Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

集合知が機能するベータ版リリース

Nicholas Carrが"The Beta Culture"というエントリーでベータ版でWEBサービスを提供し、ユーザの声を反映しながら徐々によくしていくというGoogleの"Beta Culture"に対して吠えている。

While Google has certainly proved that it can produce wonderful products, like its bread-and-butter search engine and its addictive Google Earth, a lot of those beta products - and not just the new ones - are pretty lackluster. Froogle, for example, is unpleasant to use, and Blog Search is just plain dreary. The tossing of half-baked products onto the web is starting to look less like a brilliant idea than a sign of hubris.
Googleは確かに"Beta Culture"により、収益の源泉となる(bread-and-butter)の検索エンジンや癖になるGoogle Earthのような素晴らしいWEBサービスを開発できることを実証してきた。だけど、最近に限らず多くのベータ・サービスはまったくもって精彩をかく。例えば、Froogleは使いづらいし、ブログ検索は無味乾燥で全くさえない。生焼け(half-baked)のサービスをWEB上にだすというやり方は、素晴らしいアイデアというより、むしろ傲慢さの表れになりつつある。

最近ベータリリースされたGoogle VideoGoogle Packの使い勝手が非常に悪いという他の記事の引用からはじまるエントリーであるが、相変わらずの辛口酷評ぶりである。まぁ、辛口なのはいつものことなのだが、その中で下記のPhraseが気になった。

Yes, there's a certain thrill to feeling like you're a beta tester for the world's coolest company. But once the thrill wears off, you're just annoyed. You start to remember why they call them betas.
自分が世界で最もCoolな会社のベータ版のテスターであると感じることは確かにある種の高揚感がある。だけど、ひとたびその高揚感がさめてしまうと、困惑するだけである。そして、あなたは彼らが何故それをベータ版と呼ぶのかを思い出すのである。

ベータ版を早めにリリースするというやり方は集合知を活用した開発手法であるが、知を集合させるためには相応の求心力を働かせなければならない。その求心力が、天下のGoogleのテスターであるという高揚感であるとか、ベータ版であっても利用価値が十分にあるサービスの品質の高さとなっているのだが、"The Beta Culture"が普及すれば前者の高揚感は次第に色あせ、やっぱり大事なのは人をひきつけるサービスの品質の高さとなるということをCarrは主張しており、それには納得がいく。

「さんま定食」と「しょうが焼き定食」しか作れない段階で定食屋をオープンするのは一向に構わないが、少なくとも「豚肉にはきちんと火を通しておかなければいけない」ことぐらいは頭に入れてから店を開けよう。
http://satoshi.blogs.com/life/2006/01/web20.html

という絶妙な表現が"Life is Beautiful"でされていたが、それを少し拝借すれば、『品数の少ない定食屋が乱立すれば、火が通っているだけでなく、他とは一味違うオリジナリティ溢れる「さんま定食」や「しょうが焼き定食」をださないと集客効果はでない』というような表現をすることができる。

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