前回に引き続き『アテンション!』ネタを。
- 作者: トーマス・H・ダベンポート,ジョン・C・ベック,高梨智弘,岡田依里
- 出版社/メーカー: シュプリンガー・フェアラーク東京
- 発売日: 2005/09/13
- メディア: 単行本
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アテンションエコノミーにおけるソーシャルブックマークの意義を考える際に、「より多くの人がアテンションをはらっている情報を抽出するスクリーニング機能」というのはよくでる話。
だが、それに加えて「アテンションという形にしにくいものを、可視化すべく拾い上げてくれる機能」というのも特筆すべき重要な意義だと『アテンション!』を読んで強く感じた。
本書の中で、「知覚された情報に対して、何某かの行動を起こそうというトリガーをひくのがアテンションである」というような定義がされている。
「視界にはいってくる」とか、「耳にはいってくる」というようなことはまだ「知覚」の段階であり、アテンションとは本書の中では明確に区別されている。
視界に20人の人がはいっていたり、電車の中で車掌のアナウンスや人の話し声が耳にはいってくるという状況はまだ知覚の状態であり、20人の中に知り合いに似た人がいてその人が知り合いかどう確認するために凝視するとか、車掌のアナウンスの中の「人身事故」という言葉に反応してアナウンスの内容に耳をたてるなどの行動につながった際にアテンションが発生する。
もう少し、インターネット関連の例示をしてみよう。
私は、Livedoor Readerにはてなの人気エントリーを登録しており、下記のような流れでエントリーを処理している。
- タイトルだけざーっと眺めていき、興味のありそうなものにはピンをたてる
- ピンをたてたエントリーを読んで行き、気になるPhraseのあったものはブックマークに登録する
- ブックマークに登録したものの中で、自分なりの考えを述べようと思ったものについてはブログに書く
比率を感覚的に言えば、人気エントリー1000件に対して、ピンをたてるのが100件、ブックマークに登録するのが10件、ブログを書くのは1件という感じになる。
もちろん、上記の3つのステップでは、「ピンをたてる」、「ブックマークに登録する」、「ブログに書く」という行動を起こしているため、アテンションが発生したことになる。
長々と例を書いたが、まず前者の例から言えることは、「ある情報に対してどれだけアテンションがはらわれたかを計測することは難しい」ということ。車掌のアナウンスを電車にのっている1000人中何人が注意深く聞いているか計測するのは不可能である。
本書の中でも、アテンションを計測することが如何に難しいかは、とくとくととかれており、そのためにコンサルタントを雇いプロジェクトをおこすなんて話も紹介されているくらいだ。
そして、後者の例から言えることは、下記2点だろう。
- その可視化の難しいアテンションを、インターネットの世界ではより容易に可視化してくれる
- ソーシャルブックマークは、トラックバックより決め細やかにアテンションを収集してくれる
本エントリーで強調したいのは特に後者。トラックバックの多さもアテンションの大きさを計るための指標にはもちろんなるが、その数はそれ程多くはないため、それだけではどの情報にどれだけアテンションがはらわれているかを正確に計測することはできない。
「ブログを書くという行為にまでいたらずとも、じっくりそのエントリーを読む程度に人々をかりたてる」、そんなソーシャルブックマークが存在する以前には定量化されずに、どこかに消えてなくなっていた細かなアテンション・データを、「ボタン1つで登録」という気軽さにより可視化することに成功した、それがソーシャルブックマークの大きな意義なんだろう。