M&Aの噂が飛び交う季節だが、Tom Foremskiが情報源から聞いたところでは、SalesforceがOracleに1株あたり$75で売り込んでいるそうだ。
Oracleがこの申し出に乗れば、Salesforceの価値は$9B(90億ドル)弱ということになる。
噂の域をまだでていないが、Salesforceが自らOracleに売り込んでいるとの噂をTechCrunchで見て、かなりげんなりした。話題沸騰のマイクロソフトがYahoo!に提示した$44.6Bと比べると見劣りするものの、想定買収時価総額はなんと$9B。これほどの規模となると買い手はかなり限定され、事業との親和性やキャッシュ・リッチ度合を考えると確かにOracleはベストパートナーと言えるかもしれない。
だが、そもそも疑問を覚えるのは、Salesforceは自ら売り込むまでして先輩IT企業に買収をしてもらうようなステージにあるのか、という点。GoogleやMicrosoftやIBMに$10〜50Mで買収されることを起業のゴールとしている企業が多くあることは別に良いと思うし、巨大企業の周辺で多死多産のメカニズムを作り、巨大企業にそこから生まれたものを組み込んでいく、というのも仕組みとしては良いと思う。
ただ、Enterprise分野におけるSaaSの先導役であるSalesforceは、その買収時価総額が示している通り、多死多産の中から生み出された企業を取り込みながら、既存のパラダイムを壊していく立場に既にありCEOマーク・ベニオフ自身は、そういう挑戦者としての気概をしきりにはいたはずだ。そのSalesforceがEnterprise向けのソフトウェアの分野で既得権益保持者であるOracleに身売を打診するなんてことが本当だとしたら、とても残念だ。
従量課金制により、ソフトウェアを使用した分だけ、課金するというOnDemandなモデルは確実に既存のEnterpriseのソフトウェアの市場を侵食する。SAPにしろ、Oracleにしろその流れは理解しており、盛んにSaaSへの対応を喧伝している。でも所詮は既得権益者。Sonyが自ら保有するレコード会社をおもんばかるばかりにポータブル音楽プレイヤーの分野でAppleに後塵を排したように、既存の顧客から自動的に毎年あがってくるライセンス料に見切りをつけきれず、なめくじのような遅さでことが進むことは目に見えている。SaleforceがOracleに身売を打診するなど、Appleが立ち上げたばかりのiPOD事業をSonyに買ってください、というようなものであり、我ながら青臭いと思いつつも、「世も末」感にしつこいようだが、げんなりしてしまう。