米国ではこれを指標に20年くらい経営されてきたのだが、わが国では企業経営者が本気で株主利益を考え始めたのは、ほんの数年。だから、新しい「株主利益を最大化する」というルールのもとでの経営が定着するまでは「下駄をはかせる」必要があると考える。
岩瀬さんは「株主利益を最大化する」というルールが日本の経営者に定着するまで三角合併を解禁せず、猶予期間をもうけるべきと主張されているが、本当に猶予期間が必要なのだろうか。
"定着"に至るまでのロードマップがクリアであり、必要かつ妥当な猶予期間が算定されているのであれば話は別だが、解禁反対に向けての議論を見る限り、手っ取り早い買収防衛策の有無に焦点があたり、残念ながら「株主価値重視」経営へのシフトに向けてのロードマップなどはあまり念頭におかれていない。
駆り立てられるような外圧がなければ、結局のところ染みついた行動様式を変わらないというのが、仕事としていくつかの企業の変革にかかわってきた私の感覚。メディアが総論で「株主価値重視」と叫んだところで、お尻に火がつかないと経営者、および企業の担当者というのはそうそう動くものではない。企業が開示する財務情報の正確性に経営者が責任を持ち、その正確性を担保するプロセスを構築することの重要性は以前から認識されていたが、日本版SOX法という外圧があってはじめて、企業がこの分野にきちんと投資をし始めたことをみてもわかる。
そうこう書いているうちに三角合併も本日から解禁になってしまったが、これだけ騒がれていても実際に同業他社が三角合併で外資に飲み込まれてしまうというのを目の当たりにしないとギアがはいらない会社は多いだろう。ただ、日本企業は環境への適応力は結構早いほうなので、ギアがはいれば、必要な施策を実行に移し、新しいスタイルにシフトするのは早いと私は予測する。なので、猶予期間などは設けず、なるべく駆り立てられる外圧にさらし、色々言い訳のできない環境においてあげれば、多少の犠牲者はでるが、日本企業全体の経営の質向上という点では良い結果をもたらすだろう。