ktdiskのブログ

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梅田望夫というロールモデルの「手の届く感」

私塾のすすめ ─ここから創造が生まれる (ちくま新書)

私塾のすすめ ─ここから創造が生まれる (ちくま新書)

遅ればせながら『私塾のすすめ』を読んだので書評を。


本書に限らず、私は梅田さんの著書を全て読み、「自分より若い人に会う時間を作る」というポリシーに便乗し、キャリアの相談をさせて頂いたりもしている。著書やそこに記載される姿勢から学ぶことは多く、ロールモデルとして消費する点が沢山あるので、ひっそり師と仰ぎ、傾倒している*1。何故、自分が傾倒するのか考えるに、梅田望夫というロールモデルへの「手の届く感」が実はその理由なのではないかと、前々から感じていた。「手の届く感」というと、能力が似通ってるかのようなニュアンスがあり、僭越なので今まで公言しなかったのだが、本書を読み、「手の届く感」を覚えるその理由が垣間見えたので、そのこころを少し書いて見たい。


何故「手の届く感」を覚えるのかについて、結論を言えば、梅田さんは決して「生まれながらに持った突き動かされる某かの使命」のようなものを持っていないことにつきる*2。そして、そういったものがない故に、自分が向かい、情熱を注ぐ対象を見つけることに全力をかけ、そこに向けて自分を突き動かす燃料を集めることに心血を注いでいる。その姿に「血の通った生身」のキャリアを私は強く感じる。

野球が心の底から大好きで、10年に1人の逸材と言われる素質を持ち、「生まれ変わってもまた野球選手になりたい」というプロ野球選手を見ても、「すごいなぁ」とは思えど「手の届く感」は私は覚えず、遠すぎて「血の通った生身」の感覚も覚えない。梅田さんはおそらく「生まれ変わったら何になりたいですか」と聞かれても、「生まれ変わってもまた『ウェブ進化論』を書きたい」とは言わない

ある程度の基礎力は必要だけれど、それ以上のところの読書の意味として「心で読む読書」を心がけて、自分の生きる糧として知を使って欲しいです。
たとえばビジネスをやっていくというのは大変なことであり、厳しい毎日だから、心で本を読み、今を生きることに活かしてほしい。
私塾のすすめ』 〜第3章 P.155〜

僕は、エネルギーが湧く方向への「励まし」をいつも自分のなかに蓄えて、それを生きるための燃料にしているのですが、シリコンバレーから東京に来るたびに思うのは、日本で受動的にメディアから受ける言葉に、どうも気持ちが萎えるような言葉が多いなということなんです。
私塾のすすめ』 〜第4章 P.191、192〜

「生きる糧」、「生きるための燃料」という表現を使いながら、自分を突き動かす何かを補給することの重要性を説く。ここまで重要性を強調するのは、自分自身がその補給に苦労したからに他ならない。「生まれながらに持った突き動かされる某かの使命」を持った人は「糧」や「燃料」の補給に苦心したり、心血を注いだりすることはないだろう。
与えられた環境・能力の中で、自分がなすべきことを暗中模索し続け、自分自信を燃やす燃料を絶え間なく探し、補給するというプロセスの中から紡ぎ出された梅田さんの成果に対しては、私は強く「血の通い」を感じる。そして、自分が同様・同レベルの成果をあげられない理由は、自分の努力・能力不足以外に見つけることができず、その事実がもっと頑張ろうという活力につながる。私の覚える「手の届く感」はそんなことからきているのかと本書を読み思った。


殆ど書評*3になっていないが、執筆はこれで一段落とのこと。著作を通じてふれあうことはしばらくなくなると思うが、今まで通り、知的活動のドアを解放し、「生きる糧」、「生きるための燃料」を我々に供給し続けて頂きたい。

*1:直接会い、教えを受けたことがあるので、本書で推奨されている私淑ではないが・・・

*2:違ってたらごめんなさい

*3:一応、本の評も少し書いておきたい。タイトルは「私塾のすすめ」であり、確かに「私塾」が本書の最大公約数的なテーマではあるのだが、「第1章 指向性の共同体 / 第2章 「あこがれ」と「習熟」 / 第3章 「ノー」と言われたくない日本人 / 第4章 幸福の条件」という4つのテーマが設定された対談本と読む方が、わかりやすいし、「私塾」というテーマにこだわりすぎるのはもったいない。対談本というのはとかく、章立てが難しい印象を受けるが、章だけなくさらに細かい節も含め全体として非常に丁寧に、手を抜かずにまとめられている印象を受けた。対談本というのは時に要旨がとらえずらいが、設定された章・節にのっかれば本書の場合は大丈夫。この辺りは編集者の力量だろうか。

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