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ktdiskのブログ

読んだ本の感想、所々の雑感、日々のあれこれを綴るブログ。

資本の支配からの開放

今回も読み途中の『WIKINOMICS』から。本質的かつ重要な指摘が第3章でなされている。

For starters, the economics of production have changed significantly as we have moved from industrial to an information-based economy. In the industrial economy, for example, most opportunities to make things that were valuable and important to people were constrained by the high costs of making them.
まず第一に、我々が工業主体の経済から情報主体の経済に移行したことに伴い、生産にかかわる経済原理が大きく変わったことに注目しなければならない。例えば、工業主体の経済においては、世に付加価値を提供するものを作ろうとすると、それに伴う高いコストが大きな制約になった
『WIKINOMICS』 〜THE PEER PIONEERS P.68〜

コストという表現よりも、資本という表現の方が適切だと思うが、工業社会においては何か事業化に向けてのよいアイデアがあったとしても、それを製品化、サービス化し、世に提供する上で資本が大きなボトルネックになるため、巨額の投資をうけることができる一部の選ばれた人しか生産に参加することができなかった、という重要な指摘がなされている。
資本がボトルネックになる以上、資本家が大きな力を持つ。そして、事業を営み、社会に価値を生み出す人は資本家に利益を還元することに重きをおかなければならない。事業運営の方向性と資本家への利益還元が、いつも同じベクトルを向いていればよいが、この2つは必ずしもいつも一致するわけではない。だが資本がボトルネックになる以上、事業は資本に支配されることになる


では、現在はどうなのか。

Today, billions of connected people around the planet can cooperate to make just about anything that requires human creativity, a computer, and an Internet connection. Unlike before, where the costs of production were high, people can collaborate and share their creations at very little cost. This means that indivisuals needn't rely on markets or capital-intensive firms to make or trade all of goods and services they desire.
一方で今日は、人間の創造性とコンピュータとインターネットの接続を要するものであれば、地球上の数十億の人間が協働することができる。製造コストが非常に高かった頃とは異なり、非常に低いコストで人々は協働し、創造性を共有することができる。これは即ち、自分の望むモノやサービスを作ったり、取引したりするのに、市場や巨大資本の企業に依存する必要がなくなったことを意味する
『WIKINOMICS』 〜THE PEER PIONEERS P.68〜

低いコストで生産活動ができるようになったというより、市場のニーズに右往左往したり、資本を持っている企業、人に迎合する必要がなくなった、即ち、事業の運営者が資本の支配から開放されたという点が非常に重要な点である。
生産に多くの資本投下が必要な時代は、投資を回収するためにより事業規模を大きくしなければならず、事業運営者のモノ・サービス作りへのこだわりより、大衆へ受け入れられやすいモノ・サービスの提供が求められた。また、投資家から求められる短期の利益還元にこたえるためには、中長期の事業の発展を見据えて投資をあきらめなければならないシーンもあった。
だが、上記の引用のとおり、インターネットの活用が可能な知的生産物の創造領域では、資本の支配からの開放がはじまり、その適用領域が今後ますます増えるとみて間違いはない


資本の支配の中での弱者にとっては、上記の流れは朗報ではある。ただ、一歩ひいてみると世界は非常に広く、自分たちよりも資本主義社会において虚弱だった人が多くいることにも気づかされる。一応先進資本主義国である日本にとって上記の流れが吉となるのか、凶となるのかはわからないが、少なくとも上記の流れを認識していない企業・個人にとっては凶とでるだろう。

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