『道は開ける』を読んだので書評を。
- 作者: デールカーネギー,Dale Carnegie,香山晶
- 出版社/メーカー: 創元社
- 発売日: 1999/10
- メディア: 単行本
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ストレスというのは、要するに「失敗したらどうしよう」という悩みや心配事から生じる心理的な負担のことだ。だから、より大きな仕事をしようとすればするほど、ストレスが大きくなる。逆の見方をすれば、大きな仕事をするためには、ストレス耐性を身につけなければならない。
ではそのストレス耐性を養うにはどうすればよいのか?一つの方法としては、丁度スポーツ選手が自分の体に負担をかけて、筋力を養うように、より多くのストレスと対峙するという方法が考えられる。私は、そういったよりストレスの強い環境に自分の身をさらすことこそストレス耐性を強化する唯一の方法と考えていたが、本書を読み、自分の愚かさにはからずも気付くことになった。
本書のポイントは、単純にストレス環境に身をさらすという体育会系の考え方ではなく、悩みや心配事をなるべく早く解消することこそが、成果を最大にする最短の道であるということを説き、そしてその悩みと心配事の解消方法が簡潔かつ具体的に記されている点だ。
それぞれ、本書の記述を紹介していきたい。
悩みにつきものの最大の欠陥は、私たちの集中能力をうばってしまうことです。ひとたび悩みはじめると、気持ちが絶えず動揺して、決断能力が失われます。
『道は開ける』 〜悩みを解決するための魔術的公式 P.45、46〜
言われてみれば当たり前だが、悩みや心配事がある時のパフォーマンスというのは必ずしも良くはない。失敗した時のことやこれから起こりうる不測の事態が色々と頭にうかぶのはいいとしても、我が身を振り返るに、同じ「失敗した時のことや不測の事態」が頭に何度も何度もうかび、打つ手がうかばず困り、ひたすら思い悩むという長いプロセスをへた後に、ようやく某かのアクションにうつるということが殆どだ。悩みの状態から脱し、問題解決のための行動にいち早くうつることこそが、成果をあげるためには必要なこと、というようなこんな単純なことすら、悩んでいる時は頭に浮かんでこないことが多い。
では、次に悩みの状態から、行動にうつるためにはどのようなステップを踏めばよいのか。本書では、非常に簡潔な下記の3つのステップが紹介されている。
一、「起こりうる最悪の事態とは何か」と自問すること。
二、やむをえない場合には、最悪の事態を受け入れる覚悟をすること。
三、それから落ち着いて最悪状態を好転させるよう努力すること。
『道は開ける』 〜悩みを解決するための魔術的公式 P.53〜
色々ノウハウ本を読んだが、これ程即効性があり、役に立つものはまれと思う。試してみればわかるが、「最悪の事態を自問し、それを受け入れる覚悟をする」と、我々が抱えている悩みのうちの多くはとるに足らないものであることが殆どなことに気付く。もちろん、中には非常に受け入れがたい最悪の事態もあれば、複数の選択肢の中から最善の成果を生み出すものを選ばなければならないという、解消が容易でないものもあるが、とるに足らない悩みを取り除き、難しい問題により多くの時間を割くことができれば、成果は間違いなくあがる。
本書の中は上記に限らず、悩みを解消するための至言にあふれる。本書を読めば、何故本書が長年読み続けられている古典なのかよくわかると思う。多くの問題を抱え、事態の好転の兆しが見えない方、悩み・不安・ストレスで疲労困憊している状態を効果的に脱したい方、そしてより高いストレス耐性を身につけ、大きな仕事をしたい方にはおすすめの一冊。