Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

労働市場のロングテイルのもたらすもの

労働市場におけるロングテイル」というエントリーで下記のような記述をしたが、

「11月11日の18時までに2時間程度のExcelのデータの単純加工作業をお願いしたい」という雇用者側のニーヅと「11月11日の午前中は時間を持て余しているので小遣い稼ぎをしたい」という労働者のニーヅのように、より細切れになった案件をマッチングするエージェントは今までは存在しなかった。

もし、そんなエージェントが存在したら、自分の身の回りではどんなことがおきるのか少しつらつらと想像を膨らませてみたい。

専業主婦の嫁は一通りMS Office製品は使いこなせるので、家事・育児の間に週に1〜2回、1回2時間程度のExcel加工作業などを実施し小遣い稼ぎをきっとするだろう。子どもが大きくなるにつれ、その時間は増加していくことが想定され、半日程度のオフィス事務を週に3〜4回くらいやって小金を稼ぐようになると想定される。専業主婦がパートに出始めるのは日本では子どもが中学生になるくらいからが多いと思うが、こういうエージェントの登場に伴い結構な労働量が市場に投入されるようになる

仕事で発生した単純なExcel加工作業、統計資料作成に伴い発生する非常に労働集約的な作業、及び資料の単純英訳作業などを、現在は会社の事務職、及び若手に申し訳なさそうに依頼をしているが、今後はそういうエージェントに丸投げすることになるだろう。はるかに早く、品質の高い成果が、エージェントの見つけてくれた前向きな労働者によって提供されるようになるとが想定される。オンライン証券がデイトレーダーをうんだように、こういうエージェントの登場に伴い、デイエクセラー、デイトランスレーターという新しい職業がうまれる

上記はかなり希望的観測も含まれているが、こんなことをつらつら考えるに下記のような構図が見えてくる。
・ 現在、雇用者はオーバーヘッドを承知で労働者を有期雇用している
今までは、細切れのニーヅが発生するごとにOnDemandに労働力を売ってくれるような仕組がなかったので、ある程度のオーバーヘッドがあるのを承知で有期雇用という形で人を雇い、発生都度仕事が頼める労働力を雇用者は確保していた、といういうことができる。
・現在、労働者は提供可能な労働力を廃棄している
好きな時に細切れの労働力を提供したいという希望を持っている労働者は今までもいたが、そんな労働力を買ってくれる雇用者は従来いなかったので、それらの提供可能な労働力は今まで使われることなく、退屈な時間をつぶすというような形で廃棄されていた、ということができる。
サプライチェーンの整備により流通在庫が減少したように、労働市場ロングテイルをカバーするようなエージェントが登場すると企業が抱えている労働力のオーバーヘッドはより解消されるだろう。一方で仕事にありつくためには、その瞬間瞬間で価値を提供できる固有のSkillを持つことがますます求められ、正社員や派遣社員のような期間雇用という今までの雇用形態はますます少なくなる、そんな能力の高い人に優しく、低い人に厳しいという流れがますます加速されるに違いない。

Creative Commons License
本ブログの本文は、 クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示 - 非営利 - 継承)の下でライセンスされています。
ブログ本文以外に含まれる著作物(引用部、画像、動画、コメントなど)は、それらの著作権保持者に帰属します。