Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

「Google八分」考

BMWサイバーエージェントGoogleの検索結果から除外されてから「Google八分」という言葉をよく見る。

など色々な意見がある。
"「Googleはプラットフォーム」とはどういう意味か?"というエントリーであれやこれやGoogleについて考えたのでその延長で「Google八分」ということについて少し考えてみたい。


Google経済圏では、Googleページランクは一般の市場経済における利益のようなものだ。ページランクはそのサイトの本当の価値の代替指標であり、利益を沢山だしている会社が取引先からの与信を獲得し、取引が円滑に実施てきるのと同様に、Google経済圏においてページランクの高い会社は、ビジネスチャンスがより広がるといって過言ではない。


会計基準という形で利益算定のルールが厳格に規定されているように、ページランクの算定ロジックはGoogleによって厳格に決められている。よって、規定のルールから外れて利益を水増しするようなサイトやルールの裏をかいて本当のサイトの価値以上に自サイトの価値をよく見せようという行為は取り締まられなければならなく、それはGoogle経済圏においては唯一ルールを規定しているGoogleの責任でもある。


上記のことから悪質なSEO対策をするサイトに対しては、Googleによる罰則が必要となるし、それは市場の規律を守るためには必要な行為であると私は考える。
それを「言論の自由の弾圧」というのには違和感を覚えるし、別の経済圏で活動する自由や別の場所で表現をする自由は誰でも持っているので、気に入らなければ他のところに行けばよいだけである。


次に考えるべき問題として、「Google経済圏での経済活動をプレイヤーが適正に行うため」という目的はありとしても、「Googleの利益を守るため」などのGoogle自身の利己的な目的のためにどこまでそれを利用してよいのか、という点が思い浮かぶ。

ブログすなわちGoogleワールドの原理というのは、Google様の指先1つでビジネスのルール変更が可能な世界なのである。そこに会社としての基盤を依存するなんて、どう考えても正気の沙汰ではない。
書評「ウェブ進化論―本当の大変化はこれから始まる」・下

R30さんは上記のように語る。
Googleは公的機関でもなく、自社の利益を追求する私企業なのだから、するもしないもGoogleの勝手で、それに対して文句言うほうもおかしいし、そういう前提にたてば、Googleの指先1つで吹き飛ばされる可能性の十分あるGoogle経済圏にどっぷりつかるなんていうのは戦略的に見て非常にハイリスクで、そこまでのリスクに自社をさらすなんて正気とは思えない」
というところか。


基本的には私も上記の意見に賛成で、私企業が全てのルールを規定する経済圏で経済活動をする以上、十分そのリスクを認識すべきだと思うし、仮にことが起きたときに「Googleがそんなことする会社だとはまさか思わなかった・・・」というのは如何にしても経営者としては無邪気すぎる。


ただ一方で、だからと言ってそこに身をおくのが正気の沙汰ではないというほど何でもありのめちゃくちゃハイリスクな世界かと言えば、私は決してそうではないと思う。


経済圏として規模を維持するためには、そのルールに納得し、そこで経済活動をすることが自分の利にかなうと考えるプレイヤーが必要となる。
よって極端な自己利益の追求は、プレイヤーの経済圏離れをまねくため、「指先1つでなんとかなる」にしても、相当の節度が必要となる。


マイクロソフトWindowsというプラットフォームからネットスケープを駆逐した際のことを思い返すと、Windowsのインストールにインターネットエクスプローラを必須ソフトとするなど自己利益を追求するために露骨な施策を行使したものの、Windows上でネットスケープを使用できなくするなどの極端な策はとらなかった。
前者の露骨な自己利益の追求が結果として「悪の帝国」というブランドイメージの毀損や、セキュリティホールに対する激しい攻撃などの形でしっぺ返しがあったものの、それなりの節度をさらに越えたらもっと激しい不利益をマイクロソフトはこうむっていただろう。


自社の作る経済圏の外にはより大きな経済圏や社会があり、個社の力が如何に強大であっても所詮それを行使できる範囲はその中に限られるし、求心力が薄れればその範囲は小さくなってしまうだけである。


よって、ルールを規定しているのはGoogleとは言え、Google自身がその経済圏のプライヤーに支えられていることは事実であるため、プライヤーをないがしろにする自己利益の追求を極端にすることは、それこそ正気の沙汰ではなく、あまり心配しすぎるのも杞憂なように思う。


以上のことから、実施された「Google八分」が良いか悪いかは、「言論の自由」「大量虐殺」が云々などと言って誰かが判定する類のものではなく、Google経済圏のプレイヤーの、その場にとどまるか、別の場所に行くかという個々の判断の積み重ねの結果としてして表れてこないだろう。
強いてプレイヤーが求めるべきものがあるとすれば

  • どこのサイトがGoogle八分となっているのか
  • 何故そうなったのか

という2点に対する情報開示だろう。

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