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『グーグル 既存のビジネスを破壊する』と『ウェブ進化論』

グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する  文春新書 (501)

グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する 文春新書 (501)

佐々木俊尚氏の『グーグル 既存のビジネスを破壊する』を読んだ。
Googleは結局のところ何が凄いのか?」という問いに対する非常にわかりやすい説明があり、ある意味そのわかりやすさは『ウェブ進化論』を上回るものがあった。
あらためて、『ウェブ進化論』の第2章を読み直した上で、2つの本を比較してみると

  • ウェブ進化論』はグーグルの凄さについて、「あちら側」に作られた情報発電所そのものの有り様、本質を、どっぷり「あちら側」に浸かっていない人にも伝わるように巧みな表現力で言葉をつくして伝えているのに対し
  • 『グーグル 既存のビジネスを破壊する』は、グーグルの凄さについて、「こちら側」に住む人々がどんな恩恵を受けるのか、また「こちら側」で既得権益を持つ人がどんなあおりを受けるのか、という視点で火のでるような具体性で伝えている

という差があるように思われる。
ある事象を理解する時には複数の視点から見たほうが理解がしやすい、『ウェブ進化論』とあわせて『グーグル 既存のビジネスを破壊する』を読むことを進められるのはそういう理由からだろう。

具体的に少し中身を紹介してみよう。

このグーグルベースが、グーグルネットと結びつけばどうなるだろう。もし普及していけば、日本では新聞の折り込み広告が消滅してしまう可能性がある。
『グーグル 既存のビジネスを破壊する』 〜第1章 P.59〜

限定された特定の地域に対して、非常にローカルな広告を配信するという新聞の折り込みという広告チャネルが、グーグルによって破壊され、配信する側にとっても消費者にとっても価値ある形に生まれ変わるという説明が本書の中でされている。
広告を出す側にしてみると、紙に出力しないためより安いコストで、しかもより細かなターゲティングが可能になる。これによって、新聞社に対して高い広告料を払っていた人はより安価に効果の高い広告をだすことができるし、今まで折り込み広告は高くて手がでなかった中小零細企業も広告をだすことができるようになる。
一方で消費者サイドは大型スーパーの特売情報だけでなく、たまに通りかかった時にしか買い物をしないような個人商店の魚屋の「今日は刺身で食べれる関サバがあります」というような情報まで入手できるようになり、今まで入手できなかった地域固有の有益な情報をえることにより、自分の生活を豊かにすることができる。
上記のように、インターネットというコストゼロ空間にGoogle Baseという仕組が作られることにより、新聞の折り込み広告という既存の仕組が破壊され、よりよい広告配信手段を手にした中小零細企業が再生をはかるという、「こちら側」へのインパクトを考える素材がいくつか提供されている。

"Tech Mom from Silicon Valley"の"Web2.0と対立する2つの世界(その2)なぜネット企業がいつまでたっても異端視されるのか?"というエントリに下記のような記述があり

その時代を担うトップ産業は、製品を売って稼ぐだけでなく、製品を作ったりサービスを提供したりするために、巨大な設備投資をして、裾野業界を潤し、スパイラル的に雇用を創出して、その雇用者は消費者となって製品を買うという、経済規模を拡大再生産する役割を期待されている。
"Web2.0と対立する2つの世界(その2)なぜネット企業がいつまでたっても異端視されるのか?"

雇用創出産業として、その会社が直接あげる売り上げや利益以上の貢献をその国に経済に対してしないと、いわゆる産業界の重鎮の方の視界にははいりずらいという指摘がなされているが、本書にはその「売り上げや利益以上の貢献」がわかりやすい形で記載されており、会社のお偉い上司や両親の世代にGoogleの凄さを伝えるとっかかりとしては、申し分ない。


多くの人が本書を読んで「わかりやすい!」と思うのはおそらく上記のような本書のエッセンスにふれたタイミングだと思うが、ではGoogleの凄さを理解するためにその手の「こちら側」の足元で起きている変化だけを理解すれば十分なのかといえばそれでは十分ではないと思う。
何故ならば、それは「あちら側」の情報発電所の中で発生している「情報の質的変化」が「こちら側」に漏れ出している1つの現象に過ぎず、本質的変化のほんの小さな一側面に過ぎないからだ。

「あちら側」の情報発電所からの電力供給というのは、中小零細企業、個人商店だけでなく、実はさらに零細な特定の個人にまでなされており、電線がひかれた辺境の原住民の生活をがらりと変えるかのように、私たちのライフスタイル・行動様式に大きな変化をもたらし始めているということを理解する、または理解してもらうための「日本の零細企業の現実のストーリー」であり、そこでとまってしまうのはあまりに惜しい。

  • 自分がブログに書いた内容を興味深く読んでくれる人をGoogleがつれてきてくれる
  • 自分がブログに書いた書評を見てその本を買ってくれた人がいて、その対価が自分の財布におちる
  • 『グーグル 既存のビジネスを破壊する』を読んだ人がどんな感想を持っているのか読後即座に知ることができる

「あちら側」に作られた情報発電所の本当の凄さは、1つ1つは些細であり、また実体験を通してでないとどうにも理解できない類のものではあるが、『ウェブ進化論』の巧みな表現や『グーグル 既存のビジネスを破壊する』の生々しい足元でおきている具体例を参考にしながら、きちんと理解し、「Googleは結局のところ何が凄いのか?」という問いに対するシンプルな自分なりの回答を見つけたいと思う。

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