Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

Googleの目指す知の世界のリエンジニアリング

Googleのエンジニアと話していると「こういう風にモノが出来ているのは美しくない、今の技術ならこう美しく作ることができる。じゃあ作ろう」と、そういう発想なんですね。今までのネット産業にはこういう会社はなかった。

「ウェブ進化論」の梅田望夫氏が語る“Googleという隕石”(後編)の上記のPhraseを読んで真っ先に思い浮かんだ言葉が「リエンジニアリング」という言葉だった。


「リエンジニアリング」とは、文字通り「もう一度(=Re)」、「科学/技術の原理に基づき、効率的、かつ経済的な構造・プロセス・仕組みを実現すること(=Engineering)」ということ


既に一般的な言葉になっているBPR(=Business Process Re-engineering)の定義はその提唱者であるマイケル・ハマーに従うと下記の通り。

カスタマーエコノミー革命―顧客中心の経済が始まった
リエンジニアリングはビジネスの業績を向上させるために、古い考えに染まっていない人々の協力を得て、積極的に一度すべてをゼロにして再出発するアプローチである使い古されたアイデア、今日的な意義のない方法、時代遅れのシステムなどを捨て、代わりに新しい顧客の現実、新しい企業の構造、新しいITを取り入れることである。
『カスタマーエコノミー革命』 〜第3章 P.71〜

例えば、WEBからダイレクトで顧客からオーダーを受け、それを自社の販売・会計システムにダイレクトに取り込むというような技術がなかった時に考えられた企業の古い業務のプロセスを、もし今から起業して最新の技術を活用しながら最も効率的な業務プロセスを構築するとしたらどのように作るだろうという発想で再構築するというもの。


で、Googleの話に戻ると、「リエンジニアリング」という言葉を使うと、Googleの現在の取り組みが、"伝統的な書籍出版、報道などによって配信される情報をGoogle Print/Google Newsなどで「リエンジニアリング」するだけでなく、新しいEメール/オンラインショッピング情報などのWEBベースの情報もGmail/Froogleなどによって「リエンジニアリング」したり、使用するコンピュータやOSや仕事のやり方そのものまで「リエンジニアリング」している"というような言葉で説明することができる。


もう少しおしすすめて考えてみると、図書館の本棚に陳列されている情報や毎日配達員によって紙の束で配信される時事情報などの「紙/印刷」という技術が最先端だった頃に一旦編成された知の世界を、最先端のWEBベースの技術を使用してゼロベースで「リエンジニアリング」しようとしているとか、書籍・報道などの伝統的な分野のみでなく、WEBベースで一旦編成されようとしていた知の世界を一番初めに大々的に「リエンジニアリング」したのもGoogleということができる。


グーグルが抱えるこれだけの問題--成長減速は「想定内」か
などの記事でその競争力に陰りが見えてきたのではないかというような指摘がされている。
その競争力のあるポジションを守るためには、伝統的な世界においては、新しいルールの適用にむけてエスタブリッシュメント層との戦いをしていく一方で、WEBの世界では新しい分野を「リエンジニアリング」し続けるだけでなく、Eメール、検索などの「リエンジニアリング済み」の分野も他社に先駆けて今後も「リエンジニアリング」し続けることが求められるのだろう。

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