Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

『今日からできる上手な話し方』 「話す」という行為のチェックリスト

臼井由妃さんの『今日からできる上手な話し方』を読んだので書評を。

今日からできる 上手な話し方

今日からできる 上手な話し方

「話す」という行為はとても重要だ。上手に話すことができれば日常生活をより楽しむことができるし、上手に話すことができればビジネスでより成果を上げることもできる。その反面、物心ついたことろから自然とやっていることであるが故に、「話す」という行為は私の中で既に「できる」ことになっており、「話す」ことそのもののスキルアップや練習を怠っているというのが正直なところだ。
よい話し手になるためには、それなりの修練が必要だが、そこに多くの時間を割いている人は少ないのではないか。本書は、私も含めてそういった人への指南本となっている。原理原則から、細かいテクニックまで盛り込まれており、講演で大勢の人の前で話す機会があるなどの特定の人を対象としているわけではなく、万人が対象という印象を受けた。
語られる原則論は、本書の中で引用されているデール・カーネギーの『人を動かす』と結構かぶるところがあり、私自身はAmazonの書評で激賞されている程は、感動したり、目から鱗が落ちたりしなかった。「相手の立場にたつ」とか、「聞き上手になる」とか、「結論から先に話す」とか、「回答はポジティブな言葉から始める」とか、語り尽くされた感があり、部分的に退屈に感じることがあった。だが、本書に記載されている原則論やテクニックまで含めて自分がどれ程実践できているかということを考えてみるに、理解はしているができていないことが非常に多いことに気付かされる。本エントリーでは、自戒の念も込めて、そのいくつかを紹介したい。

言葉にとらわれすぎない

「話す」というと、どうしても「何を話すか」、もっと言えば「どんな言葉を口から発するか」ということに視点がいきがち。例えば、大きな会議で発言を求められそうな雰囲気がでれば、まず頭に浮かぶのは「何を言おうか」ということ。発した言葉が話の筋にのっており、多少のオリジナリティがあれば、その瞬間は事なきをえるのだが、じゃぁ自分が言ったことが参加者にどれ程伝わったかというとかなり疑問が残る。大体、人は他の人の発言を聞かずに、自分が何を言うか考えることに時間を使っているものだ。
なので、「どんな言葉を口から発するか」ではなく、「どのように自分の意見を相手に伝えるか」にフォーカスしなければならないのだが、これがなかなかできない。重要なところはゆっくり話したり、沈黙をおいたり、アイコンタクトを適切に使うなど、なかなか体に染みついておらず、意識からそういったことを外れると、無難に必要な言葉を口から発することで満足してしまいがちなので反省が必要・・・。

社会経験を積むほど自己紹介が下手になる

私は、自己紹介が上手にできる人を、ほとんど知りません。
社会人としての経験を積むほどに、下手になると言ってもいいでしょう。
『今日からできる上手な話し方』 〜第二章 最高の第一印象を与えるには P.42〜

これは、結構笑いごとではない。
ビジネスで自己紹介が求められるケースとして多いのは名刺交換の時と思う。この名刺交換は儀式として確立しすぎていて、なかなか自分という人間を伝える機会となっていない。名刺交換は言葉の通り、名刺を交換するためだけのもので、その後に自己紹介のタイミングがあればよいのだが、名刺交換をしたら自己紹介完了というケースは結構多い。名刺交換の時にあまり力一杯でもなんなので、会社対会社で仕事をしているのだから、部署の機能とそこにおける自分の役割を相手の頭に残すようなキーワードくらいは言葉として15秒くらいの交わりの中で、発するようには心がけている。だが、ここのところ実際にやった自分の名刺交換のシーンを思い出すに、決して上手とは言えず、少なからずも自己の紹介になっているかと言われると微妙なところがある。
名刺交換はすればするほど、儀式化して、小さい紙をお辞儀をしながら交換しあうことに終始しがちな傾向がある。紹介という要素が抜け落ち、どちらが先にだすかとか、どれだけ相手より低くだすか、など手のつけやすいところに流れ、中身が伴ってないと言われれば、それも正しい。頭では理解していても、これまた相手のある話なので周囲の惰性に流され、まぁいいかと思うこともしばしばあり、下手になっていると言われればそうかもしれない。筆者のように自分をまず語り、相手にも語ってもらうという姿勢は確かに大事。

生身の自分をきちんと紹介できる

人が興味を持つのは、あなたの仕事やスキル、経歴ではありません。
あなたが、どんな考え持ち、どう感じ、どう生きているか。
生身のあなたに興味を持つのです。

輝かしい経歴を聞き、スキルを見せられて、話が弾むのは、あなた自身への興味からではなく、看板への興味です。そこから脱却しなければ、いくら時間をかけて話しても、親しみを感じず、また会いたいとは思えないでしょう。
自分はどう思っているのか、どう感じているかが伝わってこない人の話は、不安を与えるばかりです。
『今日からできる上手な話し方』 〜第二章 最高の第一印象を与えるには P.61〜

自己紹介として生身の自分をさらすという点については、外人はすごい。4月から私の会社の東京オフィスにアメリカ人がアサイニーとしてやってきた。彼が来て間もない頃、懇親の意味を込めて二人で初めて飲みにいったのだが、乾杯するやいなや、軽く咳払いをし、自分が何に関心を持ち、何を目指す何者であるかということを懇々と語り始めた。そして、自分が語り終わると、バトンがこちらに渡され、「で、お前は何者なんだ」とばかりに同様の自己紹介を求める。私も応戦して自分をさらすと、超真剣に聞きながら、ところどころで、´Great!´、´Excellent!´と相づちを打ちまくる。いきなりがっぷり四つに組むのは日本的ではないが、でも一通りの質疑応答を交わした後は、30分程で互いをさらしあった結果か余計にうち解けることができた。まだまだ、さらし上手とはいかないが、自分が一番詳しい自分のことくらいは、きちんと上手にさらせるようにならないといけないと再認識した。


以上のような感じに、本書は「話す」という軸で自らを振り返ることができる。項目が網羅されているのでチェックリストとしても活用できる。「話す」のが苦手という人も、得意という人も、手に取り、一度自分のできていること、できていないことを整理されてはいかがだろうか?

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