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ktdiskのブログ

読んだ本の感想、所々の雑感、日々のあれこれを綴るブログ。

「マネタイズ」という言葉におぼえる違和感

前々から「マネタイズ」という言葉には違和感を感じていたのだが、今もってどうもその違和感はとれない。下記の定義をみてもやっぱりしっくりこない。本エントリーでは、私のそのもやもや感がどこからきているのかを探ってみたい。

(何かを)お金に変えること。(金属から)貨幣を鋳造すること。
転じて、無料のネットサービスを収益事業化する意味で使われる。

マネタイズというのは、それまでお金にならないだろうと思われていたサービスでお金を儲ける仕組みを作ることです。

「お金を追いかけている」感が強いこと

上記の定義をみる限り、「収益化する」、「お金を儲ける仕組みを作る」というところにフォーカスがあたっており、「お金を追いかけている」感が非常に強い。以前、"WEB 2.0を追いかける人とWEB 2.0がついてくる人"というエントリーで紹介したが、

30歳からの成長戦略 「ほんとうの仕事術」を学ぼう

30歳からの成長戦略 「ほんとうの仕事術」を学ぼう

お金をもうけることだけを追いかけてはいけない。自分の資金計画をはじめとして、お金に目配りをすることは必要である。しかし自分の品質・実力をみがくことに、より注力することが大切だ。そうすれば、お金は後からついてくるのである。
『30歳からの成長戦略』 〜P.118〜

『30歳からの成長戦略』ではこう語られており、自分の能力を磨き、自らの価値を高めることを追いかければ、自分の顧客に高い価値を提供することができ、自然とお金は後からついてくるが、お金をもうけることそのものを目的化しては、お金は逆に逃げていくということが強調されている。これは私の経験上かなり正しい。誰かに価値を提供し、その価値に対する正当な対価を求めるというのがビジネスの基本だと思うが、「マネタイズ」という言葉やその実現方法に対する議論の中には「価値を提供する」ことより「お金を儲ける」ことに重きがおかれている様に感じられ、それが私の中の違和感の一つの理由と思う。もし、顧客を定義し、提供できる価値を定義し、提供価値への対価をもらう仕組みを考えるということをきちんとやっているなら、ビジネスという言葉を普通に使えば良いだけだと思う。

古新聞の回収とパチンコ

無料で公開したウェブ・サービスに人を集め、そのアクセスをGoogleAmazonのプラットフォームを用いて広告収入を稼ぐというのが、最もポピュラーな「マネタイズ」の方法だと思うが、これそのものが「子供会でご近所の新聞紙を集めて、それを古新聞の回収のおじさんに渡してお金をえる」とか、もっと言えば「パチンコに行って、玉がいっぱいでたら換金する」というような感覚が強く、あまりビジネスの香りがしない。
結局のところ、GoogleAmazonの広告収入で稼ぐというモデルは、特定の企業が作った経済圏にのっかり、自社に集まったアクセスをその経済圏でのみ通用する通貨に変換し、対価をえるというに等しく、そこでいかにお金を儲けるかという議論は、自社の顧客にどんな価値を提供するのかという議論とベクトルが一致しない。
広告収入以外の「マネタイズ」の方法を考えようという議論も、他社の作った経済圏にどのようにのっかるのかという議論が多く、顧客を定義し、その顧客にどのような価値を提供するかに焦点があたっているケースは非常に少ない。きっと私の違和感の源泉はそこにあるのだと思う。


私は決して無料ウェブ・サービスを運営する会社を否定しているわけではない。自社が集めたユーザやデータというのはその会社の資産であり、その自社しか持たない資産を活かして、顧客に高い価値を提供できればそれは素晴らしいことだと思う。ただ、「マネタイズ」という言葉からは、「自社の資産を活かし如何に顧客に価値を提供するのかというビジネスの基本」が想起されにくいし、「マネタイズ」という言葉そのものが逆にそういう議論を阻害してしまっているように思う。「マネタイズ」なんて言葉を使うのはやめて、もっと健全な普通のビジネスの話をすれば良いのでないだろうか。

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