Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

オープンソースが製品ではなく、IT戦略そのものである6つの理由

"Open Source vs Closed Source -- Its about investing in People"というエントリーをFOSSBazaar経由で見つけたのだが、中身が非常に濃く、オープンソースについての含蓄ある言葉にあふれるので紹介したい。

1. Open Source is a strategy not a product
Open Source is an Information Technology strategy. When evaluating Open Source, comparing licensing, pricing, and support options are important, but the key to a successful evaluation of Open Source is to recognize that it is strategy.
1.オープンソースというのは、製品のことではなく、戦略そのものだ
オープンソースというのは、製品のことではなく、IT戦略そのものだ。オープンソースを評価する際に、ライセンス形態や価格やサポートの充実度合いを評価することは大事なことだ。だが、オープンソースを評価する上で決定的に大事なことは、オープンソースというのは戦略そのものであるということを認識することだ。

オープンソースというのは製品のことではなくソフトウェアの開発手法である、という話は良く聞くが、「戦略そのものである」と言い切るのがかっこいい。冒頭でそう断言し、この後何故それが戦略そのものであるのかが蕩々と述べられている。

2. Open Source is an investment in People instead of Vendors

When an IT executive chooses a Closed Source solution such as the Windows product line of Data center software solutions, they are choosing to invest a large portion of their budget in a vendor, in this case Microsoft. When selecting an Open Source solution, to maximize the return on that investment, the IT executives must invest in People.
2.オープンソースというのは、ベンダーへの投資ではなく、自社の人材への投資である
IT部門の役員が、データセンターのソフトウェアソリューションとしてWindows製品のようなクローズドソースを選ぶと言うことは、自分の持っている予算をベンダーに配分するということであるオープンソースのソリューションを選択し、投資対効果を最大にするためには、IT部門の役員は人材に投資をしなければならない。

数千万円、数億円、時として数十億の予算を持つIT部門の役員がいるわけだが、プロプライエタリのソフトウェアを使うということは、その貴重な自社のリソースをベンダーに投じるということなんだと筆者は強調する。ベンダーに投資をすれば、確かにそこからサービスをうけることができたり、ベンダーがソフトウェアの機能アップやバグフィックスのための投資をして、いくばくかの見返りをうけることができる。そうやって、外部のベンダーに巨額のお金を投じてリターンをえるというのがプロプライエタリのソフトウェアを使うというIT戦略である反面、そのお金の大半を自社のエンジニアに投資することがオープンソースというIT戦略なのだと筆者は主張する。何故、その戦略のほうが正しいのかが引き続き述べられている。

3. Open Source is about long-term exponential savings
The cost of a Microsoft solution increases exponentially but the cost of an Open Source solution remains flat regardless of how the organization scales. A successful Open Source strategy would continue the investment in People
3.オープンソースは長期的な指数関数的コスト削減策である
マイクロソフトのソリューションのコストは組織の規模に応じて指数関数的に増大するが、オープンソースのソリューションは規模が増大してもフラットにともたれる。オープンソース戦略が成功するために、人材に継続的に投資しなければならない。

マイクロソフトでは、ユーザ数やプロセッサー数でライセンス料や保守料が課金されるため、組織が大きくなればなるほど、システムの規模が増大すればするほど、それに応じてコストというのが増大していく。一方で、オープンソースは10台のサーバに導入しても、100台のサーバに導入してもソフトウェアに支払う金額というのは変わらない。よって、規模が大きくなればなるほど、ベンダーにお金を吸い上げられるのではなく、人材に投資をすることができるし、自社の人材がソースコードレベルでソフトウェアをメンテできる限りにおいては、規模が増えてもコストは増大しない。


4. Open Source is modular and minimalist
It is this minimalist approach that provides Linux with its great stability and insane uptimes.
4.オープンソースはモジュール化されており、必要最低限のもののみを備える
この必要最低限のもののみ備えるというアプローチがLinuxに圧倒的な安定性と尋常ではない稼働率をもたらしている。

マイクロソフトのソリューションは必要なモノ、不必要なモノを含めて1つのパッケージとして提供されるが、オープンソースは本当に自分にとって必要なものだけを選択できるため効率的であるという話。不必要なモノも含めて提供されるということは、その分コストが発生しているだけではなく、面倒を見なければならない対象も増えるため、安定性やセキュリティ面で問題が生じると筆者は指摘する。
まぁ、マイクロソフトの製品はサラダ、スープ、ドリンク飲み放題、コーヒー、パン、ライス、デザートなど不要なものまで含まれた高額のランチセットのようなもので、オープンソースは必要なモノのみ選択できる柔軟性を持っているという感じか。

5. Open Source has better performance
The minimalist nature of Linux means that more resources are available to the system for running the server application that it needs to, rather than eating up resources with GUI and processes that are part of the minimal operating requirements of Windows.
5.オープンソースはより性能が高い
Linuxの必要最低限主義は、サーバーのアプリケーションが稼働するシステムにより必要なリソースを配分することを可能にする。一方で、WindowsのシステムはGUIであるとか、アプリケーションではなくWindowsそのものが必要とするプロセスが沢山あるため、逆にリソースを浪費してしまっている

オープンソースでは、利用するソフトウェアとその機能を最低限にしぼることができるため、ソフトウェアが稼働するハードウェアのリソースそのものも削減でき、より高い性能が実現できるというはなし。

6. Open Source is about choice
Open Source provides choice and freedom of movement, so the organization can select the best solution that offers the feature, performance and scalability mix that is best for that business.
6.オープンソースとは選択そのもである
オープンソースは選択と自由を提供してくれる。それにより、組織は機能、性能、規模などの面でビジネスに最も則した最適なソリューションを選択することができる。

オープンソースを使用すれば選択肢が無限に広がるというはなし。プロプライエタリなソフトウェアを使用していると、世の中に新しい機能や考え方が出現したとしても、自分の使っているソフトウェアにそれが反映されるまでの間は使用することができない。オープンソースであれば、有象無象も含めて自身の選択として最新のソリューションを活用することができる。

7. Open Source is about saving money not spending moneyThe difference here is the Open Source shop is looking for a solution from a technical standpoint, the Microsoft shop is looking for a solution that meets their basic needs and fits within their budget. The Open Source shop has the flexibility to deploy technologies now, rather than perhaps having to postpone projects for a quarter or two because of budget limitations.
7.オープンソースを活用するということは、お金を払うということではなく、節約するということだ
オープンソースという店では技術的な観点からソリューションを探すことができるのに対し、マイクロソフトという店では基本的な要件を満たしつつ、予算の範囲内のソリューションしか探すことができない。また、オープンソースという店では、予算の制約からプロジェクトを1、2四半期遅らせるなんてことなく、今現在の最新の技術を活用する柔軟性がある。

マイクロソフトの世界にいる限り、その期中の予算がまずありきで、その範囲内でしか機能を充実させることができないが、オープンソースでは予算の制約に縛られすぎずに技術的な妥当性、優位性からソリューションを選択できるというはなし。


で、以上を述べた上で筆者は下記の通り結論づける。

Conclusion
Open Source is an IT strategy and not a product. Effective migration to Open Source requires having the right people on the team. Third party services and consultants can be used to speed up the development of the in-house team, but ultimately the in-house team will need to be open source capable. The long term savings and gains for the business are clear, as Open Source costs remain flat as the solution scales, whereas Microsoft solutions tend to increase exponentially in cost as the solution scales up.
オープンソースというのはプロダクトではなく、IT戦略そのものである。効果的にオープンソースに舵をきるためには、チームに正しい人をアサインしなければならない。サード・パーティのサービスやコンサルタントを活用することは、インハウスのチームを迅速に構築するためには非常に有効であるが、最終的なゴールはあくまでインハウスのチームがオープンソースを活用できるようになることだ。マイクロソフトのソリューションが規模に応じて指数関数的に増加するのに対して、オープンソースのソリューションは規模の増加に対してコストを一定に保つことができるので、長期的にはコスト削減を実現し、ビジネスに多くの利益をもたらす。

かなり長いが勉強になるので、興味のあるかたは是非原文も。

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