Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

Googleの法人市場進出を語る視点

2005年Googleの売上の99%は広告収入であり、55%はGoogleのWebサイト経由、44%はアドセンスなどが貼られているGoogle以外のWebサイト(Google Network web sitesとアニュアルレポートでは呼ばれている)経由。
残りの1%は「ライセンス及びその他収益(Licensing and other revenues)」という形で計上されており、Google ApplianceやGoogle Miniと言ったパッケージ製品のライセンス収入がその中心をしめている模様。1%というとゴミみたいな印象も受けるがK$73,558(日本円で約73億円)とあまりバカにしたものでもない。
過度の広告依存モデルをGoogleはアニュアルレポート上ではリスクと認識しているし、広告収益に頼らずともきちんとお金のおちる法人市場でのプレゼンスを高めたいと当然考えているだろう。


Rough Type: Nicholas Carr's Blog: Will Google win the enterprise?
The Enterprise Gets Googled - Editorial - CIO
という2つのエントリーでGoogleが法人市場でも成功をおさめることができるかどうかについての議論が展開されており、ざっくりまとめてしまうと下記の通り。

  • 企業システムの多くがメインフレームからクライアントサーバ(以下C/S)に移行していった様に、今後はC/Sからより拡張性/経済性/安定性で優れるWeb Computingに移行して行くのは確実
  • 企業システムは「ソフトウェアベンダー・IT部門・エンドユーザ(雇用者)という3層構造」から、「ソフトウェアベンダー・エンドユーザ(消費者)という2層構造」にシフトし、どのシステムを使用するかの選択権はIT部門からエンドユーザに移っていく
  • 上記の流れにおけるフロントランナーはGoogleである
  • とは言っても、企業システムにはSOX法などの法制度への対応や就業規定に基づいた会社個別要件などのウェブ上の個人ユーザを対象とした場合には生じない事情があり、Googleのそこへの対応はまだ不十分である


ベリングポイントとの提携をプレスリリースまでしているGoogle Applianceへは殆ど言及せず、大きな視点で今度の動向を見通そうとしている。が、正直読んでもあまりぐっとくるものがなく、議論がこれ以上深まっていく気がしなかった。その理由を考えるに、上記2つのエントリーでは企業システムというものを極度に単純化しすぎて1つの固まりとしてしか捉えていないため、議論があちこちに飛び火して焦点がぼけてしまっているように思われる。
少なくとも、

  • どういった類のシステムの話をしているのか(営業支援/生産販売のような事業システムなのか、会計/人事のような基幹システムなのか、OfficeやMailなどのクライアントアプリなのか、など)
  • どのくらいの規模の会社の話をしているのか(SOX法への対応が求められる上場企業の話なのか、情報システム部門などあってないような中小企業の話なのか、など)

というくらいは絞って議論をしないと深く掘り下がっていかない。


例えば、OfficeやMailなどのコモディティ化しているクライアントアプリであれば、SOX法就業規則などのことはあまり考えずに、既存システムと比較した上で、拡張性/経済性/安定性/維持の容易さなどでの優位点が定量的にオファーできるかどうかが鍵となるだろうし、Google Applianceなどの企業内検索ツールであれば、機能面や経済性より、どのような魅力的で浸透力のあるワークスタイルをオファーできるかの方が鍵となるだろう。
また、できるだけシステムにかかるコストを低減したい人数の少ない中小企業とITリテラシーの幅がものすごく広く、ソフトウェアそのもののコスト以上にどのように末端までシステム・業務プロセスを浸透させるかのほうが重要となる大企業とでは、やはり論点が異なる。


不思議とBlogosphereでは盛り上がりに欠く、Googleの法人市場への進出。
下記のアナウンスがあった際も殆ど話題にならなかったが、関心のある領域なので本ブログでは今後少し取り上げていきたい。
グーグル、企業内データ検索でベリングポイントと提携へ

Creative Commons License
本ブログの本文は、 クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示 - 非営利 - 継承)の下でライセンスされています。
ブログ本文以外に含まれる著作物(引用部、画像、動画、コメントなど)は、それらの著作権保持者に帰属します。