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ktdiskのブログ

読んだ本の感想、所々の雑感、日々のあれこれを綴るブログ。

「バザール的協業」と「オープンソース的」考

“むしろ「バザールモデル」という言葉を使わない方がよいのでは?”という大人気ないタイトルのエントリーに対してshiroさんという方から中身の濃いコメントを頂いた。コメント欄で返事をしようとしたのだが、長くなりそうなので、頂いたコメントを元に考えたことをいくつか書いてみたい。

「たくさんのボランティアが無償で労力を提供するもの」というイメージの弊害

オープンソースはたくさんのボランティアが無償で労力を提供するもの」というイメージが流布されると弊害があるとの指摘を受けたが、まずこの点はある意味ではごもっともと思う。例えば、「無償のボランティアが世界で一番堅牢なLINUXというOSを作った」というのはドラマチックであり、注目を集める売り文句としてはなかなか良いが、IBMIntelのような大企業の多大な貢献も見えなくしてしまうし、そして何よりそのイメージのおかげでエスタブリッシュメント層が感じる胡散臭さがなかなか拭えなかったりする。NRIが発表している"企業におけるオープンソースの利用状況”では安定性・可用性、セキュリティホールへの対応がオープンソースの利用検討の際の課題として上位を占めている。「たくさんのボランティアによる無償の労力の結果」というより、「成果物が改善されるチャンスを最大化するように慎重に設計されたシステムにより生み出されたのがオープンソース・ソフトウェア」ということが、もっと言葉を尽くして語られていれば、もう少し違う結果になったようには思う。

巧妙にバザール的協業が有効に機能するシステムを作る

現象しか見ていないから、条件を揃えれば自然に現象が発生するはずだ、発生しないのは土壌が無いからだ、という理屈になってしまう。違うんです。現象を起こすようにシステムを設計してやることが最も重要で、「オープンソース」はソフトウェア開発においてそういう設計をうまくやってのけたってことなんです。オープンソースを政治や社会活動へと広げたいなら、OSDが巧みな設計されたのと同じくらい巧妙に、バザール的協業が有効に機能するシステムを作るしかない。

「バザール的協業」を政治や社会活動へと広げたいなら、それが有効に機能するシステムを如何に作りこむかが重要という点についても同意できる。「土壌がない」の一言で片付けてしまい、システム設計の妥当性・巧みさに議論が及ばなければ確かに建設的とは言えない。だが、それはあくまで、特定の取り組みがうまくいったか、うまくいかなかったかを議論する際にあてはまる話であり、日本全体としての取り組みの多さを語る上では、土壌というのもそれはそれで見過ごせない要素とは思う。もっとも、どれだけ多くの取り組みがなされているかは、現実的に誰にもわからない話であり、日々オープンソースの開発に勤しみ、精力的に活動しているエンジニアにしてみれば、土壌という言葉でわかるはずもない取り組みの総数があたかも非常に少ないかのような言い方をされるのは癇にさわるのだろう。

システムと現象(モデル化)

最後にこの部分。

オープンソース」は「成果物が改善されるチャンスを最大化する」ように慎重に設計されたシステムで、その上では「バザールモデル」が非常に有効に機能する、ということだと思うんです。前者はシステム。後者は現象(のモデル化)。Michael Tiemannだって、システムの話をしてるでしょう。バザールモデルが有効に機能するシステムをこうやって作りました、って話ですね。

『「成果物が改善されるチャンスを最大化する」ように慎重に設計されたシステム』というくだりは、既に指摘したが、強調してもしすぎることがないほど大事な話だと思う。ただ、「前者はシステムで後者は現象(モデル化)」というくだりが、今ひとつ私のはらにおちない。言葉どおり受け止めれば、オープンソースは現象ではない、バザールモデルはシステムではないということになるが、それは本当に正しく、そこを厳密にわけていないから、議論が土壌のほうにいってしまったのだろうか。議論が土壌にいってしまったのは、各所で指摘がなされているが、大成功した上澄みの事例にしか注意が払われていないからではないのだろうか。また、Michael Tiemannのブログは一通り読んでいるが、彼がBazaar Modelという言葉を使っているのもみたことがない。この辺は、実際にその辺のところをどういう風に彼が考えているのか聞いてみても面白いかもしれない。本件、まだ整理ができていないので、もう少しあれこれ考えてみたい。


いずれにしても、shiroさん、中身の濃いコメントを頂き、ありがとうございました。騒動がおきているほうのブログのコメントも示唆に富み、大変勉強になります。少なくともそちらのコメントを熟読し、「バザールモデルという言葉をつかうべきではない」という考え方は改めました(以前、「バザールモデル」のことを「オープンソース的」と表現することには、目くじらをたてることはないと思っていますが)。こういう突き放し方をされると身も蓋もないのですが、建設的なフィードバックは大歓迎ですので今後もお願いいたします。

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