一般に経験は人を強くするという固定観念があるが、いろいろ考え過ぎてしまい、一番いい方法にたどり着くのに時間がかかったりしてしまう。また、判断に迷う材料も増えて、おじけづいたり、迷ったり、躊躇してしまったり・・・・・・ネガティブな選択をしているときもあるのだ。
- 作者: 羽生善治
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2005/07
- メディア: 新書
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つまり、経験には「いい結果」、「悪い結果」がある。それを積むことによっていろいろな方法論というか、選択肢も増えてきた。しかし、一方では、経験をつんで選択肢が増えている分だけ、怖いとか、不安だとか、そういう気持ちも増してきている。考える材料が増えれば増えるほど「これと似たようなことを前にやって失敗してしまった」というマイナス面も膨らんで自分の思考を縛ることになる。
そういうマイナス面に打ち勝てる理性、自分自身をコントロールする力を同時に成長させていかないと、経験を活かし切るのは難しくなってしまう。
『決断力』 〜P.32-33〜
「ほんの小さなお客様とのボタンの掛け違えが、後々連日の深夜残業を余儀なくされる手痛いしっぺ返しとして自分に跳ね返ってきた」、そんな苦い経験はきっとプロジェクトものの仕事をしている人にはきっと誰にでもあるもの。そういう失敗を通じて、過酷な労働という身銭をきりながら学んできたことは、自分の血となり肉となり、自分の成長に寄与しているということは確かだと思う。
一方で、さんざん身銭をきった経験豊富な人が集まり、プロジェクトの進め方について議論をしている時、それぞれの心配事が気になり、議論は重ねるがなかなか最終的にとるべきポジションが決まらないという事態にたまに陥る。だされる心配事・懸念事項というのが、えらく辛酸をなめたという事実に裏づけられた生々しい主張に基づくだけに、「そりゃそういう心配はあるだろうけれども、そこはそうならないように上手くやるんじゃないの?」とおさめようとしてもなかなか議論が収束しなく、苦慮することが間々ある。
で、最近売れているの羽生善治の『決断力』を読んで、でてきたのが『考える材料が増えれば増えるほど「これと似たようなことを前にやって失敗してしまった」というマイナス面も膨らんで自分の思考を縛ることになる』というPhrase。マイナスに作用するという視点で、経験について考えたことがなかったが、あぁ、自分達が陥っているのはこういうことなんだと大分しっくりきた。
一人で考え、一人で決断をする将棋の世界では、まだことはそう複雑ではないが、チームでプレーをするプロジェクトものでは、余計そういう悪循環に陥らないように気をつける必要がある。チーム全体から「このやり方は怖い、不安だ」、「おれは前これで失敗したからこれは辞めたほうがいい」というマイナス面が噴出すると、まさにがんじがらめで動けなくなってしまう。
自らのマイナス面に打ち勝つ理性をやしなうこともさることも大事だが、そういう悪循環に陥らないように注意するというチームの共通認識が必要となるのだろう。