Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

「Googleはプラットフォーム」とはどういう意味か? その2

"「Googleはプラットフォーム」とはどういう意味か? その1"というエントリーで

  • そもそも「プラットフォーム」ってどういう意味か?
  • Googleは「何」をするための、「何」を提供しているのか?

の2点を書いた。本エントリーでは、Googleが何故プラットフォームとして他のウェブ・サービスと一線を画するのか、下記の4点について書いてみたい。

  • 「世界中の情報を整理し尽くす」と掲げる構想が大きい点
  • 何かをするための何か」を作るための「何か」を提供している点
  • 卓越した技術力を元に「あちら側」に新しい知を創出している点
  • 1国の規模をはるかに超えるプレイヤーが参加する経済圏のルールを規定している点

<「世界中の情報を整理し尽くす」と掲げる構想が大きい点>

(1) 「世界中の情報を整理し尽くす」というグーグルの構想の大きさと、グーグルという会社の個性の質について。
ウェブ進化論』 〜P.49 〜

ウェブ進化論』の表現の引用となるが、掲げる構想の大きさがプラットフォームとしての規模感と価値で、他と一線を画するとまず言うことができる。
Googleにしても、Amazonにしても、書籍の内容をウェブ上に格納する仕組を作っている点には違いない。
しかし、「世界中の情報を整理し尽くす」という構想の大きさが、両者のプラットフォームとしての価値に大きな差を生んでいる。
「特定の書籍の内容を閲覧可能にする何か」と「書籍に限らず全てのウェブ上の知の中で最も適した情報を提示する何か」とでは、価値・スケール共に格段の差がある。
今後も、カテゴリーキラーとして「特定の領域に絞った知の再編成」に注力することにより、その分野でGoogleを上回る企業は沢山生まれ続けるだろうが、「情報の整理」という視点でみて、Googleほど「範囲の経済性」が強烈に働き、高い価値を生み出すプラットフォームはまずあらわれないだろう。
これだけの大きな構想のもと10年間近く走り続けいているGoogleに対して同様のビジョンを掲げ、同程度の「範囲の経済性」を実現しようとする会社はあらわれるかもしれないが、5年前ならいざしらず現時点で、少なくとも言語領域において、Googleに追いつける企業は存在しないのではないだろうか。
「構想の大きさ」が「範囲の経済性」を生み、プラットフォームとしての価値で他と一線を画していると言えるだろう。

<「何かをするための何か」を作るための「何か」を提供している点>

ここでのポイントはGoogleは多くの「何かをするための何か」を提供しているサイトそのものを支えているという点。
GoogleLocalと地図"Machup"を例にとるとわかりやすい。

HousingMaps
これは便利。非常に便利。Craigslistにある不動産情報が、GoogleMaps上でビジュアルに見られる。賃貸も売買もある。部屋だけ貸すよルームメート募集物件もある。
GoogleMaps+Craigslist=こりゃ便利!

例えば、HousingMapsというサイトは、「インターネット上で不動産情報を公開したり、逆に探したりすること」サポートする「何か」であり、引用の通り非常に便利そう。
でも、このHousingMapsとそのサイトが成り立つためのAPIを公開しているGoogleのどちらがプラットフォームとしての価値が高いかと言えば、HousingMapsはそのユーザだけがそのプラットフォーム上で活動しているが、GoogleLocalの場合は、GoogleLocalプラスそのAPIを使用しているサイトのユーザ全てを囲い込んでいることになるわけだから、そこに議論の余地はないだろう。
Googleというプラットフォームの上には、その上に末端のユーザだけでなく、ユーザに対してプラットフォームを提供しているサイトまでのっかっていることになり、レベルが1段異なるということができる。

<卓越した技術力を元に「あちら側」に新しい知を創出している点>

Google Printのように「こちら側」にしかなかった大量の知を検索性の高い「あちら側」にもっていくという取り組みも確かにすごい。
ただ、

  • 今までは個人の頭の中にしかなかったLocalな情報を
  • 卓越した技術をもとに、リッチな使用感を実現したインターネット上の地図を提供することにより
  • ユーザのインスピレーションをかきたて、位置情報と組み合わせた新しい知に変換する

こういう形で新しい知のスタイルを生み出しているGoogleLocalのほうがプラットフォームとしての価値は高いといえるだろう。
インターネットバブルの時は、「インターネットで〜する」というように「こちら側」でやることを単にインターネットに置き換えるというサービスが横行していたが、技術力を最大限に活かし「最新のインターネットだから〜できる」という視点の下、今までにない「何か」を生み出す「何か」である点、それがGoogleの一部サービスのプラットフォームとしての価値だろう。

<1国の規模をはるかに超えるプレイヤーが参加する経済圏のルールを規定している点>

広告の本質を「製品やサービスの送り手が、自らの存在を潜在的受け手に何とか認知させたいと考える経済行為すべて」と広義に定義しなおせば、その市場規模は百兆円規模になる。
グーグルが作る新たな経済圏

梅田さんのシリコンバレーからの手紙で広告について上記のような記述があった。
Googleという経済圏で販売活動を営む「製品やサービスの送り手」は、

などのことを通して「潜在的な消費者」に対してマーケティング活動をする。
一方でGoogleという経済圏で購入をする消費者は

  • たまたま見ていたブログに貼られているGoogleアドセンスをクリックする
  • Google Baseを使用して、欲しい製品を検索する
  • インターネット上の全てのサイトに対し、求める製品・サービスをGoogleを利用して検索する

などのことを通して自分にとって適した「製品やサービスの送り手」を探すことをする。
これらのGoogleのプラットフォームを利用して販売・購買活動をするプレイヤーが1地域どころか、1つの国をはるかに超える数だけ存在し、巨大な経済圏を構築しており、その巨大さがさらに新しいプレイヤーを呼び込んでいるというのが現在の状況だ。
この経済圏におけるルールの中で一番大事なルールは、特定の「製品やサービスの送り手」にとって、どの特定の「潜在的な消費者」が最も適しているのかというマッチングのロジックそのものである。それを規定しているのは全てGoogleであり、現時点ではその規定されたルールに信頼をよせているものが集まり巨大な経済圏を構築しているわけだ。
具体的な数字がないが、この経済圏の規模はアマゾンが構築する経済圏の規模をはるかに上回ることは間違いなく、世界でも最も巨大な経済圏といっても過言ではないだろう。
この巨大さとそのルールを完全掌握している、そこがGoogleのプラットフォームとして他を一線を画している最も重要なポイントなのだろう。

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