ktdiskのブログ

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2007年予測 インフラただ乗り問題はどこへ行く?

前回に引き続き、id:yomoyomoさんところ経由で知った海外著名ブロガーの2007年予測からの抜粋。

10) The year the net crashed (in the USA). Video overwhelms the net and we all learn that the broadband ISPs have been selling us something they can't really deliver.
ネット崩壊の年となる(アメリカで)。ビデオがネットに津波のように押し寄せ、ブロードバンドISPが実際には運ぶことのできないものを我々に売りつけていたことを学ぶ。

2005年2月に設立されたYouTubeが昨年約1650億で昨年10月Googleに買収されるにいたった。この2年間で1つのウェブサービス会社がここまで巨大になったという1事例だけ考えても、インターネットの帯域への負荷が年々激増していることは、素人ながら容易に想像できる。


さらにPodcastingGyaOなどのインターネットテレビなどの飛躍的な増加に思いをはせると、インフラが早々に破綻するに至るというのは、あながちめちゃくちゃな話でもない。


この予想をもう少し深堀りするためには、昨年の2月から4月くらいにかけて話題になった「インフラただ乗り問題」について理解することが必要。その時期には大分盛り上がったのに、その後あまり大きく取り上げられることはなく、今に至った私にとっては不思議なトピック。そもそも、「インフラただ乗り問題」とは何の話だったのかを振り返ってみたい。

  • P2Pでのファイル交換、Podcsating、YouTubuなどの動画配信、GyaOなどのインターネットテレビなど台頭に伴い、インターネットの回線の負荷は年々増すばかり*1
  • 回線の負担増に対応するためにISPはインフラの増強を求められ、それに伴い投資がかさみ、コスト負担増に苦しんでいる*2
  • 回線負担増の引き金を引いているのは、動画配信サービスなどを提供するウェブサービス会社であり、ISPの立場からみるとこれはウェブサービス会社による「インフラただ乗り」であり、「お前も一緒に金を払え」という声が高くなった

というのが要点。


日本では、NTTがGyaOSkypeを槍玉にあげるという強者が弱者にかみつく構図で口火をきったこの問題。回線の負荷を減らすためには、各ステークホルダーそれぞれに下記のような努力が求められるが、努力不足をしているのは誰かというのが問題。

  • ISPなどのインフラ業者は、より低コストでより広い帯域を敷設するよう経営努力・技術革新に邁進する
  • ウェブサービス会社は、回線への負荷が極力少なくなるような、サービスの設計を心がける
  • 消費者は、回線が有限な資源であることを認識し、無駄遣いしないよう資源の節約をする


ウェブサービス会社が直接相互接続しているプロバイダに高額な接続費用を支払っている*3ことを考えると、ウェブサービス会社には帯域をセーブしようというインセンティヴは働いているようにみえる。

動画配信などを行うサービス事業者は多くの場合、自社が直接接続するプロバイダに費用を支払ってトラフィックを運んでもらう。しかし、そのプロバイダからピアリング(相互接続)でIXを経由してトラフィックを受け取る別の通信事業者は、サービス事業者からの費用を受け取っていない。費用を受け取らないまま動画配信の大量のトラフィックを運ばないといけない――これが“ただ乗り”の問題点だ。
"急浮上した「インフラ“ただ乗り論”」に出口はあるか"

との指摘があるが、この部分こそISPなどのインフラ会社と消費者の間で解決すればよいのではないか。この部分のコストをウェブサービス会社に負担を求めたところで、結局は費用は消費者に跳ね返ってくるし、ISPなどのインフラ会社に経営努力を求めるプレッシャーが働かない

鈴木氏は「難しい問題」としながらも「(サービスの)利用者が負担しないといけないかもしれない」と話す。サービス事業者だけがISPのインフラコストを負担し、エンドユーザーの料金には上乗せしない考えもあるが、鈴木氏は「たぶん利用者が負担しないと広告収入のコンテンツビジネスは成り立たないのではないか」と述べ、サービス事業者だけに負担を求めるのは難しいとの考えを示唆した。
"急浮上した「インフラ“ただ乗り論”」に出口はあるか"

というように口にものが挟まったような言い方をしないで、ウェブサービス会社からの大量のPodcast・動画のダウンロード、及びP2Pによるファイル交換などで大量にトラフィックを発生している消費者にその負担を求めればよい。
もちろん、定額かつ低額で大容量の回線を使用することになれた日本のインターネットユーザに対して負担をかけるというのはかなり大変なことで、相当激しい経営努力と熾烈な顧客獲得競争が求められることは間違いない


問題なのは厳しい消費者を敵に回すと血みどろの価格競争を強いられることに腰がひけて、ウェブサービス会社に難癖をつけるという、ISPなどのインフラ会社の姿勢が一番問題なのではないだろうか。


2007年予測という割りに過去の議論を掘り起こすだけになってしまったので、
ISPなどのインフラ会社は、ウェブサービス会社に負担を求めることを諦め、その矛先を消費者に向け、熾烈な顧客獲得戦争が開始する」
ということを私の2007年の予測としたい。また、議論が再燃するかどうか今ひとつ見えないが、このトピックも今年注視していきたい。

*1:"日本のインターネット、マジやばくね?"によると、プロバイダ間の相互接続が行われるIXという収束地点の合計トラフィックは、2001年末14Gbps、2004年末111.1Gbps、2005年末168.2Gbpsと年々うなぎ上りに増えているとのこと。尚、GyaOトラフィック増加量は月間2Gbpsであり、これを年間になおすと24Gbpsにもなる。

*2:なお、"インフラただ乗り論やバックボーン不足論の虚妄"では、「なぜ基幹網の低価格化が遅れているかというと単に競争環境がそうなっているからであって,基幹網では波長多重しにくい古いファイバと,装置さえ更新すれば簡単に波長を増やせる新しいファイバとがあって,新しいファイバを抱えている人々も自分たちから市場を破壊することはないよね,ということで,血みどろの競争になっていないだけの話」とまだ雑巾を絞る余地を十分にあると指摘している

*3:"日本のインターネット、マジやばくね?"によると、例えばUSENは直接相互接続しているプロバイダには相当高額なプロバイダ間接続費用を支払っている

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