Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

Amazon Web Serviceを強烈に下支えするAmazonの成功体験

"アマゾンのユーティリティコンピューティング事業参入--CEOベゾス氏が狙う今後とは"を読んだ。少々長いがかなり面白い。要点は下記の通り。

  • AmazonAmazon Web Service(以下、AWS)という小売とは別のユーティリティコンピューティング事業を営んでいる
  • AWSの顧客は、高度にスケーラブルなシステムを必要とする新設企業や小規模企業である
  • 「薄利多売というビジネスモデル」への強い信頼にアマゾンの戦略は根ざしている
  • Amazonの競争力の源泉のひとつである低コスト構造でのeコマース運営能力を外販するという狙いがAWSにはある
  • 「新しい種をまき、木を育てる強い意欲」「それを時間をかけて実現する実行力」こそがアマゾンの強みである

薄利多売の書籍のネット販売という事業を収益を生むところまで苦しみながらも持っていったという成功体験が、「新しい事業の種をまき、それを粘り強く育てるんだ!」という意欲の原動力となっている、これこそが数少ないインターネット界大勝ち企業のアマゾンの強みであるという点には強く納得。

Amazon Web Servicesは、かつて同社が海外展開や、本と音楽以外のジャンルを手がけることを決定したときと同じような、新しい分野への進出だというのだ。これらの事業も、「財務上明白な実績」が出るまでには3年から7年かかった、と同氏は説明する。
"アマゾンのユーティリティコンピューティング事業参入--CEOベゾス氏が狙う今後とは"

「財務上明白な実績」というわかりやすい「結果」がでなくとも、「芽が出る」と思ったところには集中投資をして、粘り強く「芽を出す」努力を続け、「財務上明白な実績」に形として表れる頃には、他社が追随できない競争優位が構築されている、そんな書籍のネット販売への成功をWeb Serviceという領域で横展開しようという狙いはかなり的をえていると思う。


この記事を読んで思い出しのが『インテル戦略転換』に書かれているアンドリュー・グローブの言葉。アンドリュー・グローブはコンピュータ業界には下記の3つの競争ルールがあると記載する。

インテル戦略転換

インテル戦略転換

第一に、他と比べても大差のないものを無闇に差別化しない。・・・<中略>


次に、競争熾烈なこの横割り型世界において、技術革新や何らかの根本的変化が訪れたとき、文字通り扉を叩いて到来するチャンスをしっかり捕まえる、ということだ。他社がまだ迷っているうちに行動を起こす企業、最初に行動を起こす企業のみが、競争相手に勝つための時間稼ぎという真のチャンスをつかむことができる。・・・<中略>


そして第三に、市場に受け入れられる価格をつけること、販売する量を設定して価格をつけること、である。そして、猛烈に働き、その価格で利益が得られるようにすることだ。

インテル戦略転換』 〜第三章 P.62〜

あぁ、相当地でいっているなぁ、という感じ。「競争相手に勝つための時間稼ぎという真のチャンス」はもうつかみつつあるので、「猛烈に働き、その価格で利益が得られるようにする」というステージに移っているように感じられる。この先も動向が非常に楽しみだ。


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