ドリコムが伸び悩んでいるとのこと。
連結業績における売上高は前回予想の15億円に比べ、42%減の8億7000万円、経常損失は1億8000万円(前回予想は4億円の経常利益)、純損失は1億1000万円(同2億3000万円の純利益)となる。
あまり過敏にこの手のことで騒ぎたてるのは趣味ではないが、"ドリコムIPOにみるベールの下の装い"というエントリーで以前ふれたこともあり、昨年の年次決算報告書もじっくり読んだことがあるので、いくつかコメントをしてみたい。
- 何はともあれ赤裸々に実情をさらしたという点は評価
上場時の株価もかなりバブル感が漂うものであり、それに対してあっという間に冷や水をかぶせたという点で、内藤さんは投資家による非難にさらされることは必至だろう。
だが、事業活動の結果を白日の下にさらし、赤字という結果とそれに対するリカバリープランを改めて投資家に問い、様々な批評、及び株価という形でそのプランの評価を受けるというのが、公開企業の定めだ。
色々形を取り繕う手はあったであろうが、ほぼ丸腰状態で結果を正直に公開したということを私は評価する。
- 販管費の著しい増加に対して収益増加の実現でリカバリーできるかが肝
売上8億7千万円というのは、前年7億円に対して24%増であり、成長真っ盛りのベンチャー企業としては物足りないものの、それなりの数字ではある。
売上が上がっているにも関わらず経常損失に陥っている理由は販管費がものすごく増加しているから。前年の1億5千万円から5億1千万円と340%の増加を見せている。その中でも積極採用の結果給与手当が下記の通り400%以上の増加をみせている。
これはかなり厳しい。わき腹からどばどば出血しており、1日でも早く今の陣容に対し妥当なレベルまで収益を押し上げ、止血することが必要というのが私のイメージ。
- 業績下方修正のタイミングが4月10日であることに疑問
売上が当初予測から42%減少するという情報を、2006年度終了から10日後に発表するのはいかにしても遅い。年度の終わる1ヶ月前にはおおよそどのあたりに売上が着地するかが見えていなければ事業管理もままならないだろう。
2007年に突入した段階で、最大で売上はどの程度いきそうで、最悪の場合はどのくらいになりそうなのかが把握できていれば、「残りの3ヶ月でなるべく目標に近づけるべくやらなければならない優先順位の高いことは何か」を全社的に共有できるし、「当面解決しなければならない経営課題への対応」も3ヶ月前に着手することができる。
その上で1月、2月のアクションの結果をみて、年度が終わる1ヶ月前には業績予想をフィックスさせ、外部に開示するのがタイミングとしては妥当だし、これでも少々遅いくらいだ。
「過去ではなく、未来の財務諸表をみて経営をしているか」という点に疑問が残る情報開示タイミングとなってしまい、その点は非常に残念だ。
若干厳しいことも書かせて頂いたが、事業の好不調、浮き沈みがあるのはベンチャー企業なのだから当然のこと。投資家、マスコミからの短期的視点に基づく批判・プレッシャーに流され、研究開発費を削るとか、あまり事業との親和性の高くない事業を買収するなどの対応をすることなく、是非とも頑張っていただきたい。