Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

『なぜ、「できる人」は「できる人」を育てられないのか?』 「できる人」を育てる原則論

『なぜ、「できる人」は「できる人」を育てられないのか?』を読んだので書評を。

〈NJセレクト〉 なぜ、「できる人」は「できる人」を育てられないのか?

〈NJセレクト〉 なぜ、「できる人」は「できる人」を育てられないのか?


本書は「できる人」と「できない人」の思考回路の違いを解き明かし、今時点の「できない人」の「できる能力」を導き出すためには、どうしたらよいのか、について指南する本。「できない人」の「できない人」たる所以、「できる人」の「できる人」たる所以という言葉で表現するのが難しいテーマを、わかりやすい表現で浮き彫りにしている。


前半150ページでは、「できない人」の思考回路、「できる人」との違いが事細かに解説されている。わかりやすく、かつ説得力がある反面、「違いがわかったが、でどうすればよいんだ?」とじれったくなるが、後半部で紹介される対応策の第一ステップが相手を受け入れることなので、我慢して読み進めなければならない。たかだが、この150ページを読むくらいの忍耐力がなければ、自分とは異なる考え方をしている人を受け入れることなど到底できない。


前半部で特に面白かったのが、下記のくだり。少し長いが引用したい。

「できる人」が常に未来へ向けて、"HOW"(いかに・・・するか)を意識する一方、「できない人」は少し思考が停滞すると、すぐに諦めの"REASON"(・・・だから無理)を導き出すのです。・・・<中略>
「できる人」が「できる」という評価を得る過程ではさまざまな創意工夫があったはずです。たまたま運よくできたのではなく、"HOW"を繰り返しながら小さなこと、大きなことを達成し、少しずつ自己信頼を培ってきました。
その体験は好ましい記憶として脳にインプットされています。実際に何かを達成することで、快楽物質のドーパミンが分泌されて「好ましさ」を生み出すのです。
・・・<中略>
「できない人」は、"HOW"が習慣づけられていません。その時々に"HOW"を考える(あるいは考えさせられる)ことはあっても、ごくまれにその先にいいことがあったくらいでは、望ましいプロセスであるというインプットはされません。ドーパミンの分泌による心地良さを味わった経験が、「できる人」に比べて少なすぎるのです。

それよりも、なかなか物事が進まずに、苦痛が増していったことのほうが強くインプットされています。そもそも人間の脳は、快楽を求めるようにプログラミングされています。したがって「できない人」は、ハードル越えを避けることで苦痛を和らげるという、消極的な対処で快楽に向かうわけです。
そのために「できない人」は、必死でハードル越えをやめるための"REASON"を見つけようとします。それは「できる人」と正反対の行為に見えますが、人間として自然な快楽を求める行為であるのは同じです。
『なぜ、「できる人」は「できる人」を育てられないのか?』 〜第3章〜「できる人」に知ってほしい「できない人」との違い P.117-120

大変な仕事を前にしたり、変化を求められた際に、「できない理由」ばかりあげ、前に進むための方法、解決しなければならない課題への対応などに、なかなか目がいかない人はよくいる。その行動パターンを、脳の働きからもたらされる、人間の自然な自己防衛本能として説明されている点が私には非常に新鮮で、参考になった。


後半部分では、「できる人」を育てるためには、何が必要で、どのようなことをすればよいのかという点に焦点があたる。相手を受け入れ、相手に伝わるように影響力を行使し、そして相手の能力を引き出すというのが、大まかなステップとなる。参考になる部分も多いが、前半部分と比較する原則論が大半を占め、具体例が少なく、すぐにつかえる手法が多く紹介されているわけではない
ただ、この点は本書の欠点と見ることもできるが、筆者のねらいととらえることもできる。

人の能力を引き出すためのコミュニケーションは、手法ではなく原則を押さえることが重要です。もちろん実施段階ではさまざまな手法を用いますが、これは自然発生的に埋まれてくる部分もあるのです。言い方を換えると、しっかり原則を自分に落とし込むことで、普段からかわしている会話の効果性が高まるということです。
『なぜ、「できる人」は「できる人」を育てられないのか?』 〜第5章〜「できる人を育てる人」の技術 P.227

原則論は、手法と比較すると、実施・徹底するのが困難という面があり、あまりお手軽な解決策ではない。ただ、原則をきちんと理解せず小手先の手法のみ適用しても、効果のほどは疑わしい。原則論が自分の中に擦り込まれれば、手法は後から自ずとついてくるので、消化しやすいが身にならない手法を列挙するより、原則論のみ紹介するというのが筆者のアプローチのように思う。


Playerとしては一流だが、Managerとしてはビギナー、もしくは2流という自覚のある方には本書はおすすめ。

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