Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

インドのIT業界の階層構造事情

"日本のIT業界はなぜ重層的な階層構造をとっているのか”というエントリーに対するコメントで他国のIT業界構造への理解も必要との指摘を頂いた。日本と同様にシステムインテグレータがIT業界において大きな役割を果たしているインドを良く理解することは大事と思い、現在勤めている会社のインド人の同僚にあれこれ質問をしてみたので、その情報をフィードバックしたい。

インドのIT業界の階層構造は2階層、システム・インテグレータは基本的に自己完結

インドのIT業界は、日本と異なり超巨大のシステムインテグレータと中小規模のパートナーの2階層から構成される。基本的には超巨大なシステムインテグレータは川上から川下まで全ての領域をカバーし、下請け企業に仕事を投げることはあるものの、基本的には自己完結で全て自社でこなすことが基本の模様。
特筆すべきはその規模で、第3四半期末時点でTCS(タタ・コンサルタンシー・サービス)は130,343名、インフォシスは103,078名、ウィプロは96,965名もの従業員を抱えている3社での合計がなんと33万人以上!
尚、2008年3月末で日本で最大規模のNTTデータの従業員数が単体ベースで8,550名、連結ベースで23,080名、CTCの従業員数が連結ベースで6,312名。2007年のデータではあるが、日本の情報サービス産業の総従業員数は786,677名ということを考えると、インドの3社の規模の大きさが分かる。

システム・インテグレータは案件創出からデリバリーまでの中心的な役割

垂直統合のITサービスを提供できるシステムインテグレータは、インドのIT産業において最も重要な位置をしめる。内部にコンサルタントの部隊をかかえ、単に要件を聞いて受託開発するというよりも、お客様に深くペネトレートし、案件そのものを創出する力が強いことが特徴。ハードウェア・ベンダーにしろ、ソフトウェア・ベンダーにしろ、システムインテグレータ経由のビジネスが非常に大きいので、そこで自社の製品を選択してもらうようシステム・インテグレータを取り込むことに必死とのこと。

インドの解雇規制はIT業界ではそれ程きつくない

インドは解雇規制は産業によって異なるとのこと。工場労働者は、工場法という法律によって守られており、工場労働者を解雇しようとするとインド当局にものすごく沢山の書類を提出して、その妥当性を証明しなければならないとのこと。ただ、IT産業について言えば、工場とは変わり、それほど強い規制があるわけではない模様。パフォーマンスが低い人間に対しては、事前通知をしたり、退職プログラムを適用するなどして、解雇することは可能とのこと。
ただ、上記に紹介したTCS、インフォシス、ウィプロの決算報告書を見てみると、売上と同じレベルに離職率が経営指標として紹介されている点が注目に値する。それだけ、外部労働市場が発達しており、いかに優秀な人間を囲い込むかが最優先の経営課題のようにも見える。


他にアメリカと異なり、何故インドではシステム・インテグレータの役割がかくも重要になったのかとか聞いてみたが、残念ながらそれはわからないとのこと。ただ、リソース、技術力、価格競争力のどれをとってもシステム・インテグレータの力が強大であるというのがインドのIT事情らしい。何か、インド人に聞いてみたいことがあれば、折りをみて面白そうなことは聞いてみるのでコメントを下さい*1

*1:但し、彼も何というか、一人の同年代のIT業界の従事者に過ぎないので、あんまり難しいことは答えられないと思うので、あしからず

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