Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

愚直に"Do the right things"を貫く

グローバルで成功するプロの仕事術

グローバルで成功するプロの仕事術

『グローバルで成功するプロの仕事術』を読んだので書評を。
著書は公認会計士とU.S. CPAという日米双方の会計士の資格を保持し、大手会計事務所、大手コンサルティング会社のパートナーを歴任し、現在はべリングポイント日本代表を務めるという豪華な経歴の持ち主。一般的に「仕事術」というと、生産性を高めるための各種工夫・テクニックなどが想像され、豪勢なキャリアを歩んできた筆者との結びつきがあまり想像できなかったが、本書の下記の骨子にふれなるほどと思った。

愚直に"Do the right things"を貫き、一歩一歩こつこつと歩を進めていたら、まわりのいろいろな方々に助けられて、いつの間にか少しずつ成長することができた。それが米国である程度のポジションを得ることができた一番の理由だと思っています。
『グローバルで成功するプロの仕事術』 〜プロローグ P.20〜

"Do the right things"、即ち、「決められたことを正しくやる」ではなく、「なすべきべき正しいことをやる」ということ。「愚直に"Do the right things"を貫く」、これを仕事術というかはさておき、様々な困難な状況におかれながらも、文字通り愚直に貫いてきた筆者の歩んできた軌跡にふれることができ、口先だけでなく本当に"Do the right things"を貫くことが長期的な成功を達成するために如何に大切なことかを理解することができる。
もちろん、これは誰にでも簡単にできることではない。” Do the right things”を貫くためには、何が”the right things”なのかを見極める能力が必要であるし(正しい戦略を策定できる、あるべき組織構造、業務プロセスを定義できる、など)、またそれが”the right things”であることを周囲に認知させ、それに基づき周囲の行動様式を変えることも必要となり、これにはかなりの高い実力・能力が必要となる。
ただ、できることから”the right things”を一つ一つ積み上げれば、到達点は人によって違えど、感謝され、助けられ、大きな達成感をえられる、という明るい確信が本書からは感じられる。

どんな仕事でも必ず何かしらトラブルは起きます。何も問題のない仕事などあり得ません。それでも意思に蹴躓きながら、ひたすらバンピーロード(bumpy road でこぼこ道)を歩いていくのです。最後まで歩き通せば、必ず結果はついてきます。
『グローバルで成功するプロの仕事術』 〜信頼はロジック(論理)を超えたところで結ばれる P.64〜

正直、文章表現が巧みなわけではないし、ほとばしる気合を感じられるわけではない。筆者の人柄か全体的にほんわか感が漂うが、その中に"Do the right things"という揺るぎのないシンプルな理念が貫かれていることは、ひしひしと伝わってくる。ありふれた仕事術や言葉だけの経営理論に食傷気味の人は、今読んでいる本を一度閉じて、本書を手にすることをお勧めする。本書の中には、今抱えている問題を解決するための魔法のような特効薬は存在しない。ただ、愚直に、一つ一つ、"Do the right things"を積み重ねていくことが遠回りに見えるが実は一番近道であること、そして仕事術云々の前にそれこそがまずは一番初めに腹におとすべきことである、ということに気付かされるだろう。

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