とにかく何とかなだめすかしてうまくいくよう努力する。何しろたった今手に入れたばかりの二〇〇〇ドルほどのコンピューターは以前ならその一〇倍以上払っても買えなかったコンピューターなのだ。買い手は商品があまりに魅力的なので、デメリットには目をつぶる。産業構造が新しくなったおかげでこのような恩恵に浴することができるのなら、そちらを享受しようということだ。
『インテル戦略転換』 〜第三章 P.52〜
パソコンが普及にいたる時の過程を『インテル戦略転換』では上記のように表現されている。IBMやDECなどのハードウェアベンダーによる手厚いサポートの元、抜群の安定性をもって従来はコンピューターが利用できていたが、高いコンピュータの処理能力を各個人がパーソナルに使用することができるという「あまりに魅力的」な恩恵の前では、「抜群の安定性を欠く」というデメリットには顧客は目をつむったとのこと。
昨日に引き続き「既存メディアVSネットメディア」という構図を上記の視点で見てみると、情報の消費者たる顧客の購買行動を大きく変えるほど、ブログなどのコンテンツがあらゆる分野において、まだ「あまりに魅力的」というレベルにはなく、「多くは凡庸で玉石の中から玉を選び出すには相当のリテラシーが求められる」というデメリットに目をつむる人が少ないと言うことができる。質の高いコンテンツがどしどしオンライン上に提供され、技術革新により「玉を抽出するメカニズム」が大幅に機能アップし、ただ新聞やテレビをみるのと比較し、「あまりに魅力的」とならなければネットメディアが今以上に存在感を増すのは困難だろう。