Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

タグでFolksonomyは実現できる

POLAR BEAR BLOG:"タグではフォークソノミーを実現できない"
を読んだ。

  • Folksonomyを実現するためには「その記事に何が書かれているか」という視点でユーザがタグ付けをすることが必要だが
  • ソーシャルブックマークの利用者は「後から読み返したいと思ったWEB上のコンテンツを記録しておくため」にタグ付けをすることが多く
  • このように個々人が「自分にとって最適なインデックス方法」を追求していては、他人にとっては意味をなさないタグが溢れることになりFolksonomyが実現できない

というのが論旨。


脈絡なく散らばっている膨大なWEB上の情報を、人間の視点でインデックス化することにより整理するというのが「Folksonomyの実現」の意味すること。
ソーシャルブックマークを利用してユーザは自分の情報を整理するという動機によりタグ付けをし、結果として正の外部性が働きWEB上の情報整理がなされるというのが、ソーシャルブックマークFolksonomyの関係についての一般論。
それに対し、外部性は実はあんまりはたらかないんじゃないかという指摘と理解できる。


別の言い方をすると、"Wisdom of Crowds"が働くためには、群集が一つのベクトルに向かっていることが重要だが、「その記事に何が書かれているか」というベクトルと「後から読み返したいと思ったWEB上のコンテンツを記録しておく」というベクトルの間にずれがあるため、有効に機能しないという指摘とも理解でき、理論に基づいた鋭い指摘だと思う。


上記理解した上で、それでもタグ付けでFolksonomyは実現できるだろうというのが私の見解。
機能するかしないかの分かれ目となるのは下記2点と考える。

  • 「その記事に何が書かれているか」という視点でタグ付けをする人と「後から読み返したいと思ったWEB上のコンテンツを記録しておくため」という視点でタグ付けをする人の比率がどの程度か
  • ソーシャルブックマークを使用する人がどれくらい増えるか


1点目についてもう少し突っ込むと、例えば「その記事に何が書かれているか」という視点でタグ付けをする人が全体の5割くらいで、「後から読み返したいと思ったWEB上のコンテンツを記録しておくため」という視点でタグ付けをする人が残りの5割くらいだったら、Folksonomyは実現できると思う。
後者の視点でタグ付けをする人が他の人にはあまり価値のないような「自分にとって最適なタグ付け」を仮にしたとしても、残り5割の人間がしっかりインデックス化をしていけば、全体としては個人にとって最適なタグはマイノリティとして目立たなくなり、残り半数のインデックスが表出することになるのではないだろうか。
もちろん、これは比率の問題で前者の視点でタグ付けをする人が2割に満たないと、情報のインデックス化はそれ程進まないだろう。
よって、タグでFolksonomyが実現できるか否かは、「その記事に何が書かれているか」という視点でタグ付けをする人が全体のどれくらいのパーセンテージに達するのかが一つ重要な鍵になるだろう。


次に2点目について言うと、全員が同じベクトルに向いていない状況で特定のページへのタグ付けが10個程度では、インデックス化がきちんとされるかというと甚だ疑問である。
その程度の規模間では個人にとって最適なタグに、適切なタグが飲まれてしまう可能性が高い。ただ、タグ付けが仮に10,000を超えるタグが付けられれば間違いなく、適切なインデックス化がなされると言っていいだろう。
普及が進んでいるとは言え、今のソーシャルブックマークのユーザは「Folksonomyを実現」するためにはいかにしても少ないというのが私の感覚。
30個くらいのブックマークがつけば、相当読まれた記事というのは少し寂しい。
よって、タグでFolksonomyが実現できるか否かはそれを実施する人の母数に依存するというのが重要な鍵がある。


上記を踏まえた上で

  • 「その記事に何が書かれているか」という視点でタグ付けをする人は全ユーザの中で5割は越える
  • ここ5年ほどの間でソーシャルブックマークユーザがより増え、人気エントリーには10,000くらいのブックマークが付き、信憑性の高いインデックスがそれによって作成される

という2点からソーシャルブックマークによってFolksonomyが実現されるというのが私の意見。さてどうなることでしょう・・・。


本題とは関係ないが、POLAR BEAR BLOG:"タグではフォークソノミーを実現できない"は議論を巻き起こしながら考えを深堀するために、生煮え状態を承知で公開するというブログのよい面を発揮している良エントリーだと思う。はてブでのコメントの多さがそれをうかがわせる。もっとも、私のように本人は全部火が通っていると思っても生煮えというケースは多分にあると思うが・・・。

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