Lawrence Lessigの"Do you Floss"の中に"anti-rival"という単語がでてくる。"non-rival"が"非競合性"だから、"反競合性"と言ったところか(何故か、この手の単語は日本語にするととたんにイメージがつきにくくなる・・・)。オープンソースや知的財産などを経済学的視点で読み解く上で鍵となりそうな言葉。最近、"non-rival"、"non-excludable"という言葉も勉強したばかりなので、合わせて自分の整理のために、はてばサービスを例にとってまとめてみたい。
まず、"non-rival"、"non-excludable"という言葉の定義は、webmasterさんの下記のエントリーの説明がものすごくわかりやすい。このあたりの言葉をしっかり理解したいという人は、本文をしっかり読むことをおすすめする*1。
情報のコピーしても減らないという性質は、既存の経済学においては、
非競合性(rival)
同時に複数の者(理念的には無限の者)が利用できること非排除性(excludable)
他の者の利用を排除できないことという2つの要素で分析されています。
はてなを例にとれば、私がもっているはてなポイントは、私が使用するとなくなってしまい、なおかつ他のユーザは使用することができないので、"rival and excludable good"であり、参照はてなユーザの限定されたダイアリーは、いくら参照してもなくなることはないが、参照ユーザが限定されているため"non-rival and excludable good"ということができる。
"rival and non-excludable"というのは、少し難しい。誰でももらえるが、配布数に限りのあるフリーペーパーなどは比較的それに近いのではないだろうか。なのではてなを例にとれば、少し無理やり感があるが、人力検索の回答権などは、質問がオープンな間は誰にでもあるが、一定量、または質の回答がなされると回答権がなくなってしまう点で"rival and non-excludable"と言える。少しみにくいが表にまとめると下記のような感じか。
競合性(rival) | 非競合性(non-rival) | |
排除性(excludable) | 飛行機の座席 / あるユーザのはてなポイント | 著作権に保護された知的財産 / 参照ユーザの限定されたはてなダイアリー |
非排除性(non-excludable) | R25のようなフリーペーパー / 人力検索への回答 | テレビ番組放送 / 公開されたはてなダイアリー |
次に"anti-rival"。Wikipediaによると"The Success of Open Source"の著者Steve Weberの造語。
I am not only not harmed when you share an anti-rival good: I benefit.
"anti-rival good(反競合財)"を共有すると、それによって自分の持ち分が減らないどころか、逆に増えるのである。
The production of anti-rival goods appears to benefit from the network effect.
"anti-rival good(反競合財)"の生産にはネットワーク効果が働いているように見える。
即ち、より多くの人が使用すれば使用するほど、その価値が増す性質を持つもののことを"anti-rival good(反競合財)"と名づけたということらしい。Lawrence Lessigは、オープンソースは"anti-rival good(反競合財)"であるが故に、皆がプログラムの修正点を見返りを求めることなく提供するのだという。即ち、使用するユーザが多くなれば成る程、そのソフトウェアの価値は高くなる、よってより多くの人に使ってもらえるように修正プログラムを提供するなどしてその価値を高めることは、それがゆくゆくは自分に跳ね返ってくるということに繋がるのだと。
これをはてなサービスで考えると、はてブなどは比較的それに近い。ブックマークそのものは、"rival and excludable good"であり、なおかつはてブを利用して、かつブックマークを公開する人が増えるほど、より自分と嗜好の合うブックマーカーに出会う可能性が増す。全員がブックマークを非公開にしてしまうと、ホットエントリくらいでしか楽しめなくなってしまうが、公開するユーザが増えれば増えるほど、「お気に入り」などの価値が増すということができる。
オルデンバーグは知識というものが持つ独特の特性を深く理解していた。それはほかの資源と違って、消費された枯渇してしまうような類のものではなく、価値を失うことなく広く行き渡らせることができる。むしろ知識は広まれば広まるほど、その価値が増す可能性は高くなる。知識の使い方は幅が広がるからだ。
- 作者: ジェームズ・スロウィッキー,小高尚子
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/01/31
- メディア: 単行本
- 購入: 13人 クリック: 216回
- この商品を含むブログ (266件) を見る
『「みんなの意見」は案外正しい』 〜第8章 P.182〜
「知識は広まれば広まるほど、その価値が増す可能性は高くなる」という知識の特性について、非競合性、非排除性、反競合性などの言葉も理解しながら今後色々考えていきたい。
*1:英語表記はktdiskによる追記