Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

広がるオープンソース型の取り組み エストニアのごみ収集プロジェクト

Michael Tiemannが"Trash Talk"というエントリーで"Let's Do It!"というエストニアのインターネットを活用したごみ収集キャンペーンを紹介している。プロジェクトの概要は下記の通り。

  • 1日限りのごみ収集ボランティアを開催
  • 当日は5万人(エストニアの人口は140万人)もの人間が参加
  • 1日で1万トンものごみを収集
  • コストは500Kユーロ(大体6500万円)のみ
  • これを政府主導で実施したなら、22,500Kユーロ(大体30億円)はかかったと推定

1万トンのごみと言っても想像できないのだが、政府がやる場合の45分の1くらいのコストで実施したというのは凄まじい。


という動画にプロジェクトの詳細が紹介されているので、要点を紹介したい。

STEP1 チームを設立する

まずは、エストニア国内の様々な専門家の参加を促し、20名のチームを数週間で作り、その20名がさらに600名の人を集めた(もちろん、ボランティア)。

STEP2 パートナーに関与してもらう

各エリアの専門家、大企業、メディア、政治家、さらに大統領まで、協力を促し、トータルで500以上のパートナーをプロジェクトに関与してもらった。

STEP3 ごみマップを作成する

どの場所にどんな種類の、そしてどれくらいの量のごみがあるのかを管理する、「バーチャルごみマップ」を作成する。Google Earthなどのフリーソフトを活用し、専用ソフトウェアを作り、誰でも簡単に国中にあるごみの写真を撮って、サイトにアップロードできるようにするとともに、誰でもそれを見れるようにした。720,000人ものボランティアがこのマップ作成に関わり、1,656個の「ごみポイント」が定義された。

STEP4 広報活動をする

このプログラムの内容を国中の人に知ってもらうために、有名な俳優、ミュージシャンに無償で宣伝活動をしてもらった。

STEP5 参加者に登録してもらう

プログラムの参加者をウェブサイトで登録できるようにした。

One of the keys to the success of the project was to make it doable in a single day, and the key to making it doable in a single day was to make it a massively distributed project. The hyper-modularity of open source is amenable to mass participation.
このプロジェクトの成功要因の1つは「1日で実行可能」であった点だろう。で、「1日で実行可能」ということをさらに実現可能にしたのが、プロジェクトをものすごく細かく大量に細分化した点だ。オープンソースの超モジュール化が、不特定多数の人間の参加をもたらすのだ。

Michael Tiemannらしく、彼はこれをオープンソース的な取り組みとして紹介している。確かに、不特定多数のボランティアが有機的に結合し、従来の組織では不可能な成果を実現するという点で"Let's Do It!"はオープンソースと言える、そして、このプロジェクトで国の人口の4%もの人が集まったのは、次世代によりよい環境を残すというテーマ設定もさることながら、作業を細分化して個々の負担を減らすことにより、より多くの人間の参加を促したことが決定的な要因である、という指摘はごもっともと思う。


最後にTiemannは

Surely this model can work for things other than picking up the trash.
このモデルはごみ収集以外でも活用できることを確信している。

と強調する。
シリコンバレーから将棋を観る』の翻訳プロジェクトの皆さま、参考にされてはいかがだろうか*1?*2

*1:例えば、表記ゆれのチェックなどは、ルールをよりわかりやすい形でまとめ、英語がそれほど得意な人でなくても修正できるように敷居を下げる、とか

*2:なお、本エントリーとは直接関係はないが、Michael Tiemannのブログに翻訳プロジェクトの紹介をコメントとして投稿してみた(コメントは承認制でまだ承認されていない)。Nativeの参加が増えるともっとプロジェクトが活性化すると思うので。彼は日本びいきのはずなので、興味を示してくれるとよいのだが・・・

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