日経新聞に「TBS株巡りなお攻防 遅々として進まない楽天と提携協議」という記事が掲載されていた。内容はタイトル通りなので詳述しないが、
- 「楽天と資本も含めてがっつり提携することは、戦略のオプションとして検討の俎上にのっかてもいなんだろうなぁ」とか
- 「TBSはホント頑なにドラスティックな変化にチャレンジしないだなぁ」とか、
そんな印象をあらためて直感的にもった(まぁ、今更という感が大分あるが)。
また、日本有数のマスメディアが、希少で高額な放送機材を持つ特権階級のみが世にメッセージを発信できるという既存のルールを破壊するインターネットというテクノロジーが経営環境を一新しようとしているにも関わらず、未だに自分の殻の中に閉じこもりたがって、「やるべきことではなく」、「自分がやりたいことをできる範囲でのみする」という態度をとり続けいていることを残念に感じる(これも今更・・・)。
企業は数ある暗黙のルールによって経営されているが、そのルールは時として変化するものである。それも大幅に変わることがよくあるのだ。しかし、ルールが変わったことを告げる警告などは存在しない。わが社に何の前触れもなく忍び寄ったように、あなたの企業にも忍び寄るものなのだ。
- 作者: アンドリュー・S.グローブ,Andrew S. Grove,佐々木かをり
- 出版社/メーカー: 七賢出版
- 発売日: 1997/11
- メディア: 単行本
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『インテル戦略転換』 〜第一章 P.31〜
アンドリュー・グローブの『インテル戦略転換』に、経営環境の変化について上記の記述があった。「マスに対してメッセージを発信できる能力を持つがものが希少であるが故に、公共性を独立性をメディアは保たなければならない」という暗黙のルールの変化が、インターネット黎明期から音もなく忍び寄り、最近ではすっかりわかりやすい形で認識できるようになってきているにもかかわらず、それでも上記のように態度は頑な。
上記のような、不満感を今更ながら感じながら考えるに、「ルールの変化に気付いているのだが、エスタブリッシュされた権益、権力を守るためにあえて、頑なな態度をとっているんだろうなぁ」という捉え方はおかしくて、「実はルールが変わったことに全く気付いてもいないんじゃないか」という捉え方のほうがかなり正しいのではという思いが強くなってきた。
『インテル戦略転換』、『「みんなの意見」は案外正しい』という最近読んだ本の中に下記のPhraseがあった。
成功する確証がない限り、現状維持を正当化する説明を考えるほうが、現状とは違う可能性を想像するより簡単だ。
『「みんなの意見」は案外正しい』 〜第3章 P.66〜
転換点にいる時の議論は残酷で厳しい。「もし、わが社の製品がもう少し優れているか、もう少し安ければ、問題はないはずだ」と意見する人が必ずといっていいほど出てくる。確かに一理ある。「景気が悪いせいだ。設備投資が回復すれば、また以前の成長を取り戻すさ」という意見を言う人もいる。これも確かに一理ある。しかし、商品展示会から戻ってきた人が、すっかり取り乱して動揺しながら、「この業界はすっかり変わってしまった。最近のコンピューターの使い方ときたら、いかれているとしか思えない」といったとしても、その意見がまともに取り上げられることはまずないだろう。
『インテル戦略転換』 〜第二章 P.43、44〜
そう、はたから見ると、かつその距離が遠ければ遠い程、「なんであんなに頑なに現状維持に固執するんだろう・・・」と思ってしまうことであっても、当事者にとっては「現状維持に対する誘惑」は相当「甘い」形で立ちはだかり、その誘惑をたちきるための議論は「残酷で厳しい」のだ。だから、ルールが変わったなんてことには早々気付くものではないのだろう。
「もし、テレビで紹介された製品をアマゾンと提携し、
購入できるようにすれば、問題ないはずだ。」
「ホリエモン効果のせいだ。起訴も済んだし、まだ普段の平静を取り戻すさ。」
そんな甘い誘惑の前には、
「メディア業界はすっかり変わってしまった。テクノラティで検索してでてきた、
ライブドア問題に対する論考の質の高さと多様性ときたら
いかれているとしか思えない。」
なんて意見はきっとかき消されてしまうだろう。
上記のように「TBSの経営陣はしょうもねぇなぁ」とぼやいたりしているわけだが、一方でその「現状維持に対する甘い誘惑」は誰の前にも等しく立ちはだかるものだという事実にもあらためて目を向けないといけないと感じた。「自分はその誘惑をたちきるために厳しい自問自答を自分に対してしてるんだっけ?」、たまにはそんなこともじっくり考えてみるか、そんな気にさせられる。