近は結構多い。先日あるシステムを導入した際も、300〜400程ある項目やそのシステムからの配信メールを全て翻訳会社に依頼し、日本語にしてくれた。ぶっちゃけ、社内システムの項目などは優先順位はかなり低いのだが、まぁやってくれるにこしたことはない(レビューはかなり大変だが・・・)。そして、プロジェクトが進み、ユーザへのトレーニングの計画について電話会議で話している時に、念のために「もちろん、日本ではシステムへの入力は日本語でいいんだよねぇ」と確認すると、「いやぁ、入力は全部英語でしてもらわないと・・・、項目は日本語にしたんだから入力は英語で頼むよ」と。
「項目は日本語に訳しましたが、入力は英語です・・・」と日本のユーザに説明すると「逆ならまだましだが・・・」というリアクションが大体返ってくる。利用状況を確認したいとか、部分的に入力内容をレビューしたいという軽いタッチで、全ての入力を英語でやってくれと頼まれることは実は多い。母国語以外の言語で読むことと書くことの間に負担の差がかなりあることは、アメリカ人はあまり認識していない。悪気があるわけではないのだが、母国語以外の言語をまともに勉強したことのない人は「読むも書くもそんなに変わらないんでしょ?」という発想からはなかなか抜け出せないのだ。

システムがGoogle Translatorと連動するから大丈夫?

入力を英語でするか、日本語でするかは日本企業に勤めている人は考えられないと思うが、非常によくもめるポイントである。外人なんて特にレビューしてなんぼの世界なので、日本語入力を極端に嫌う傾向にある。
とあるプロジェクトでそういった今までの議論を受けて外人が誇らしげにプレゼンするシーンがあった。その内容はというと、「今回のプロジェクトでは主要な入力項目はGoogle Translatorと連動させ、日本語で入力をすると自動的に英語に翻訳され、英語の入力は日本語で翻訳されるようになり、今までの言語の問題を全て解決できる!」と。心意気は嬉しかったのだが、機械翻訳という技術がどの程度まで進んでいるのかということに対する彼の理解の無さに私は愕然とした母国語が英語でなければ、大体の人は多かれ少なかれ機械翻訳を試したことはあり、翻訳技術がまだまだ実用段階に達していないことは知っているはずだ。英語が母国語で、十二分の英語コンテンツに囲われている人は、わざわざ機械翻訳などを試す機会などないのだろう。
で、私が聞いたのは「で、Google Translatorで訳した英語で君たちはいいのか?」という質問。帰ってきた答えは、「That’s good point! But I don’t know...」。誇らしげにプレゼンする前に自分で少しくらい試してみろよ・・・、困った連中だ。

Dear CustomersとDear Valued Customers

翻訳する際に「原文に忠実に訳し、一言一句変えてはならない」という指示を受けることがたまにある。とは言っても、そういう指示をだす人間が、何をもって「原文に忠実」と言い、何をもって「変えた」ことになるか、具体的なイメージを持っていることはほとんどない。何故なら翻訳という行為そのものをしたことがないからだ。その点を突っ込むと大体答えに窮し、「意味がきちんと伝わり、日本語としても自然であれば、まぁよろしい」ということになる。
先日あるプロジェクトでそういった指示をうけ、お決まりの突っ込みをしたところ意外にも具体的な例と共に答えが返ってきた。ただ、その答えは「受動態の文を能動態にしてはいけない、また Dear CustomersとDear Valued Customersは訳しわけなければならない」というもの。受動態と能動態なんて翻訳会社が訳す段階で適宜切り替えられていることがほとんどだし、「お客様各位」を「大切なお客様各位」と訳したところで翻訳感がにじみ出るだけで、親愛の情がにじみ出るわけではない。
受動態と能動態の話は勝ち目なしと思ったのかすんなりひいたが、Valuedを入れるか入れないかについては、「Valuedにあたる言葉がないはずはないだろう」とかなり食い下がられた。「Dear Customersにあたる常套句は日本語にもあるが、それをさらに丁寧にしたものは特にないんだ」みたいな話をしても、向こうも翻訳自体をしたことがないので、雲をつかむような感じで今ひとつ理解にはいたらない。まぁ、こういうモードになると時間がもったいないので「O.K. I will do my best」と言って、あまり深入りしないようにするのだが・・・。Bestを尽くして「お客様各位」に到達したんなら仕方ないし、どうせ向こうはわからないし・・・。


以上、つまらない愚痴まじりに私の苦闘を紹介したが、同じような苦労をしている方、面白い話があれば是非教えて下さい。

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