Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

Googleゼロ成長 2009年第2四半期決算考

Googleの第二四半期の決算が発表された。数字を見る限り、完全に成長は止まったという感じだが、C-Netは"グーグル、第2四半期決算を発表--広告売り上げが好調"なんて記事を書いており、びっくり。具体的に数字を見てみると、売上は前年同期比では確かに3%増加しているものの、前四半期比では、0.25%増とほぼゼロ成長。前年同期比たったの3%の売上増で、広告売上が好調なんて記事を書かれるなんて、Googleも大分落ち着いたものだ。この手の数字はある程度Historicalに見ないと意味がないと思うので、前四半期に続いて少し考察してみたい。

売上の成長率のトレンド

下記はGoogleの売上の成長率のトレンド。

  2008 Q1  2008 Q2  2008 Q3  2008 Q4  2009 Q1  2009 Q2 
前年同期比  42%  39%  31%  18%  6%  3%
前四半期比  7%  3%  3%  3%  ▲3%  0%

前年同期比ははっきりと鈍化が見てとれ、前四半期比も2009年の第一四半期のマイナスを境にぴったりと成長が止まってしまっていることが見てとれる。他のハイテク大手が軒並み前期比でマイナスとなっているのと比較すれば立派ではあるが、成熟した大企業のような成長率で若干寂しい気がする。もっとも、同社はもともとウォールストリートのアナリストのことなどは気にしないと明言しているので、特定の四半期の結果に一喜一憂はしないのだろう。もっとも、であればわざわざ数字の悪い中、「売上好調!」なんてアピールしなくてもよいのではないかという気はするが・・・。

"Paid Clicks"の成長率のトレンド

次に、広告収入につながるクリックが何件あったかという"Paid Clicks"のトレンドを見てみたい。

  2008 Q1  2008 Q2  2008 Q3  2008 Q4  2009 Q1  2009 Q2 
前年同期比  20%  19%  18%  18%  17%  15%
前四半期比  4%  ▲1%  4%  10%  3%  ▲2%

全体としては減少傾向にあるものの、依然として前年同期比で2桁成長を維持している。このトレンドから新規広告の受注数やその消化率はまだ成長傾向にあることが読み取れる。そのこと自体は良いことなのだが、売上の表と比較して見ると面白いことがわかる。2008年の第3四半期までは、売上の成長率が"Paid Clicks"の成長率を上回っていたのだが、2008年第4四半期でイーブンになり、それ以降は逆転してしまっていることがわかる。"Paid Clicks"が増えているのに、売上が増えないということは、広告の単価が下がっていることを意味する。より安い値段で多くの人がAdWordsAdSenceを使えるようになったのは良いことではあるが、出稿数の伸び止まりが売上に直撃するので、あまり良い傾向とは言えない。

Cost of RevenueとOperating Expenseの削減

売上の大幅な成長が見込めない中、前四半期あたりからGoogleが取り組んでいるのがコスト削減。

Other Cost of Revenues
Other cost of revenues, which is comprised primarily of data center operational expenses, amortization of intangible assets, content acquisition costs as well as credit card processing charges, decreased to $655 million, or 12% of revenues, in the second quarter of 2009, compared to $674 million, or 13% of revenues, in the second quarter of 2008.

Operating ExpensesOperating expenses, other than cost of revenues, were $1.54 billion in the second quarter of 2009, or 28% of revenues, compared to $1.64 billion in the second quarter of 2008, or 31% of revenues.

対前年同期比で、Cost of Revenueを20億円近く、Operating Expensesを100億円近く削減しており、このコスト削減が利益を押し上げている。ちなみに、対前四半期比だと、Cost of Revenueは10億円近い削減(2009 Q1は$666M)となっているが、Operating Expensesは20億円ほどの増額(2009 Q1は$1.52 B)。どの程度本気でコスト削減をしているかはわからないが、OPEXの削減はあっという間にひと段落した感がある。もっとも、コスト削減に注力して、EPSを何とか維持するなんていう他のハイテク企業のようなウォールストリート至上主義な経営に傾倒したら、それこそ名折れだ。利益率もまだ十分に高いのだから、EPSなどにこだわらず、引き続き派手に色々やってほしい。


Googleの取り組みというのは翌四半期、翌々四半期に数値として表れるような短期的なものはあまりない。かなり近視眼的な分析をしておきながらなんだが、直近の売上増につながりやすい、ソフトウェアライセンス収入の追及とか、ハードウェアの販売とかに手を出さずに、時間はかかるが大きくパラダイムが変わり、それについてくる形でがっぽり収益が増すというような派手なことにGoogleには引き続き取り組んで欲しい。

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