Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

ネットワークOS時代の郊外派と都心派

社内の知り合いのVistaを検証しているエンジニアに「Vistaってどうよ」と話をしてみたところ、PCのスペックについてはざっくりXPの倍は必要で、快適に使うためには、メモリは2GBくらいは必要とのこと。10年近くの前の話ではあるが、ERPの導入などをやっていたころ、初めてはいったプロジェクトのサーバー側のメモリーが確か512MBだった。社内の基幹システムをささえるコンピュータの4倍のスペックが端末であるPCに2GBとは隔世の感がある・・・。
ただ、さくさくと動くスペックのPCであれば、ユーザインターフェースはかなりよいとのこと。「こちら側」のPCに投資をすれば、すべてのアプリケーションのユーザインターフェースへの利用者の期待度を押し上げるとまで言われているOSの快適性を享受することができる。

You simply point Mux at your original video and tell it what kind of output you want. Behind the scenes it will download the original video, transcode it to the new format, size, and rate per your specifications, and store the final video in S3.
あなたは単にMuxにオリジナルビデオをおいて、どんなアウトプットが欲しいのかを言えばよい。裏側でオリジナルビデオがダウンロードされ、新しいファイル形式、サイズに変換され、お望みのビデオがAmazon S3の中に格納される。
Mux - Video Transcoding Powered by EC2

Muxというウェブサービスは、Amazon EC2*1Amazon S3*2を使用してビデオ変換・作成という自分のPCを処理中は使用不能にしてしまう作業をウェブベースで実施できるようにしてくれる。
重たい処理、重たいファイルは全て「あちら側」にやらせてしまおうという発想のウェブ・サービスは今後も沢山でてくるだろう。そして、そのプラットフォーム企業として最先端を走っているのがAmazonである。
ただ、「あちら側」いくら高性能の情報発電所ができたとしても、そこへのアクセスがよくなければその恩恵をうけることはできない。確かに、上記のMuxは便利ではあるが、自分の持っているDVDを変換しようとしても、ネットワークの帯域がボトルネックになってその恩恵はあまり享受できない。


この投資によってできあがる「あちら側」の「グーグル・クラウド」によって、「こちら側」に今年投入されるマイクロソフトの新OS「ビスタ」を無意味にしてしまおうという企図を持つ。これがグーグルの「二つ目の顔」なのである。

梅田さんはMicrosoftがどんなに投資をして「こちら側」にゴージャスなOSを作成しても、「こちら側」から「あちら側」へのシフトが加速すれば、その意味なんかなくなってしまうんじゃないかと指摘をされているが、情報発電所がどれほど充実してもそこへのアクセス、即ち動画・写真情報などもストレスを感じることなくネットワークを介してやりとりできるほどの十分な帯域がなければその恩恵をうけることはできない。いわば、日本の中心地である東京がどんなに便利になっても、そこへいくのに5時間もかかればその便利さを享受できないようなものである。


物理的なインフラの整備が必要となるネットワーク帯域の革命的向上が数年で革命的にすすむとは感覚的に思えない。しばらくの間は、郊外に広めの家を買うかのごとく、PCに大きな投資をして、「こちら側」の充実をはかるタイプの人と、都心のアクセスの良いところに狭いマンションを買うかのごとく、PCの機能はそこそこにして光ファイバーを活用し、「あちら側」の情報発電所の恩恵をあずかるために投資をするタイプの人に分かれるのではないだろうか。

*1:コンピュータの処理能力をAmazonからOnDemandに購入することのできるユーティリティ・コンピューティング・サービス

*2:ディスクスペースをAmazonからOnDemandに購入することのできるユーティリティ・コンピューティング・サービス

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