Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

マイクロソフトのオープンソースに対する「本音」へのつっこみ

"マイクロソフト担当者に聞いた、オープンソースに対する「本音」"という記事をタイトルにつられて読んでみた。このエントリーも何を隠そうXP上で書いているし(さすがに、ブラウザはFirefoxだが)、私は同社を毛嫌いしているわけではないのだが、下記の一節を読むだけでも、括弧でくくるほど「本音」が語られているわけではなさそうなので、少々つっこんでみたい。

オープンソースに対するMicrosoftの姿勢が本格的に変わり始めたのは、およそ3年ほど前からだ。だが、実はそれ以前から、Microsoftは商用ソフトウェア・ベンダーとして「どうしたらオープンソースに貢献できるか」を考え続けてきたそれは、オープンソースを“是”としたかったからだ。
そもそも顧客企業がソフトウェアの導入に当たって最初に考えるのは、「商用ソフトか、OSSか」ということではない。

商用ソフトウェア VS オープンソースソフトウェア?

まずオープンソースソフトウェア(以下、OSS)の対の言葉として、商用ソフトウェアという言葉が使われているが、これはさすがに違うんではないだろうか。というのも、SugarCRMとか、EnterpriseDBとか、商用とよばれるOSSも世の中に沢山あるからだ。対比をするのであれば、OSSプロプライエタリ・ソフトウェアというのが正しい。
じゃぁ、OSSプロプライエタリ・ソフトウェアは何が違うのかと言ったら、厳密な定義はさておき、思想面の違いにフォーカスすれば、誰でも自由に開発に参加できる環境を確保し、その開発成果を制約なく誰もが享受できるようにしたほうが、よりよいソフトウェアがより多くの人の手元に届くというのがOSSの思想であり、一方で開発を行った人・企業にのみ、使用権、及び使用許諾権を与え、そこから生じる利益の独占する権利を与えたほうがよりよいソフトウェアができるというのがプロプライエタリ・ソフトウェアの思想と、言える。
同社はプロプライエタリの思想に傾倒している会社であり、最近歩み寄っているとはいえ、さすがにOSSの思想をもった会社ではない。だが一方で、オープンソース、及びコミュニティとの共生を同社が余儀なくされるのも事実であり、共生を促進する上では、プロプライエタリ思想に染まっているということは少なくともプラスにはならない。商用ソフトウェアをOSSの対立軸としてあげることによって、プロプライエタリ色をうすめ、イメージ向上をはかりたいということこそが同社の「本音」ではないのだろうか

オープンソースを“是”としたかった?

これは、言い回しだけの問題であろうが、同社が「オープンソースを“是”としたかった」というと、かなり違和感を覚える。「オープンソースを“是”としたかった」というのは、オープンとプロプライエタリという2つの思想がある中、宗教くさくOSSの思想を信仰している人が使う言葉であって、プロプライエタリ教の同社が使うと、「それはちょっと言い過ぎなんじゃない」と私などは思ってしまう。
徹底的にOSSを敵視し、叩き潰そうとしてきた同社の「本音」は、今までは「オープンソースを"非"としたかった」のだが、それはできないし、考え方として誤りであることに気付き、共生の道を選ぶことを余儀なくされた、といったところではないだろうか。

どうしたらオープンソースに貢献できるか?

最近の同社のオープンソース・ソフトウェアに対する貢献は、私は十分に評価に値すると思う。程度が企業規模に対して十分かどうかとか、なんだかんだ言って同社のプロプライエタリのソフトウェアをいっぱい売りたいだけではないかとか、いかようにも突っ込めるが、OSSそのものをビジネスにしている会社は世の中に沢山あるし、殆ど全ての企業が自社の利益のためにOSSを自社システムで使っていることを考えると、同社だけ槍玉にあげるのも大人気ないと思う。
だが、「どうしたらオープンソースに貢献できるか」ということをずっと考え続けてきた、というのが括弧でくくる程の同社の本音かと言われると思わず首が傾く。貢献するというのはあくまで同社にとってはOSS共生するための手段であり、本当の「本音」は、どうやってOSSと折り合いをつけ、共生していくかという落としどころをずっと考え続けてきたというところだろう。



以上、好き勝手なことを言ったが、OSSの普及推進をする道として、コミュニティに個人で参加するとか、OSSに特化した会社に勤めるとか、その他にも色々あるが、マイクロソフト社でOSSの担当をするというのも一つの道とは思う。きちんと成果をあげれば、影響が大きい反面、間違いなくいばらの道であると思うので、本エントリーのような勝手なつっこみに負けず、是非頑張っていただきたい。

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