Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

アマチュア信仰?

『Web 2.0の負の面』を書いた時に読もうと思ったNick Carrの"The amorality of Web 2.0"を読んでみた。

The promoters of Web 2.0 venerate the amateur and distrust the professional.

Web2.0の推進派の過度のアマチュア信仰(=プロフェッショナルに対する不信)に疑問を投げかけると共に、

The Internet is changing the economics of creative work - or, to put it more broadly, the economics of culture - and it's doing it in a way that may well restrict rather than expand our choices. Wikipedia might be a pale shadow of the Britannica, but because it's created by amateurs rather than professionals, it's free. And free trumps quality all the time. *snip*
The same thing happens when blogs and other free on-line content go up against old-fashioned newspapers and magazines.

アマチュアの作るコンテンツが無料を武器にプロの作るコンテンツを駆逐し、良質の新聞や雑誌産業が衰退してしまうようなことがおきると、インターネットによって創造的活動のありようが変わることにより選択肢の幅が広がるどころか狭まってしまうんじゃないかと危惧している。

良質の90〜100点のコンテンツが一切なくなってしまい、60点くらいのコンテンツが巷に溢れかえるという状態は確かに困るが、フォーカスすべきはそのコンテンツのクオリティと入手に要するコスト(金額だけでなく、入手に要する手間なども加味した)であって、誰が作ったかではない。中には、事実誤認があるかもしれないというスリルと素人っぽさがたまらないなんていうアマチュアフェチみたいな人がいるかもしれないが、発信者が"アマチュア"であることにこだわる人は非常にマイナーなはずだ。
そういう点では、アマチュアを賞賛しプロに不信感を抱く理由は見当たらず、過度のアマチュア信仰に対しては私も疑問である。ただ、Nick Carrが危惧するような心配は起きず、品質の高いものは高い金を払ってでも買うという価格破壊の後にきたここ数年の"モノ"世界における現象は、情報にも必ずあてはまると考える。駆逐される人は当然でるが、それはインターネットによって下記のようなパラダイムの変化がおこることにより、よりCompetitiveになることによるものだ。
・主流メディア企業に属していないが在野にいるもの凄く優秀な人が世間に対してメッセージを発信することが低コストで実現可能になった
・情報収集/事実確認というより多くの手や目を投入することにより効果が高まる作業が効果的に実施できるようになった

とはいえ、アマチュアの集合値を結集したコンテンツと一級のプロが精魂込めて作ったコンテンツのどちらが優れているかという図式や、「Web 2.0万歳!Mainstreem Janalismはもう古い」というような盲目的なWeb 2.0推進派と「素人に何ができる」を金科玉条とする真性エスタブリッシュメントの不毛な議論が非常に多いのも事実。そういうものに惑わされず、本質を見失わないようにしなければならない。

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