Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

eBay・Yahoo!の「いいとこどり」戦略は机上のはなし

今週に入り、ウォールスストリートのアナリストらは、両社の提携について、理に叶った組み合わせなのではないかと憶測していた。双方のリソースを共有できるようにすれば、検索や広告などのサービスや顧客基盤をを有利に活用していけると、アナリストらは述べていた。
グーグルの勢いを止められるか--ヤフーとイーベイが提携へ

ウォールストリートのアナリスト様の「理に叶った組み合わせ」の意味するところは、

  • Yahoo!はグラフィック広告のノウハウをeBayに提供し、eBayは膨大なページビューの現金化をはかる
  • アメリカで最もメジャーなオンライン決済サービスのPayPalというインフラをYahoo!が有効活用する

といようにYahoo!eBayは程よい補完関係にあり、「いいとこどり」をすると最強キャラになるというあたりだと思うが、私は今回の提携は意外とうまくいかないんじゃないかと思う。


理由は下記の2つ。

  • この提携は必ずしも顧客の利便性を高めるものではない
  • 巨大インターネット企業同士の「いいとこどり」は有効に機能しない


まず1点目。
PayPal以外のオンライン決済サービスを利用していたYahoo!ユーザは便利になるのか?」
Yahoo!ツールバーを使用していたYahoo!ユーザは便利になるのか?」
「グラフィック広告がYahoo!のものに統一されてeBayユーザは何かメリットがあるか?」
Yahoo!eBayによって共同開発されたVoIPサービスをSkypeユーザは心待ちにしているか?」
上記の問いに対して全員が「NO!」と応えるとは言わないが、私の感覚では「YES」と応える人は半分にも満たないんじゃないかと思う。
「より幅広い顧客基盤を手にすることができる」というのはあくまで企業側の論理であるし、「より機能が高いと思われるサービスが提供できれば」ユーザが諸手をあげて喜ぶかと言えば、決してそんなことはない。どうもアプローチがプロダクトアウトで、提携による効果を読んでもぐっとこない。


次に2点目。
オンライン決済はPayPalツールバーは「eBayツールバー」、VoIPサービスは「Skype」という「いいとこどり」の組み合わせがこの提携の前は不可能だったか?答えは「NO」だろう。
東京三菱とUFJが合併しなければ、UFJの支店で東京三菱の口座を開設することはできないが、ウェブサービスの特性からして、企業同士が提携しなければ享受できないというサービスはそれ程ない。要するに企業間の連携がなくとも「いいとこどり」しやすいのがインターネットの世界では、提携のインパクトは自ずと小さくなるのではないだろうか。
また、もっと気になるのが、「互いのよいところを補完しあい、より優れたほうを活かしていく」という「いいとこどり」型の提携・合併アプローチはアナリストの机の上ではうまくいきそうに見えるが、現実はそんなに甘くないという点だ。
対等合併や提携というのは、「どちらがより優れているか」、「どちらを捨て、どちらを残すか」という議論がはてしなく続き、時間が非常にかかるのが一般的で、私もいくつか企業の買収や合併を目にしてきたが、「いいとこどり」するために調整に時間を費やすより、「スピーディー」にどちらかによせてしまうアプローチのほうがうまくいくことのほうが多いように思う。
スピードが重要な競争力であるインターネット企業が、「こっちはおたくをたてるから、あっちはこちらをたててくれ」なんてことをしていたらあっという間に、本当の競合他社に出し抜かれてしまう。
eBayYahoo!のように多岐にわたるウェブサービスコンポーネントを持っている企業が「いいとこどり」をするより、Googleのように単一コンポーネントを買収し、Googleによせてしまうというアプローチのほうが、スピード感に溢れインターネット企業には向いているように思う。

両社はまた、VoIPサービスを共同開発することも視野に入れている。このプロジェクトでは、双方のウェブサイトにclick-to-call機能を持つ広告を配信し、「Yahoo Messenger with Voice」とeBayの「Skype」の利用を促進することを検討する予定だ。

なんて中途半端なことを言っていると、気が付いたらGoogle Talkにこてんぱんにやられていたなんてことになりかねない。


えいやぁ、で書いてみたが、この提携がうまくいくのか、いかないのか、上記のような視点で今後みていきたい。

Creative Commons License
本ブログの本文は、 クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示 - 非営利 - 継承)の下でライセンスされています。
ブログ本文以外に含まれる著作物(引用部、画像、動画、コメントなど)は、それらの著作権保持者に帰属します。